2026KiGi AKIHABARA|熊谷組・住友林業の秋葉原木造オフィスビル計画を解説

サンケイビル初の木造オフィスビルが竣工

「KiGi AKIHABARA」(キギ アキハバラ)は、秋葉原の神田川沿いに建つ、地上9階建ての木造・鉄骨造ハイブリッド構造オフィスビルです。本計画は、サンケイビル初の木造オフィスであり、複数の木造技術が評価され、国土交通省の「令和6年度優良木造建築物等整備推進事業」先導枠に採択されています。
この記事では、KiGi AKIHABARAの設計コンセプトと、木造ハイブリッド構造の特徴についてわかりやすく解説します。
KiGi AKIHABARA(旧称・秋葉原木造オフィスビル計画)とは
最初に、KiGi AKIHABARAの事業概要を見ていきましょう。
所在地・アクセス

- 所在地:東京都千代田区東神田2丁目8-16
- アクセス:JR秋葉原駅から徒歩9分
つくばエクスプレス 秋葉原駅から徒歩9分
東京メトロ日比谷線 秋葉原駅から徒歩6分
JR総武線・都営浅草線 浅草橋駅から徒歩6分
都営新宿線 岩本町駅から徒歩6分
KiGi AKIHABARAは、JR秋葉原駅から徒歩9分とアクセスの良い場所にあります。敷地は北側を神田川、西側を児童遊園、南側を柳原通りに囲まれ、三面が開放された視認性のよい立地です。こうした立地特性から、外観デザインは建物の北・西・南側がメインとなっています。
なお、河川に隣接することから、地盤への影響を抑えるため、旧ビルの既存杭を残置したまま新築の杭を施工する工夫がとられています。
構造・規模・面積

- 構造:鉄骨造・一部木造(木造ハイブリッド構造)
- 規模:地上9階建
- 用途:1階:飲食店、2階:ラウンジ、可視会議室、3~9階:テナントオフィス
- 敷地面積:169.27㎡
- 延床面積:1,072.04㎡
建物は地上9階建てで、1階が飲食店、2階がラウンジと貸会議室、3〜9階がテナントオフィスとなっています。
竣工日・開業日
- 着工:2025年3月24日
- 竣工:2026年5月29日
- 開業日:2026年7月22日
KiGi AKIHABARAは、2026年5月に竣工し、同年7月に開業しました。開業後は、サステナビリティや森林保全が学べる体験型プログラムとして、親子向けのワークショップやセッションなどが開催されています。
設計・施工|熊谷組
- 設計:熊谷組
- 施工:熊谷組、住友林業
KiGi AKIHABARAの設計は熊谷組、施工は熊谷組と住友林業が担当しています。
熊谷組の働き方改革への取り組み

https://www.kumagaigumi.co.jp/works/pickup/kigi-akihabara.html#sec7,参照日2026.10.26
KiGi AKIHABARAの建設現場は、神田川沿いの限られた敷地で施工する必要があるなど、難しい条件がありました。熊谷組は、こうした現場でも施工上の工夫を重ねながら、働き方改革にも取り組み、本計画で同社が目標とする「4週8閉所以上」を達成しました。
熊谷組では、「働き方改革アクションプラン2025」をもとに、完全週休2日制(土日休み)の徹底を目指しています。具体的には、工期がひっ迫する可能性のある現場への組織的な支援の実施、4週8閉所に相当する受注量の徹底、作業所業務の一部を担う現場支援部署の配置などに取り組みました。
KiGi AKIHABARAの設計コンセプト
脱炭素社会の実現に向け、建築物への木材利用が進められています。KiGi AKIHABARAでは、都心の限られた敷地での木材活用の普及を目指し、木造ハイブリッド構造が採用されました。
ここからは、KiGi AKIHABARAの木造ハイブリッドオフィスビルとしての設計構想について見ていきましょう。
ブランドスローガン「木でつながる。人がかがやく。」

KiGi AKIHABARA(キギ アキハバラ)の名称は、木々を由来とする「KiGi」と、そこに含まれる2つの「i」を人に見立て、人々の集う場になることを願って決定されました。
ブランドスローガンは「木でつながる。人がかがやく。」です。KiGi AKIHABARAが人と人、都市と森を結び付け、ビルに集まるすべての人がいきいきと活動できる拠点となることを目指しています。
木造建築ブランド「with TREE」の設計コンセプト
KiGi AKIHABARAは、熊谷組と住友林業が手がける中大規模木造建築ブランド「with TREE」に基づき設計・施工されています。
「with TREE」は、「環境と健康をともにかなえる建築」をコンセプトとし、中大規模建築の木造化・木質化を推進するブランドです。名称の由来は「顧客と共に・コミュニティと共に・木と共に」の3つの「with」とされ、高い価値と効果をもたらす木の建築物を、都市に作り上げていくことを目指しています。
木造フレームを見せる外観デザイン

