【連載】発注者からみた建設DX (第4回)パートナーの条件|荒井商店 清水氏


連載企画「発注者からみた建設DX」の4回目となる本記事では、荒井商店の清水 浩司氏が、プロジェクト起点の発注者にとってパートナーの条件とは何か、について解説します。

さらに発注者とパートナーをつなぐ建設DXの将来性について伺います。

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多種多様なパートナーとの協業がプロジェクト成功の鍵

多様なパートナーとコンプライアンス遵守

不動産業は多数のパートナーとの協業が必要な、多様な要素の集合体です。

関わる専門士業は主なものだけで「宅地建物取引士」「不動産鑑定士」「土地家屋調査士」「建築士」「弁護士」「司法書士」「税理士」、協業が必要な業種では「総合不動産」「不動産仲介」「銀行」「証券」「保険」「設計事務所」「建設」「土木」「測量」「地盤調査」「デューデリジェンス(※1)」「解体」等々、と本当に多岐にわたります。

これら多数のパートナーに協力を仰ぎながら、一つのプロジェクトを遂行する為にはお互いの信頼関係と情報共有が不可欠です。

不動産業は極めて秘匿性の高い情報を取り扱う業種の一つであり、対象不動産が会社資産であれ個人資産であれ、確実な情報管理が必要です。その為に情報共有するパートナーに対する信頼関係が重要なのは当然なことで、以前は反復継続的に協業している実績があり、トップ同士や担当者同士に所謂「人間関係」が構築されている事が、選定の大きな判断基準となっている事も珍しいことではありませんでした。

しかしながら、コンプライアンス遵守が前提の現在では「人間関係」というような数値化できない曖昧な判断基準ではなく、「企業規模」や「上場、非上場」、「会社形態」などの客観的な評価、会社の与信が基本的な判断要素となります。その為に昔ながらの個人商店、個人経営のパートナーとは取引が難しい状況も多々起こっています。この様な、企業規模が小さく与信力で評価できないパートナーとの協業を実現する為の突破口となりえるのが、DXであると考えています。

※1:デューデリジェンス
M&Aにおける買収企業の将来性や市場評価を含めた多角的な評価を不動産にも適用したもの。
「適正評価手続」や「物件精査」を行うことによって、投資に適した不動産であるかの判断材料にするほか、BCP(事業継続計画)策定や地震対策の検討などに活用します。

パートナーのDX

投資と人材

ところが企業規模が小さいほどDXが進んでいない、のが現状です。

いままではDXに関わる投資が過大である事が大きなハードルでしたが、現在ではテクノロジーの進化(機器の低価格化)、各種DXサービスの提供形態の多様化(クラウド、サブスク等)によって劇的に投資コストは下がっています。実際に一人社長の個人事業主でも、大企業との協業に遜色ないDXを実践している方たちも大勢います。つまりDX導入に対するハードルは「投資コスト」ではなく、「人材」である事が浮き彫りになってきました。

つまるところ中小企業であっても社内にパソコンやデジタル機器に対して抵抗感のないスタッフがいれば「DXの導入は進む」と言い換える事も出来ます。しかし、現状ではそのような人材を確保すること自体が難しく、社内のスタッフを教育しようにも通常業務が忙しい上に働き方改革の現在では、残業や休日出勤で教育する事も現実的ではありません。

この様な状況の中、いかにしてDX人材を確保し中小企業のDX導入を後押しし、企業規模に関わらず企業間のDXレベルを平準化できるかが、不動産業のみならず日本企業がグローバル化した世界の中で生き残っていけるかの試金石となる気がしています。

DXによるパートナーの色分け

実際にパートナーを選定する場合、候補企業がどの程度DXの導入が進んでいるかによって、発注内容を考慮します。例えばゼネコンであればBIMの導入が進み本社内に専門の部隊が組成されて、現場にて実践的にBIMを運用している会社と、BIM未導入の会社では自ずと発注する規模に差異を付けざるを得ません。いままで紙面で述べてきたように、将来的なエビデンスの有効性に期待してBIM運用を前提としたプロジェクトであれば、そもそも声掛けすら行われない、選定候補にすら選ばれない事もあり得ます。

また日常的な維持修繕を依頼している相手先であれば、電話やFAXではなく、web会議やメールにて打合せが可能で、デジタルでの情報共有が可能な事が、今後の選定基準になっていくと感じています。要するに社会的に標準となりつつあるツールが仕事の上でも共有のツールとして普及するのは今も昔も同じ事象であり、それが現代ではDXという言葉で括られて来ている、という事かと思います。

DXが発注者とパートナーを繋ぐ

情報共有ツール

DXが業務上の共通なツールとなれば、やり取りする情報も当然にデジタル化されます。デジタル化されたデータは、データの鮮度を損なわずに共有し、利用する事が可能となり業務の効率、品質の向上に寄与します。更に、二次的利用も容易で保存性にも優れており、エビデンスとしても将来に渡り有効です。また、データセンター等を利用する事で十分なセキュアと容量を確保することも可能であり、検索性にも優れます。

更にはBOX等のクラウドサービスを利用する事でより共有性を高め、プロジェクト単位でのデータ活用を会社を横断したパートナー企業で共有、活用する事が出来るようになります。この様な環境が整ってくると、パートナー同士の共通言語としてDX環境を一種の共通プラットフォームとして活用できるパートナーが選ばれ、生き残るのは自明の理です。

今までの仕事の仕方には価値が無くなりつつあることに早く気が付き、DXの導入、活用により共通の言語を理解できるようになることが、これからのパートナーの条件であると感じています。

時代は着実に進み、DXも裾野まで到達しつつある

もはやDXは他人事ではなく自分事であり、特別な事ではなく日常生活に必要な「当たり前の事」になって来ています。常に時代の最先端を現す鏡である家庭用ゲーム機のクオリティを見れば一目瞭然です。最新のSONY PS5の画面はまるで現実の映像の様であり、その凄まじい演算能力には戦慄さえ覚えます。

つまりは建設DXに必要なCPUパワーに匹敵する能力が家庭用ゲーム機に備わっていると言い換えても過言ではなく、コスト的には小規模の個人設計事務所にもBIMモデルが作成可能なハードウェアを導入できる時代が、すぐそこまで来ているのです。もはや、コストは言い訳にはなりません。

自らのスキルと知見を活かし、パートナーとして選ばれるためには建設のみならず業務全般のDX導入が必要な時代が来ています。

まとめ

この記事では、ビルオーナーの立場から不動産・住宅業界におけるパートナーの条件、DX導入の重要性について清水氏に語っていただきました。

次回の記事では、「荒井商店のこれから」をテーマに解説します。