国土交通省、砂防関係事業の遠隔・自動施工推進で中間とりまとめを公表、生産性向上目指す

建設DX

国土交通省は令和8年8月24日、「砂防関係事業における遠隔・自動施工の推進検討委員会」の中間とりまとめを公表しました。土砂災害から人々の命やくらし、なりわいを守る砂防事業を将来にわたって着実に進めるため、平時からの遠隔・自動施工を推進し、生産性の向上や安全確保、働きやすい建設現場づくりを目指す内容となっています。

委員会では、発注者や経営者、現場監督、作業員に向けたメッセージも取りまとめられており、関係者一体となった取り組みの浸透が期待されています。

担い手不足と災害激甚化が背景に

砂防関係事業の多くは中山間地域で実施されており、将来の建設業の担い手不足が特に深刻な課題となっています。地域に必要な施工体制や災害対応力を将来にわたり維持できるかどうかが、大きな焦点となっています。加えて土砂災害は多発化・激甚化する傾向にあり、災害対応力の維持も欠かせません。

狭い施工スペースや通信が届きにくい地域といった砂防特有の厳しい条件、さらに初期導入コストの高さなどから、地域の建設会社への普及や通常工事への展開はこれまで十分に進んでいませんでした。一方で、AIや人工衛星を用いた通信技術等の急速な発展により、遠隔・自動施工が可能な現場も増えつつあります。

「裾野拡大」を基本方針に据える

委員会は、遠隔・自動施工を地域の建設会社が日常的に用いる施工手段として根付かせることを基本方針に掲げました。これまでは主に作業員の安全確保を目的として導入が進められてきましたが、今後は労働生産性の向上、安全性の向上、職場環境の改善、実装に向けた技術実証、災害対応力の維持・向上という5つの観点から取り組みを進めます。

少ない学習や訓練で導入できる仕組みづくりを重視し、実装段階に近い技術や災害対応上重要な技術の開発を優先的に推進する方針も示されました。技術実証を重ねることで信頼性を高め、操作室からの施工によって多様な人材の確保や柔軟な働き方にもつなげたい考えです。

掘削と運搬を優先的に推進

普及を円滑に進めるため、実装段階に近く、通常工事と災害対応の双方で共通して活用できる工種が優先されます。特に掘削・運搬工は繰り返し作業が多く、遠隔・自動施工との相性がよいとされ、次の作業が重点的に推進されます。

  • 砂防堰堤の床堀(掘削)および運搬
  • 砂防堰堤の除石(掘削)および運搬
  • 急斜面などにおける斜面対策

なかでも運搬工は自動化に適した工種として位置づけられており、優先的な技術展開が見込まれています。こうした工種は災害復旧の現場でも共通して求められるため、平時に培った技術がそのまま緊急時の対応力向上にもつながると期待されています。

現場条件に応じた技術開発を加速

砂防特有の厳しい施工環境に対応するため、技術開発と実証も並行して進められます。通信環境の改善や現況地形データ取得の効率化など、遠隔・自動施工の前提となる基盤技術の実証に加え、巨礫や流木が混じる現場での掘削・運搬の高度化、遠隔・自動施工に適したコンクリートブロック積み砂防堰堤の建設、砂防ソイルセメントの配合から施工までの遠隔・自動化などが検討課題として挙げられています。

あわせて、遠隔・自動施工に適した設計手法の研究や、技術開発を後押しするデータプラットフォームの構築、フィジカルAIを活用した建設機械施工の高度化も進める方針です。

発注者側には、費用や安全性だけでなく、労働生産性の向上や職場環境の改善、社会実装に向けた実証の必要性などを総合的に検討したうえで導入を判断することが求められます。技術の蓄積と発展を目的として、データ収集を進めるモデル工事の実施も予定されています。

直轄事業を起点に全国へ展開

今後は、国が直接管理する直轄砂防事業において、平時からの遠隔・自動施工をまず先行的に実施します。そこで蓄積した施工データは、効果検証や施工計画の作成支援などに活用される見通しです。得られた成果は地方公共団体や地域の建設会社にも展開され、全国の砂防関係工事における生産性向上と省人化につなげていく方針です。

国土交通省は「i-Construction2.0」のもと、2040年度までに建設現場の生産性を1.5倍に高める目標を掲げており、砂防分野の取り組みもこの流れに沿ったものです。今後も委員会での議論を重ねながら、現場の実情に即した制度づくりが進められる見通しです。

参考資料:これまでの検討会資料

出典情報など

出典:国土交通省,「砂防関係事業における遠隔・自動施工の推進検討委員会」中間とりまとめを公表します
~平時からの遠隔・自動施工を推進~,https://www.mlit.go.jp/report/press/sabo02_hh_000182.html,リリース日:2026-08-24