建物のファサードは、ZEB Readyの取得に向けた環境配慮と、木の魅力を感じられることを両立させたデザインです。
外観はガラス越しに木造フレームを見ることができ、木のあたたかみを感じられます。また、熱負荷が大きい西側の外壁には、押出成形セメント板を適度に取り入れ、断熱性能を高めつつ自然光を取り入れる設計となっています。
交流を促すオフィス空間

KiGi AKIHABARAは、木のぬくもりを感じられる快適なオフィス環境を創出するため、「木造ハイブリッドオフィス」の仕様を導入しています。
執務室には木製家具や木のあらわしなどをはじめとしたバイオフィリックデザインを採用し、健康的で快適なオフィス空間を構成しています。
KiGi AKIHABARAの木造ハイブリッド構造の特徴
KiGi AKIHABARA(旧称・秋葉原木造オフィスビル計画)は、「神田川美倉橋 都市型建替木化プロジェクト」として、国土交通省の「令和6年度優良木造建築物等整備推進事業」先導枠に採択されました。
本事業は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、木造化の先導的な設計・施工技術が導入されるプロジェクトに支援を行う事業です。ここからは、本計画で採用された、構造面の特徴について見ていきましょう。
鉄骨と木造を組み合わせた建物構造

全体構造は、建物中央のコアが鉄骨造、外周部が木造フレームとなっています。外周部は、建物の南側と北側で、それぞれ1スパン分を木造フレームとしています。
耐震ブレースには、座屈拘束材に木質材料を使用した座屈拘束ブレース「KS木質座屈拘束ブレース」を採用しています。
木質材料を使用した耐震ブレース

「KS木質座屈拘束ブレース」は、熊谷組と住友林業が共同開発した耐震ブレースです。鋼製の芯材に、木質の座屈拘束材を使用したブレースで、芯材を合板とLVL(単板積層材)で補剛しています。
鉄骨造の建物に木質材料を取り入れられるため、一般的な鋼製耐震ブレースと比較して、最大約40%のGHG(温室効果ガス)排出量を削減することが可能です。
本計画では水平力のみを負担することから、耐火被覆が必要とされていません。そのため、木をあらわし仕上げとして使用できます。KS木質座屈拘束ブレースは第三者機関による構造性能評価を取得しており、一般的なブレースと同様の設計・施工方法で導入可能です。
柱・梁・床の木質耐火技術と耐火部材
本計画では、耐震ブレースのほかにも複数の木質耐火技術が採用されています。
木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODⅡ(ラムダウッド・ツー)」

ラムダウッド・ツーは、木材を活用した木質耐火部材です。KiGi AKIHABARAでは、1.5時間耐火の集成材梁と、1時間耐火・2時間耐火のCLT床に採用されています。
ラムダウッド・ツーは木梁を芯材とし、耐火被覆材に強化石こうボードを使用しています。石こうボードは接着剤を使用せず、留付材のみで固定するため、解体時にも分別しやすくなっています。こうした構造の工夫により、メンテナンス性を高めるとともに、リサイクル時の環境負荷低減にもつなげています。
木ぐるみHB

木ぐるみHBは、鉄骨部材を木で被膜した、耐火構造部材の柱・梁です。本計画では、最上階である9階の梁に採用されました。
木ぐるみHBは、鉄骨造としながらも、耐火集成材の被膜により木のあらわしとして仕上げられる特徴があります。設備配管用の貫通孔が設けられているため、梁に設備配管を貫通させることができ、階高の有効利用が可能となっています。
ドレスウッド柱

ドレスウッド柱は、木材を耐火被覆として使用した鉄骨部材です。最上階である9階の柱として採用されています。
ドレスウッド柱は柱として1.5時間耐火の国土交通大臣認定を取得しているため、建築物の最上階から9層までの範囲に使用可能です。なお、ドレスウッド柱は本計画が初採用となっています。
木造と鉄骨造の接合部における耐火対策

KiGi AKIHABARAの構造体では、木材と鉄骨が併用されています。しかし、木材と鉄骨では耐火危険温度が異なるため、接合部の耐火対策が必要となります。
本計画では、接合部にロックウールを巻きつけて被覆し、鉄骨側から木質部材への熱伝達を抑える納まりが考案されました。
CLTスラブを採用したスラブ構成

2~9階の床には、CLTスラブ(直交集成板による木質床板)を採用しています。CLTスラブは、RCスラブに比べて遮音性が懸念される床材です。そのため、共用部や廊下が下階となる箇所に配置するようスラブ構成が検討されました。
遮音性については、施工時と竣工後に遮音・振動測定が予定されており、今後のCLTスラブの普及にも寄与する計画です。
まとめ
KiGi AKIHABARAは、地上9階建ての木造・鉄骨造ハイブリッド構造オフィスビルです。耐震ブレースや木質耐火部材など、複数の木造・木質化技術が採用され、中大規模建築における木材活用の可能性を広げる建築物となっています。
竣工後は、耐火集成材架構に関する実験結果の学会への投稿、CLTスラブの遮音・振動測定などが予定されています。こうした検証を通じて、今後の都市部における木造建築技術の普及につながることが期待されます。