J-クレジット制度とは?方法論や排出権取引との違いも解説
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低炭素社会実現に向けて注目されている「J-クレジット制度」についてピックアップします。建築に関わる分野の取り組みもご紹介していきます。
J-クレジット制度とは
J-クレジット制度とは、温室効果ガスとして課題になっているCO2等の排出削減量・吸収量を「クレジット」として国が認定する仕組みのことを指します。J-クレジットの由来は「Japan-Credit」の頭文字で、経済産業省、環境省、農林水産省、林野庁といった幅広い省庁が関わっています。CO2に関する成果をクレジットとして売買できるため、社会全体で排出削減・吸収活動が推進されるのが特徴です。
J-クレジット制度のメリット
J-クレジット制度は、創出者(中小企業、農業者、森林保有者、地方自治体等)、購入者(大企業、中小企業、地方自治体等)の両方にメリットがあります。
まず創出者のメリットとしては、J-クレジット制度に認定されている省エネ設備等を導入することによる、ランニングコストの削減が挙げられます。クレジット売却益が発生することにより、設備投資にかかった費用の一部を回収することも可能です(省エネ設備の購入により、J-クレジットが付与されるため)。また、地球温暖化対策への取り組みとしてのPR効果も期待できるでしょう。
一方でJ-クレジット購入者側のメリットとしては、カーボン・オフセットに使えることが挙げられます。これは企業活動で生じてしまうCO2を、他の部分で創出された削減分で埋め合わせ(オフセット)する取組です。環境への取り組みとしてのPR効果や、企業評価の向上にも繋がります。
J-クレジットの方法論とは
J-クレジットの方法論とは、排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法及びモニタリング方法等を規定した基準のことを指します。J-クレジットに参加認定を受ける際に、方法論のいずれかの条件を満たしていることが必要です。
省エネルギー・再生可能エネルギー・工業プロセス・農業・廃棄物・森林のカテゴリに分かれており、適用条件が細かく定められています。たとえば「適切な森林管理(定期的・計画的な間伐等)の実施」であれば、以下のような内容となっています。
●条件 1:プロジェクトが、市町村長等の認定を受けている森林経営計画単位で登録され、かつ、
「森林経営活動」より抜粋
当該森林経営計画に沿って森林施業が実施されること。
ただし、1 つの森林経営計画が複数の所有者による森林を取りまとめて樹立されている場合等
で、森林経営計画単位でのプロジェクト計画登録の申請が困難な場合は、プロジェクトを実施
しようとする森林経営計画の中から、プロジェクト実施者自らが所有又は管理する森林のみに
ついてプロジェクト計画の登録を行うことができる。
また、以下の要件を全て満たす場合には、プロジェクト実施者自らが所有又は管理する森林
から一部を抽出してプロジェクト計画の登録を行うことができる。
・要件 1:500ha 以上であること。
・要件 2:恣意的に抽出したものでないと認められること。
・要件 3:森林経営計画においてプロジェクト実施者自ら所有又は管理する森林に主伐が計画
されている場合は、プロジェクト実施地に主伐実施の林分を含むこと。
方法論については、J-クレジット公式サイトに詳しい内容が記載されています。
J-クレジットと排出権取引の違いは?
CO2の排出権取引制度とは、各国や企業でCO2の排出枠を設定して、余った分と足りない分を取引する仕組みを指します。「キャップ・アンド・トレード」と呼ばれることもあります。J-クレジットと排出権取引は、基本的な考え方は似ている部分が大きいです。
J-クレジットは日本国内のみでのやり取りになりますが、排出権取引は国家間での広い枠組みという違いがあります。排出権取引では規模が大きくなる分、従来の自国内での取り組みよりも効果が大きいとされているのが特徴です。
建設業でのJ-クレジット認証事例
ここでは、J-クレジットに認証された建設業での事例を紹介します。
東急不動産|森林経営活動
総合デベロッパーとして初めて、森林経営活動に基づく認証を受けた事例です。東急不動産では長野県茅野市に所在する『東急リゾートタウン蓼科』において、森林資源を核とした「まもる」「つかう」「つなぐ」の、持続可能な地域循環のサイクルである『もりぐらし』を推進しています。適切な森林経営活動を実施したことにより、J-クレジット制度に基づき認証されました。
大林組|低炭素型コンクリートの活用
大林組は、保有技術である低炭素型コンクリート「クリーンクリート」を活用し、CO2排出量を削減しました。通常のコンクリートに比べてポルトランドセメントの配合量を減らし、産業副産物である高炉スラグに置換えることで製造時のCO2排出量を削減しています。より一層の普及拡大への原動力にするべく、J-クレジット制度に参加したという意図が見られます。
J-クレジットで低炭素社会実現へ
J-クレジット制度は、創出されたクレジットをカーボン・オフセット等に活用できる画期的な取り組みです。創出者側、購入者側の両方にメリットが大きいため、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか?