VRの建築業活用事例|BIMと連携も

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著者:小日向

トレンドワード:VR

「VR」についてピックアップします。まるで現実空間のようにリアルな体験ができることから、建設業での導入が広がっています。本記事では建設業でのVR活用事例の他、メリットやデメリットについてもご紹介していきます。

VRとは

VR(Virtual Reality)とは、コンピュータ技術を用いて仮想空間を作成し、その空間に没入して体験する技術のことを指します。主にヘッドマウントディスプレイやコントローラーを使うことで、ユーザーが仮想空間を現実のように体験できるのが特徴です。

建設業でのVRの利用は、設計段階から施工・保守段階に至るまで幅広い活用がされています。リスクの低減や効率の向上、コミュニケーションの改善など様々な利点をもたらす最新技術として注目されています。

建築業でVRを活用するには

ここでは、建設業でVRを活用する方法についてまとめています。

打合せでのモデル共有

VR技術を使えば、建物の完成形をリアルに再現できます。まるで本物の建物の中を歩いているような体験ができるため、完成後のイメージギャップを防げるのがメリットです。

図面だけでは分かりづらい建物の高さや間取りの寸法など、細かなイメージも共有しやすくなるでしょう。

現場の状況シミュレーション

VRは建物完成後のイメージだけでなく、建設作業中の現場の状態も再現できます。そのため「どこに足場を組むのか」、「安全に作業できる場所はどこか」といったシミュレーションができます。作業開始前に状況を確認することで、より安全性が高まるでしょう。

教育や研修に利用

建設業では危険作業が付きもので、事故が多発しています。その原因の一つとして、教育機会の不足が挙げられます。しかしVRを使えば体感を伴った研修ができるため、新人教育に役立つのがメリットです。また録画データ等を使えば個別学習も可能なので、業務効率化に繋がります。

VR×建築のメリット

建築業でVRを導入するメリットは、下記にまとめられます。

  • イメージが伝わりやすくなる
  • 業務効率化
  • 安全対策になる
  • BIMとの親和性が高い

VRでは視覚・聴覚を伴ったリアルな体験ができるため、イメージが共有しやすくなります。建築図面を見慣れていないお施主様等にも、完成形が伝わりやすくなるでしょう。これにより行き違いや手戻りが少なくなるので、結果的に業務効率化に繋がります。また詳細な現場シミュレーションができるため、事故のリスクを減らすことが可能です。

さらにVRはBIMとの親和性が高く、融合技術が注目されています。BIMでは詳細な3Dデータを作成可能ですが、まだまだ十分に生かし切れている現場は少ないのが実情です。しかしVRとして活用すれば、多くの場面で活躍します。具体的には、マンションのモデルルームVRや新人教育トレーニングツール等に使えるでしょう。

VR×建築のデメリット・課題

VRにはメリットが多いですが、建設業で活用する際にはデメリットもあります。

  • 初期費用や手間が掛かる
  • 人材育成が必要

まず、VRデータを作成するにはゴーグルやディスプレイといった専用機材が必要です。そのため導入時には、ある程度高額な費用が掛かってしまいます。また、現場作業員がVR技術に慣れるまでの手間も考慮する必要があるでしょう。

建築業でのVR活用事例

ここでは、建設業でのVR活用事例について詳しくご紹介します。大手ゼネコンでもVR技術の導入は広がっており、すでに現場で活用されているケースは多いです。

大成建設

大成建設では、切羽観察システム「T-KIRIHA VR」を開発しました。VRを活用することで、山岳トンネル工事における切羽(トンネル最先端の掘削面)の岩盤状況を詳細に把握できるのが特徴です。

3Dレーザースキャナを用いて計測を行うため、従来よりも安全性が高まりました。さらに、岩石が剥がれ落ちる「肌落ち」などによるトンネル災害リスクを低減することが可能となります。

大林組

大林組では、「O-DXルーム」でVRを用いた技能者の教育を開始しました。玉掛け作業のトレーニングコンテンツでは、下記の研修が受けられます。

  • 建設業界初のマルチプレイ(メタバース)を活用した玉掛け共同作業を実現
  • 5人同時に、クレーンオペレーターを含めた異なる役割の体験が可能
  • 決まったシナリオではなく、物理シミュレーションを駆使した自由な玉掛け作業により、実際に近い体験が可能
  • すべての行動を保存し、行動履歴を再現する、振り返り確認が可能

将来的には遠隔地でのVRコンテンツを活用した教育訓練を開催し、遠方にいる技能者の技術向上に貢献する予定です。また技能者のリスキリングを推進することで、建設産業の担い手不足の解決につなげます。

東急建設

東急建設では、就職活動を行う学生に建設業の魅力を伝えるため、VR空間で建設現場を見学できるツールを制作しました。このツールは「VR 建設現場」と「VR 事務所」で構成されており、実際に施工中の建築現場をモデルに生成した VR 空間をオンライン上で見学することができます。

コロナ禍を機に学生の就活スタイルが変化する中、リアルに建設現場を訪れる機会が減少している点が課題でした。今後もVRツールの活用で、建設業の枠を超えた前例のない活動に取り組む予定としています。

西松建設

西松建設はネクステラスと共同で、遠隔運転の操作練習が行えるVRコンテンツを製作しました。山岳トンネルにおける無人化施工を早期に実現させることを目的とし、遠隔運転席、建設機械、練習場所の三点セットすべてを仮想空間で練習できるシステムとなっています。

大和ハウス工業

大和ハウス工業では、2023年5月以降販売のすべての新築分譲マンション「プレミスト」にVRモデルルームを導入しています。VRモデルルームでは、モデルルーム内を歩いているかのようなウォークスルー体験ができる他、竣工物件においては外観や物件の周辺環境なども確認できます。総合ギャラリー「プレミストサロン東京」では、VRヘッドマウントディスプレイを通じて、立体的にみえる3DVRのモデルルームも内見できます。

まとめ|VR×BIMで建設業を効率化

VRではリアルな建築体験ができることから、建設業での活用事例が広がっています。業務効率化だけでなく、安全性の向上やお施主様満足度アップといった効果も期待できるのがメリットです。今後はニーズの高まりにより、さらなる広がりが期待されています。