大成建設、環境配慮型高アルカリ性排水の中和処理技術を開発 炭酸ガス使用量70%削減に成功

大成建設株式会社(相川善郎社長)と菅機械工業株式会社(菅大樹社長)は、環境負荷を大幅に低減する新しい排水処理技術の開発に成功しました。「T-CARBON UFB」と名付けられたこの技術は、直径1マイクロメートルに満たない超微細な気泡(ウルトラファインバブル、以下UFB)を活用することで、建設現場での排水処理を効率的に行うことができます。

建設現場が抱える排水処理の課題

建設現場では、コンクリート工事の際に高アルカリ性の排水が発生します。これまでの処理方法では、この排水に炭酸ガスを直接送り込んで中和する「曝気方式」が一般的でした。しかし、この方法には2つの大きな問題がありました。

1.大量の炭酸ガスが必要となり処理コストが高くなること

2.排水に溶け込まなかった炭酸ガスが大気中に放出され、環境への負荷が大きくなること

新技術のしくみと特長

新しく開発された「T-CARBON UFB」技術には、以下の3つの特長があります。

■効率的な中和処理の実現

ウルトラファインバブルを使用することで、炭酸ガスと排水の接触面積が大きく増加します。これにより、少ない炭酸ガスでも効率的に中和処理を行うことができます。実際の現場での検証では、従来方式と比べて炭酸ガスの使用量を70%も削減できることが確認されました。この削減効果は、一般的な山岳トンネル工事現場1件あたり、年間11.5トンのCO2削減に相当します。

■環境負荷の大幅な低減

炭酸ガスの使用量を減らすことで、排水に溶け込まず大気中に放出される炭酸ガスの量も大きく減少します。これにより、環境負荷低減に貢献できます。

■導入のしやすさ

本技術は、建設現場で使用されている標準的なf設備に後付けで設置することができます。また、追加の大型設備も必要ないため、既存の設備を活かしながら効率的な排水処理が可能になります。

今後の展開と期待される効果

大成建設では、この新技術を高アルカリ性排水が発生する建設工事現場に積極的に導入していく方針です。これにより、建設業界全体のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速させ、脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています。

技術用語の解説

・懸濁物:水処理の過程で水中に浮遊している微細な固形物質のことです。

・比表面積:物質1グラムあたりの表面積(m2/g)を表す指標です。

・効果の検証方法:1時間あたり50立方メートルの処理能力を持つ濁水処理設備において、従来の曝気方式とUFB方式での炭酸ガス使用量を比較検証しました。

技術開発の意義

この技術開発は、建設現場における環境負荷低減という課題に対する革新的な解決策となります。特に、炭酸ガスの使用量削減と処理効率の向上を同時に実現できる点で、建設業界における環境保護への取り組みを大きく前進させるものと期待されています。また、既存設備への導入が容易であることから、多くの建設現場での早期採用が見込まれます。

出典情報

大成建設株式会社リリース,高アルカリ性排水の中和処理技術「T-CARBON® UFB」を開発-ウルトラファインバブルにより炭酸ガス添加量を大幅削減し、環境負荷低減に貢献-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250107_10276.html