ダムコンクリートの打継ぎ処理を自動化するマシンを開発

西松建設は、ダム工事における苦渋作業のひとつであるグリーンカット作業の省人化に向けて、自動走行可能なグリーンカットマシンを開発しました。当社JV が施工するダム現場にて、本マシンによる試験施工を実施し、作業性とグリーンカットの処理品質を確認しました。
背景
グリーンカット作業とは、コンクリートを打設した際にセメントや骨材の微粒子が表面に浮き上がることで作られるレイタンス層を、ブラシやウォータージェットで削り取る作業です。ダムコンクリートの打ち継ぎ面の強度確保のために重要な作業であり、ハンドポリッシャーなどで数百m2に及ぶエリア全面を処理しなければならないため作業員にとって苦渋かつ過酷な作業となっています。また、コンクリート打設の翌日に作業する必要があることから、打設日を含め数日を要するため、スケジュール調整が難しく、建設現場の全体工程への影響が大きく、課題となっています。
マシンの概要
グリーンカットマシンは、株式会社中山鉄工所(佐賀県武雄市、社⾧:中山弘志)で開発されたマイクロ建機「MSD700」をベースマシンとしています。マシン本体部(上物)が旋回できるようになっており、アーム先端に取り付けられたレイタンスクリーナ(回転ブラシ)によって、コンクリート表面のレイタンス層を削り取ります。

マシンの特⾧
小型化による高い作業性
マイクロ建機「MSD700」をベースとしてマシンの小型化※1を実現。油圧ショベルアタッチメントタイプのグリーンカットマシンでは難しい狭いエリアに対しても作業可能。
グリーンカット処理品質の信頼性
マシンには既成のレイタンスクリーナ:TM-12 型(桜電社製)を搭載。ハンドル部分とマシンのアームをスライド可動させることで回転ブラシの押し当て圧力を安定化させ、人による作業と同様の高いグリーンカット処理品質を実現。
操作UI と「自動モード」機能
マシン操作は専用リモコンから①クローラ走行 ②ブーム/アーム操作 ③ブラシ回転速度を操作し一連の作業を行う。さらにリモコン操作なしで定常動作を続ける「自動モード」を搭載、アーム旋回(反復)+定速クローラ走行による定常的な自動作業が可能で、作業負担を軽減。
試験施工
当社JV で建設中の川内沢ダム(発注者:宮城県)の堤体工にて試験施工(2024 年12 月)を実施しました。マシン1台の単位時間当たりの作業能力は最大40 [m2/h] であり、支障物のない開けたエリアでは、人力作業をマシンによる自動作業に置き換えることが可能です。現場での検証をとおして、安定したマシン作業(旋回+走行)によって処理面全体にムラが無いこと、最適なブラシ押し付け圧力が維持され、適正なグリーンカット処理品質※2 であることを確認しました。

今後の展開
自律走行制御の実装
作業の完全自動化を目指し、来年度にはSLAM 技術によりマシンが自己位置と作業エリアを認識し、エリア全域を自律的に走行して作業する自律制御を実装する予定です。
グリーンカット品質管理システム
バイバックによる締固めデータとグリーンカットマシン作業データの両方を活用し、作業エリア全体の処理品質を定量評価する管理システムを構築、これによりダム堤体の全リフトの打ち継ぎ目の品質データを集約し、BIM/CIM などの統合データベース上で管理します。
グリーンカット作業と品質管理の完全自動化システムは、2027 年度のシステム完成を予定しています。グリーンカットの自動化はダム現場における働き方改革の推進につながる技術開発であり、当社は引き続き、建設現場のオートメーション化への取り組みを進めてまいります。

- ※1油圧ショベルタイプのグリーンカットマシンと比較して、マシンサイズを約1/2に小型化
- ※2コンクリート表層のレイタンス除去による、粗骨材の露出状況を目視確認し、従来の作業品質と遜色なく、適正に処理されていることを確認
出典情報など
出典:西松建設,ダムコンクリートの打継ぎ処理を自動化するマシンを開発-苦渋作業をロボットが担当、ダム工事のオートメーション化を推進-,
https://www.nishimatsu.co.jp/news/2025/post_143.html,参照日2025-03-28