熱中症で労災認定される場合も|厚労省「クールワークキャンペーン」に注目

トレンドワード:熱中症による労働災害事例

近年、猛暑の影響により、職場で発生する熱中症による労働災害は増加しています。とくに建設業は、炎天下での屋外作業や高温環境での作業が多く、熱中症のリスクが高い業種です。

そのため事業者には作業環境や健康管理を徹底し、労働者を守るための対策を講じることが求められます。本記事では、建設業における熱中症の労災事例や労災認定の要件、企業が取るべき対策について解説します。

熱中症による労働災害が増加中

出典:厚生労働省,2025 年(令和7年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値),https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001705024.pdf,参照日2026.7.9

近年、猛暑の影響により、職場で発生する熱中症による労働災害は増加傾向にあります。厚生労働省が公表した令和7年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、2025年度の熱中症の死傷者数は1,803人と、統計開始以来最多を記録しました。

とくに建設業は、炎天下での屋外作業や高所作業、重量物の運搬など、熱中症のリスクが高い業種の一つです。熱中症は重症化すると命に関わるだけでなく、企業には安全配慮義務も求められるため、適切な予防対策が欠かせません。

建設業における熱中症労働災害の事例①建築工事

ここでは、「建築工事」に関連する熱中症労働災害の事例について解説します。

真夏の木造家屋建築工事現場

出典:厚生労働省,労働災害事例,https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_LST.aspx,参照日2026.7.9

真夏の木造家屋建築工事現場で、基礎の型枠材の加工・組み立て作業を行っていた作業者が、休憩中にふらつきやろれつが回らないなどの症状を訴え、その後けいれんを起こしました。救急搬送されましたが、「熱射病による多臓器不全」により死亡しています。

こちらの事例では、高温下での作業に加え、水分・塩分の摂取状況を十分に管理していなかったことや、日陰などの涼しい休憩場所の未整備、WBGT値の未測定、熱中症に関する教育や現場巡視が不十分だったことなどが原因と考えられています。

厨房室内装工事

出典:厚生労働省,労働災害事例,https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_LST.aspx,参照日2026.7.9

レストラン改修工事の厨房室で、床コンクリート解体・搬出作業を行っていた作業者が、午後に意識を失って倒れ、搬送先の病院で熱中症により死亡しました。

当時は猛暑日で、換気設備がない厨房室内は約40℃まで上昇し、高温・多湿に加え、粉じん対策による散水でさらに過酷な環境となっていました。また作業者は昼休みに体調不良を訴えていたものの作業を継続しており、健康状態の確認や換気、水分・塩分補給などの対策が不十分だったことが原因とされています。

建設業における熱中症労働災害の事例②土木工事

ここでは、「土木工事」に関連する熱中症労働災害の事例について解説します。

傾斜地の崩壊防止対策工事

出典:厚生労働省,労働災害事例,https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_LST.aspx,参照日2026.7.9

急傾斜地の崩壊防止対策工事の事例では、法面と擁壁の間を埋め戻す作業に従事していた作業者が熱中症を発症し、自宅へ戻った後に死亡しました。作業場所は風通しが悪く、気温以上に体感温度が高い環境だったと考えられています。

また作業開始時から体調不良の様子が見られたにもかかわらず、健康状態の確認や作業中止などの対応が実施されませんでした。この事例から、高温環境での作業管理や体調確認、健康診断後のフォローの重要性が読み取れます。

舗装工事

出典:厚生労働省,労働災害事例,https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_LST.aspx,参照日2026.7.9

道路改修工事で、路肩のコンクリートを撤去・搬出する作業に従事していた作業者が、午後の作業中にふらつきや受け答えができない状態となり、熱中症により死亡しました。当日は最高気温35℃を超える猛暑日で、舗装面からの照り返しも加わる過酷な環境でした。

さらに午後の休憩が取れず、冷房設備のないトラックでの移動も続いたことが要因とされており、こまめな休憩や健康状態の確認、水分・塩分補給も不十分でした。

建設業における熱中症労働災害の事例③維持管理・特殊環境

ここでは、「維持管理・特殊環境」に関連する熱中症労働災害の事例について解説します。

送電線直下の雑木伐採中の作業

出典:厚生労働省,労働災害事例,https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_LST.aspx,参照日2026.7.9

