データセンターを分かりやすく解説|クラウドとの違いや経産省・ゼネコン取組事例

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著者:小日向

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「データセンター」についてピックアップします。AIや半導体の技術発展が目立つ中で、データセンターはインフラを支える重要な役割を果たしています。そこで本記事では、データセンターの主な役割やメリット、ゼネコンの取り組みについてご紹介します。

データセンターとは|分かりやすく解説

データセンターとは、データを安全かつ効率的に保管・管理するための施設のことを指します。大量のサーバーやネットワーク機器が集約されており、企業や組織のITインフラを支える重要な役割を果たしているのが特徴です。

主な機能としては、下記の項目が挙げられます。

  • データの保存と管理:顧客情報、業務データ、ウェブサイトのデータなどを安全に保管します。
  • サーバーの運用:企業やサービスが利用するアプリケーションやウェブサイトを稼働させるサーバーを管理します。
  • ネットワーク管理:インターネット接続や社内ネットワークを通じて、データのやり取りを円滑に行えるよう支援します。

AIの発展がめざましい現代において、データセンターはビジネスの基盤を支える重要なインフラとなっています。データセンターの安全性は企業の運営やサービスの品質に大きな影響を与えるため、セキュリティやバックアップ体制などが厳重に管理されているのです。

経済産業省による取り組み|注目される背景を簡単に解説

出典:経済産業省,第11回 デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合,https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/digital_infrastructure/0011.html,参照日2024.11.12

経済産業省では「IT総合戦略本部」の下、ITのより良い活用を通じてダイナミックな経済活動の実現を目指す政策を実施しています。例えば「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」では、2030年代に向けたデータセンターの方向性について議論されています。

具体的にはAI社会を支えるインフラとして、データセンターの用途や必要とされる規模に応じた「分散立地」が重要としています。また「オール光ネットワーク」の活用により超低遅延な通信が実現されることで、データセンターが立地可能な地域の幅が広がって脱炭素化の実現への貢献も期待できます。

このようにデジタルインフラは「社会インフラのインフラ」であり、必要不可欠な礎です。デジタルインフラの整備に向けて施策を早急に検討し、具体化することが重要となっています。

データセンターとクラウドの違い

データセンターとクラウドは、どちらもデータの保存やアプリケーションの運用に利用されますが、管理方法や利用形態が異なります。

データセンタークラウド
設置場所固定された物理施設を提供インターネット上の場所を提供
管理責任ユーザ側サービス提供者側
初期投資高い安い
カスタマイズ自由度高い低い

まず「データセンター」は、サーバーやネットワーク機器を集約して管理する物理的な施設です。具体的には企業が自社で運用する「オンプレミスデータセンター」や、複数の企業が共同で利用する「コロケーションデータセンター」があります。

一方で「クラウド」は、インターネット経由で利用できるデータやアプリケーションのサービスという違いがあります。クラウドサービスの提供者(例えばAWS、Google Cloud、Microsoft Azureなど)がデータセンターを管理し、ユーザーは物理的な設備を持つ必要がありません。

データセンターの種類

ここでは、データセンターの主な種類についてご紹介します。

ハウジング

「ハウジング」とは、データセンターのスペースやインフラだけを借りて企業自身が所有するサーバーを設置する形態のことを指します。特に、中規模から大規模な企業での利用が多いのが特徴です。

データセンターのスペースや電力供給、空調、ネットワーク回線などが提供され、企業が所有するサーバー機器やソフトウェアをデータセンター内に持ち込みます。初期投資は必要ですが、物理的なセキュリティや電源、冷却管理が整った環境にサーバーを置けるため、安定性が高いのがメリットです。

ホスティング

「ホスティング」は、データセンターが提供するサーバー機器やストレージを借りてデータやアプリケーションを運用する形態のことを指します。「レンタルサーバー」とも呼ばれ、IT資産の保有を最小限に抑えたいスタートアップ企業などが利用することが多いです。

データセンターがサーバーのハードウェアやソフトウェアを管理するため、ユーザ側は設備の保守や運用の手間を省けるのが特徴です。

データセンターのメリット①安全面

データセンターの「安全面」に関するメリットとしては、下記の項目が挙げられます。

セキュリティ対策が安心

データセンターでは、情報漏洩や不正アクセスを防ぐために、厳重なセキュリティ対策が実施されています。具体的には入退室管理システム(ICカード、顔認証など)や24時間監視カメラによって、施設内への不正な侵入を防いでいるため安心です。

また施設内に入れるスタッフやアクセスできるデータが厳密に管理されており、必要な人のみがアクセスできるような体制が整っています。これにより自社でセキュリティ対策を施す負担を軽減でき、安心してデータやアプリケーションを運用できます。

