鹿島建設、24時間以内に解析結果を出力するトンネル支保選定支援技術Geo-CASTを開発

鹿島建設は2026年10月27日、山岳トンネル工事で掘削を始める前に切羽前方の地山の動きを予測し、数値にもとづいて最適な支保を選ぶ解析技術「Geo-CAST(ジオキャスト)」を開発したと発表しました。
支保とは、掘削中に地山が崩れたり変形したりするのを防ぐために設置する補強構造のことです。解析から帳票の出力までを24時間以内に終えられる点が大きな特長で、中日本高速道路が発注した工事の一部に試験導入し、有効性を確認しました。
技術名の「Geo-CAST」は、「Geo-Data-Centric Adaptive Support Navigation for Tunneling」の略称です。
経験に頼ってきた支保選定の課題
これまでの支保選定は、掘削後に得られる地質情報や計測結果をもとに、技術者が経験や知見を生かして地山の状態を定性的に評価し、判断する方法が中心でした。
断層破砕帯などの特殊な地山では、掘削前に解析を行う場合もあります。ただ、解析では地山の条件を単純化して設定することが多く、場所によって硬さが異なる地質の不均質性を十分に反映できないという課題が残っていました。
こうした状況から、掘削前に地山の挙動を定量的に見通せる手法が求められていました。断層破砕帯とは、断層が繰り返し動いて周囲の岩盤が砕け、粘土状や礫状になった軟弱な帯状の地盤を指します。
削孔データ活用を阻んだ数日間の壁
鹿島はすでに、コンピュータジャンボの削孔データを使って地山の硬軟分布を高精度にとらえる三次元地質評価技術を開発しています。しかし、この評価結果を解析に生かすには、密度や変形係数など地山の性状を数値にした「物性値」へ変換する必要があります。
高い精度で推定するには数日を要するため、掘削前の限られた時間内に解析へ反映することは困難でした。せっかく得られた詳細なデータを、判断の場面で使いきれない状況だったといえます。この壁を越えることが、掘削前の解析に削孔データを役立てるうえでの課題でした。
データ同化で物性値を素早く推定
Geo-CASTは、三次元地質評価技術でつくった3D不均質地山モデルの物性値を、データ同化の技術によって短時間かつ高精度に推定します。データ同化とは、数値シミュレーションによる予測に実際の観測データを組み合わせ、予測精度を高める解析手法です。
推定した物性値を取り込んだ三次元掘削シミュレーションを行うため、実際の地山条件に即した、信頼性の高い変形予測が可能になります。複数の支保パターンで地山の挙動を数値で比べ、条件に合う支保を選ぶ作業を支えます。
24時間以内の出力で合意形成を後押し
支保パターンの比較や評価に関する一連の解析と、結果の帳票出力は、24時間以内に完了します。このため、解析結果を掘削前の意思決定に活用できます。
発注者を含む関係者のあいだで、円滑かつ迅速に合意を形成できる点も、この技術が目指す効果です。判断の根拠が数値で示されることから、関係者が同じ資料を見ながら検討を進めやすくなります。
従来は掘削後の情報に頼る場面が多かったため、掘削前に定量的な比較結果を得られることは、現場の判断に幅を持たせる材料になります。
予測と実測が概ね一致した試験導入
鹿島は、三重県いなべ市で施工中の「東海環状自動車道 養老トンネル南工事」で、特殊な地山になると予測された一部の区間に本技術を試験導入しました。
三次元掘削シミュレーションが示した地山の変位の予測結果は、掘削時に測定した実測値と概ね一致しており、解析結果が妥当であることを確認しました。実際の現場で、予測の精度が裏づけられた形です。
特殊な地山は地質が複雑で変形も大きくなりやすいため、こうした区間で予測が実測に近づいたことは、技術の有効性を示す結果といえます。
現場への普及と解析の高度化を推進
鹿島は今後、解析技術のさらなる高度化に取り組むとともに、山岳トンネルの現場へ本技術の普及を進めます。現場での迅速な意思決定や、支保選定の合理化に貢献していく考えを示しています。
支保の選定は、工事の安全性と施工の効率の両方に関わる重要な判断です。解析にかかる時間を短くし、根拠を数値で示すことで、技術者の経験に裏づけを加えながら、現場ごとの条件に合った支保の選定を後押しします。
試験導入した工事の場所と規模
試験導入を行った工事の概要は次のとおりです。
- 工事名称:東海環状自動車道 養老トンネル南工事
- 工事場所:三重県いなべ市北勢町二之瀬
- 発注者:中日本高速道路株式会社 名古屋支社
- 施工者:鹿島建設株式会社
- 工事諸元:本坑掘削 支保工 2,062m、避難坑掘削 支保工 2,048m
出典情報など
出典:鹿島建設株式会社,トンネル掘削前に地山の変形を予測し、最適支保を選定する解析技術「Geo-CAST」を開発~24時間以内に解析結果を出力、掘削前の迅速な意思決定を支援~,https://www.kajima.co.jp/news/press/202610/27c1-j.html,リリース日:2026-10-27