送電線直下の雑木伐採作業で、チェーンソーを使用していた作業者が、午後の休憩前に倒れているところを発見され、病院へ搬送されましたが熱中症により死亡しました。当日は炎天下で日陰がほとんどなく、重労働が続く環境でした。

また水分・塩分の補給量が不足していたことや、小休止を十分に取らず連続作業を行っていたこと、熱中症への危険意識や健康管理が不十分だったことも原因とされています。

河川堤防での草刈り作業

出典:厚生労働省,労働災害事例,https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/SAI_LST.aspx,参照日2026.7.9

河川堤防で草刈り作業を行っていた作業者が、午後の休憩前に草刈り機を抱えたまま倒れているところを発見され、熱中症により死亡しました。当日は気温30℃を超える炎天下で、水分や休憩は用意されていたものの、作業者の体調に応じた管理が十分ではありませんでした。

また被災者は採用初日で健康状態の確認も不十分だったことから、個々の体調把握や安全衛生管理体制の重要性が示されています。

熱中症が労働災害と認定される要件を整理

ここでは、熱中症が労働災害と認定される要件について整理しておきます。

①一般的認容要件

熱中症が労働災害と認定されるには、まず業務が原因で発症したと認められることが必要です。これを「一般的認容要件」といい、高温・多湿な環境での作業や炎天下での屋外作業、重筋作業など、業務中の作業環境や内容と熱中症との間に相当な因果関係があることが求められます。

また、発症時期や作業状況、気温・WBGT(暑さ指数)なども総合的に判断されます。

②医学的診断要件

一般的認容要件に加え、医学的に熱中症と診断されていることも必要です。医師による診断結果や症状、検査結果などから、熱中症であることが確認されなければ労災認定は受けられません。

また脱水症状や意識障害、けいれんなどの症状に加え、他の疾病が原因ではないことも考慮されます。このように、業務との因果関係と医学的診断の両方を満たすことで、熱中症による労働災害として認定されます。

企業が取るべき熱中症対策

ここでは、企業が取るべき熱中症対策について解説します。適切な環境を整えることで、労働災害を防ぎましょう。

環境の整備

熱中症を防ぐには、まず作業環境を適切に整えることが重要です。具体的にはWBGT(暑さ指数)を測定・確認し、気温や湿度に応じて作業環境を管理する必要があります。

また現場には日陰や冷房設備を備えた休憩場所を確保し、スポットクーラーや送風機の設置、空調服や冷却ベストなどの冷却用品を活用することも有効です。屋内作業では換気設備を整え、熱がこもらない環境づくりをすることで、熱中症のリスクを低減できます。

作業の管理

高温環境では、作業時間や休憩時間を適切に管理することが欠かせません。WBGT値や気象条件に応じて作業時間を短縮したり、暑さが厳しい時間帯の作業を避けたりするなど、無理のない作業計画を立てることが大切です。

また定期的な休憩に加え、水分・塩分補給の時間を確保し、作業者同士で体調を確認し合う体制を整えることも重要です。

健康管理

熱中症対策では、作業者一人ひとりの健康状態を把握することも重要です。作業開始前や休憩後には体調を確認し、発熱や睡眠不足、体調不良などが見られる場合は、作業内容の見直しや作業中止を検討しましょう。

また定期健康診断の結果を確認し、持病がある方や高齢者など熱中症リスクが高い作業者には、必要に応じて負担を軽減する配慮も必要です。新規入場者や暑さに慣れていない作業者には、熱順化を考慮した作業計画を立てることが求められます。

教育・緊急時対応

熱中症を防ぐためには、作業者への教育と緊急時の対応体制を整備することも欠かせません。熱中症の初期症状や予防方法、応急処置の手順について定期的に教育を実施し、体調不良を感じた際には無理をせず申告できる職場環境をつくることが重要です。

また意識障害やけいれんなどの症状が見られた場合は、直ちに作業を中止し、身体を冷却するとともに救急要請をするなど、迅速に対応できる体制をあらかじめ整えておく必要があります。

まとめ

建設業では、建築工事や土木工事など、さまざまな現場で熱中症による労働災害が発生しています。多くの事例では、高温環境だけでなく、体調管理や休憩、水分・塩分補給、安全衛生教育などの対策不足が重なり、重篤な結果につながっています。

そのため企業は作業環境の整備や健康管理、教育・緊急時対応を継続的に実施し、熱中症を未然に防ぐ体制を構築することが重要です。危険性を正しく理解して早めの対応を徹底することが、労働災害の防止につながります。