グリーンビルディングとは|日本での事例や課題まとめ
目次
トレンドワード:グリーンビルディング(Green Building)
今回は「東京建物株式会社2021年度版 DBJ Green Building 認証を取得」の記事でご紹介したグリーンビルディングをピックアップします。環境に配慮した建築物として注目されており、導入例も増えています。本記事ではグリーンビルディング認証の種類や、具体的な事例についてご紹介していきます。
グリーンビルディングとは|定義を解説
グリーンビルディングとは、環境への配慮を重視した持続可能な建築物のことを指します。エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの活用、環境への負荷削減などを通じて、健康的で快適な環境の創出を目指します。「サステナブル・ビルディング」と呼ばれることもあり、カーボンニュートラルの観点からニーズが高まっています。
主なグリーンビルディング認証の種類
グリーンビルディングには認証制度があり、多くの機関が独自の制度を実施しています。ここでは、日本での主なグリーンビルディング認証についてご紹介します。
①CASBEE(建築環境総合性能評価システム)
CASBEE(キャスビー)は、建築物等を評価するための代表的な制度です。主な評価基準は、下記4分野となります。
- (1) エネルギー消費(energy efficiency)
- (2) 資源循環(resource efficiency)
- (3) 地域環境(outdoor environment)
- (4) 室内環境(indoor environment)
建築物の評価結果は、Cランク(劣っている)からB-ランク、B+ランク、Aランク、Sランク(大変優れている)としてランキングされる仕組みです。CASBEEは地方公共団体でも活用されており、信頼性の高い評価基準となります。
②Green Building Japan(LEED)
LEEDとは、アメリカの非営利団体USGBCが開発・運用している環境性能評価システムです。 LEEDには、評価する目的に対応した5種類の認証システムが用意されています。各評価項目において必須条件を満たした上で、さらに選択項目によってポイントを加算することで評価します。評価項目は、下記9点になります。
- 統合的プロセス
- 立地と交通
- 敷地選定
- 水の利用
- エネルギーと大気
- 材料と資源
- 室内環境
- 革新性
- 地域別重み付け
LEEDは世界で最も広く利用されているグリーンビルディング評価システムであり、日本での導入事例も増えています。
③DBJ Green Building認証
DBJ Green Building認証は、2011年4月に日本政策投資銀行(DBJ)が創設した認証制度です。環境や社会への配慮がなされた不動産を支援することが目的で、多くの不動産を評価・認証しています。2023年3月時点での認証物件数は1799件、認証事業者数は501社になっています。
④BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)
「BELS(ベルス)」(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、㈳住宅性能評価・表示協会が運営する省エネ性能認証制度です。登録BELS機関が省エネ性能を客観的に評価し、一次エネルギー消費量をもとに5段階の星マークで表示しています。新築・既存を問わず、全ての建築物を対象とした省エネルギー性能等に関する評価・表示を行っているのが特徴です。
グリーンビルディングの日本での事例
ここでは、グリーンビルディングの日本での事例をご紹介します。ゼネコンや建設会社でも、グリーンビルディングの取り組みは広がっています。
①Port Plus大林組横浜研修所
大林組の「Port Plus」は、全ての地上構造部材を木材とした純木造の高層耐火建築物です。近年木造建築に注目が集まっている中、大林組でも木造建築の普及に積極的に取り組んでいます。
全体で1,990m³の木材を使用しており、これにより約1,652tのCO2の固定効果が認められています。さらに材料製作から建設、解体・廃棄までのライフサイクル全体では、鉄骨造と比べて約40%のCO2削減効果があります。
②熊谷組 福井本店
2021年7月に竣工した熊谷組福井本店は、Green Building JapanのBD+Cのプロジェクト審査でGoldを取得しました。環境負荷低減と快適性・生産性の向上を兼ね備えた先進的事例として、木造建築とZEBを採用した点が評価されています。
SDGs の観点からも、環境性能の高い建物の普及には環境認証の活用は重要な要素のひとつとなっています。グリーンビルディング認証の取得は、市場における建物価値向上のブランディングにもなっています。
③鹿島建設 技術研究所本館研究棟
鹿島グループは、SDGsをはじめとする社会・環境問題に全社をあげて取り組んでいます。その1つとして、「ウェルネスオフィス」の実現に努めてきました。技術研究所本館研究棟では「WELL認証」プラチナおよび「WELL健康安全性評価」を取得しています。蓄積されたナレッジをベースに、快適性、知的生産性、健康面、安全性に配慮した空間の実現を積極的に提案しています。
グリーンビルディングのメリット
グリーンビルディングのメリットとしては、下記が挙げられます。
- 環境に優しい
- エネルギー効率の向上
- 資産価値の向上
- 地域社会との調和
グリーンビルディングは環境に配慮した建物であり、エネルギー効率が高く、CO2排出が少ないため、持続可能性が高まります。また健康や生産性向上にも寄与し、ランニングコストの削減も期待できます。長期的な視点での資産価値も向上するため、地域社会とうまく調和します。
グリーンビルディングの課題・デメリット
一方で、グリーンビルディングには下記の課題やデメリットもあります。
- 初期コストが掛かる
- 維持管理が必要
- 地域ごとに基準が異なる
グリーンビルディングでは、太陽光パネルや省エネ設備を導入する必要があります。そのため一般的なビルよりも初期コストが高くなります。また実用段階に入ってからも、維持メンテナンス費用が掛かってしまいます。
そしてグリーンビルディング認証には多くの種類があり、国によっても評価基準が異なります。統一規格は無いため、評価が分かりにくい場合があるでしょう。
グリーンビルディングが普及しない理由は?
新築物件でのグリーンビルディング認証取得数は年々増えていますが、既存物件での取得はなかなか進んでいません。この理由としては、手間が掛かる点や取得メリットの弱さが挙げられるでしょう。
既存物件の場合は、設備図面や維持管理記録といったデータを揃える必要があります。そのため、新築に比べると取得のハードルが高くなってしまいます。さらに認証を取得しても、直接利益につながるメリットが弱いのが現状です。今後は、既存物件でもグリーンビルディング認証の取得を促す取り組みが求められています。
まとめ|グリーンビルディングで環境に優しく
グリーンビルディングは、環境に優しく省エネにも繋がる取り組みとして注目されています。年々認証の取得数は増えているものの、まだまだ課題も残っています。今後は、新築だけでなく既存建築物でも広く取得されることが望まれるでしょう。