直近のアンケート結果からもわかる住宅建設分野でも徐々に進行する生成AIの浸透状況|深堀り取材【毎月15・30日更新】

新建ハウジング(新建新聞社)と住宅テック8社が2024年12月15日〜2025年1月20日の期間に、420名からなる住宅関連事業者を対象に行なったインターネットによる調査「住宅業界のDX推進状況調査2025」の結果を見ると、「生成AIを活用促進しているケースが51%」となっており、住宅建設分野でも生成AIの浸透が徐々に進んでいるのがわかる。
本稿では、そのような状況を受けてLibWorkの生成AIを活用した住宅設計の自動化プロジェクト、LIXILが提供するスマホdeラクラクAI見積「ラクみつ」について報告する。

※住宅業界のDX推進状況調査2025

2025/03/14/住宅業界のdx推進状況調査2025/

先進的な生成AI技術を有するカナダ企業と協働して住宅設計の自動化プロジェクトを開始

LibWork(熊本県山鹿市・代表取締役社長瀬口力)では、先進的な生成AI技術を有するMaket Technologies Inc.(カナダモントリオール・COO:Stepane Turbide)と協働して生成AIを活用した住宅設計の自動化プロジェクトを開始した。このプロジェクトは、LibWorkが保有する膨大な住宅図面データをMaket Technologies Inc のAIプラットフォームに学習させ、日本市場向けの間取り自動生成システムを構築するものだ。

生成AI住宅とは、AIを活用して自動的に設計される住宅を指す。従来の設計手法と異なり、AIに蓄積されたデータやアルゴリズムを用いて建築基準法や土地の区画・形状、顧客の要望に適した最適な間取りを瞬時に生成する仕組みだ。生成した間取りを登録したデザインパターンに基づいて自動で3次元パースモデルも生成する。

AIにより自動生成されたフォトリアルな3次元パース

設計者や営業担当者向けのAIアシスタントによる支援で最適な設計案をリアルタイム提案

AIによる最適な間取り自動生成する機能についてみてみる。LibWorkが保有する住宅図面データを学習し、蓄積されたノウハウを活用、建築基準法や地域ごとの規制を考慮し、最適なプランを短時間で複数提案することが可能だ。間取り図の生成と同時にフォトリアリスティックな3次元デザインを即時に提案する。

バーチャルアシスタントによる設計支援を行い、設計者や営業担当者向けに、AIアシスタントが最適な設計案をリアルタイムで提案する。合わせてAIが施工コストをリアルタイムで試算し、建築コストの最適化も実現する。

導入効果をみてみよう。AIによるリアルタイム間取り作成により、設計プロセスの短縮が可能となるため、設計・提案業務の大幅な効率化が実現する。設計コストの削減により、建築費全体のコスト最適化をサポートし、コスト削減と利益率向上が可能だ。フォトリアルな3次元ビジュアルのリアルタイム提供により、顧客満足度の向上にも寄与する。

日本版生成AI住宅プラットフォーム構築概念図

先進的な生成AIプラットフォーム「Maket」によって支えられるMaket Technologies社と協働

Maket Technologies社との協業理由について論考する。

Maket Technologies社は、北米市場において建築設計に特化したAIプラットフォーム(https://maket.ai/)を開発・運用しており、AIによる間取り生成、3次元デザイン、コスト試算の分野において高い技術力を誇っている。具体的には、AIによる自動設計の精度が高く、実際に北米での運用実績を有し、それらは北米の建築業界で採用され、住宅設計プロセスの効率化を支援している。加えて生成AI技術を活用、短時間で膨大な設計パターンを分析し、最適なプランを自動提案することを可能としている。

日本市場向けの最適化も実現している。Maket Technologies社の技術は、2019年に設立された先進的な生成AIプラットフォーム「Maket」の独自AIモデルによって支えられている。このAIモデルは、ディープラーニングの世界最大の学術研究機関である「Mila – Quebec AI Institute」とのパートナーシップの基で開発されている。「Maket」の技術は日本の住宅の規制や建築基準法に適応可能な柔軟性を備えており、LibWorkが保有する膨大な設計データと組み合わせることで、日本独自の住宅設計プロセスに最適化されたAIプラットフォームを構築する。

実証実験を経て正式に市場投入+その後は住宅メーカーや施工業者向けにOEM販売を計画

今後の事業展開では、本プロジェクトにおいて2025年に完了を予定しており、実証実験を経て正式に市場投入する。その後、住宅メーカーや施工業者向けにOEM販売を通じて提供し、収益化を図る計画となっている。

本プロジェクトにおける日本国内のBtoB向けOEM販売は、LibWorkが独占的に展開し、住宅メーカーや建築設計・施工業者向けに最適化されたAI設計システムを提供する。合わせOEM展開を推進することで、住宅メーカーのDX化を支援し、住宅業界全体の生産性向上と持続可能な住宅供給の実現に貢献していく。

LibWorkでは、本システムの開発を通じて、SDGs番号11「住み続けられるまちづくりを」、SDGs番号12「つくる責任つかう責任」、SDGs番号13「気候変動に具体的な対策を」及びSDGs番号17「パートナーシップで目標を達成しよう」の実現を目指している。

SDGsの目標達成に向けて

AIによるリフォーム内窓「インプラス」の概算見積もりを算出するシミュレーション機能提供

LIXILでは、リフォーム会社の営業ツール用としてアプリ「L-ポケット」を提供しているが、このたび※業界初となるAI技術を使い、リフォームする窓の現場写真をアップロードするだけで※リフォーム内窓「インプラス」の概算見積もりを算出するシミュレーション機能:スマホdeラクラクAI見積「ラクみつ」に2025年4月21日付けでインプラス簡単見積シミュレーションを追加した。

※業界初: LIXIL調べ
※リフォーム内窓「インプラス」の概算見積もりを算出するシミュレーション機能:スマホdeラクラクAI見積「ラクみつ」: 特許出願中

Googleの生成AIモデルGemini 2.0のAI技術とLIXILの見積もりデータを組み合わせて開発実現

「L-ポケット」は、リフォームに関わる業者の営業活動の支援や業務を効率化するために開発されたLIXILのデジタルツールで、商品情報や提案資料、リフォームの知識に関する動画など営業に必要な情報を手軽に取得できる。

LIXILでは、従来から関連業者の人員不足の解消や業務時間の短縮を意識したデジタルコンテンツを提供してきた。今回は、Googleが開発した画像認識が可能な生成AIモデルGemini 2.0のAI技術とLIXILの見積もりデータを組み合わせて、リフォーム内窓「インプラス」の提案ができるLIXIL独自の新機能:スマホdeラクラクAI見積「ラクみつ」インプラス簡単見積シミュレーションを開発し、「L-ポケット」の新機能として搭載した。

新機能においては、撮影した窓の画像を基に既存窓サイズに最も近いインプラスの規格サイズが自動的に選択され、既存窓色や家の雰囲気に合ったカラーを提案する。合わせて仕様が確定したら概算の見積もり金額を自動で算出する。

「L-ポケット」内では案件ごとに概要情報が確認できるのは勿論のこと、見積もりデータ(PDF)のダウンロードもできるため、簡単に短時間で顧客への提案が可能となる。また、自動的に補助金額の算出もできるため面倒な計算をすることなく、スピーディに補助金額の提示が可能だ。

窓のリフォームを検討する顧客から画像を送付してもらうだけで概算見積もりの提示も可能

従来、リフォーム業者においては、窓のリフォームに対応する際、採寸や状況把握のための現場調査に時間を要していたが、新機能を用いることで作業時間を大幅に削減することができる。窓のリフォームを検討する顧客から窓の画像を送付してもらうだけで、現場へ行かずに※概算見積もりを出すことも可能だ。水まわり専門業者が水まわり商品の依頼で訪れた際の急な窓リフォームへの初期対応にも活用できる。

新機能は、LIXILリフォームネット(VC)とLIXILリフォームショップ(FC)の会員以外でも利用できる「L-ポケットLite版」へも機能を限定して提供する。「L-ポケット」では、今後も「ラクみつ」を活用して他の商品でも概算見積もりを算出する機能を展開していく予定だ。

※概算見積: 正式発注の際は詳細の採寸と正式見積もりが必要


スマホで窓の写真をアップロードしたらAI推測が10秒程度で実施されて推測結果が表示可能

スマホdeラクラクAI見積「ラクみつ」の使い方をみてみよう。

「L-ポケット」のアプリ画面から「現調する」をクリックし、「窓まわり」「インプラス概算見積シミュレーション」を選択する。撮影した窓の写真をアップロードしたら、 AI推測が10秒程度で実施され、推測結果が表示される。そこでは、既存窓サイズを予測し、インプラスの規格サイズが選択できたり、既存窓色や家の雰囲気に合ったカラーを提案したりできる。ガラス種類やふかし枠など追加オプションも選択可能だ。仕様が確定したら、撮影した窓の概算見積が表示され、見積データは顧客などへ送付できるようにPDFでダウンロードできる。保存した案件ごとの概要情報は「L-ポケット」内でいつでも確認可能だ。

スマホdeラクラクAI見積「ラクみつ」の使い方