地震に強い

データセンターは、地震などの災害に備えて耐震設計が施されています。特に地震が多い地域では、データセンターの耐震性能が非常に重要です。免震・制震技術が導入されている施設も多くあります。

こうした対策により、万が一地震が発生してもサービスの継続性が保たれ、データが失われるリスクが低減します。

火災時の影響が少ない

データセンターは、火災に対する対策も非常に厳重に行われており、火災発生時の被害を最小限に抑える仕組みが整えられています。建築材には不燃材が用いられている他、万が一の火災時には水ではなく二酸化炭素等で消火できるのが特徴です。

データセンターのメリット②メンテナンス

データセンターの「メンテナンス」に関するメリットとしては、下記の項目が挙げられます。

障害対応を代行してもらえる

データセンターでは、サーバーやネットワーク機器に障害が発生した際、データセンターの専門スタッフが迅速に対応してくれます。常に監視体制が整っており、障害が発生した場合でも24時間対応可能です。

これにより障害発生時に自社内で対応する必要がなくなり、IT部門の負担が軽減できます。

自社サーバーでの管理が不要になる

データセンターを利用することで、サーバーやネットワーク機器の稼働状況、バックアップ、セキュリティなどのインフラ管理をデータセンターに任せられるのがメリットです。また自社でサーバールームを持たずに済むため、IT設備にかかる管理コストや人件費が削減できます。

省エネにつながる

データセンターはエネルギー効率の高い設備や運用方法を採用しており、全体的に省エネ設計が施されています。これにより、境への負荷が抑えられ、企業の省エネにも貢献します。

専用の空調や冷却設備があり、サーバーの温度管理が効率的に行われています。一般的なオフィスビルでの冷却よりもエネルギー効率が高く、最適な環境が保てるのがメリットです。最近では、再生可能エネルギーを利用するデータセンターも増えています。

データセンターのデメリット・注意点

データセンターにはメリットが多いですが、デメリットや注意点も存在します。

レンタルサーバーより費用が高い

データセンターを利用する場合、特にハウジング形式ではコストが高くなることがあります。ラックや電源、回線などの専有スペースを利用するための月額費用も、通常のレンタルサーバーよりも割高です。

さらにバックアップ、保守契約、追加セキュリティ対策などのオプションを利用すると、追加で費用がかかる場合もあります。そのため予算やIT運用規模に応じて、データセンター利用が本当に必要か、他の選択肢(レンタルサーバーやクラウド)の方が適しているか検討が必要です。

トラブル時には出向くケースもある

データセンターではメンテナンスやトラブル対応を代行してもらえますが、状況によっては自社のスタッフが現地に出向いて対応しなければならないケースもあります。例えばハードウェアの追加や取り外し、機器のリセット、データの物理的な取り出しなどは、データセンター内での作業が必要です。

しかしデータセンターが遠方にある場合、頻繁な訪問が難しく、遠隔での操作や管理体制を整える必要があります。そのためデータセンターを利用する際には、物理的に対応が必要なケースに備えた運用体制を整えておくことが重要です。

ゼネコンによるデータセンターの取り組み事例

ここでは、ゼネコンによるデータセンター関連の取り組みについてご紹介します。

鹿島建設|間接外気冷房型の空調システム

出典:鹿島建設,データセンターにおける新たな省エネ技術「間接外気冷房型の空調システム」を開発,https://www.kajima.co.jp/news/press/202107/29a1-j.htm,参照日2024.11.12

鹿島建設は、データセンターにおける新たな省エネルギー技術として「間接外気冷房型の空調システム」を開発しました。具体的には、外気を室内に直接導入しない新たな外気冷房コンセプトを採用することで、設備の維持管理の負担軽減を両立させるのが特徴です。

外気を室内に導入しないことでサーバ室内の湿度が安定するため、直接外冷システムで必要となる加湿設備や除湿設備を削減でき、維持管理の負担軽減が可能です。データセンターに限らず、サーバ室と同様に大きな機器発熱の冷却が求められる生産施設などにおいても活用できます。

大和ハウス|DPDC印西パーク

出典:大和ハウス工業,データセンターブランド「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)」始動,https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20220329190642.html,参照日2024.11.12

大和ハウス工業は、2020年からデータセンター事業に参入しています。2022年4月よりデータセンターブランド「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)」を立ち上げています。

千葉県印西市にて日本最大級のデータセンターの開発プロジェクトに着手しており、2025年までに14棟、総延床面積約330,000㎡の開発を進める予定です。

まとめ

AIやデジタル技術が発展している中で、通信を支えるデータセンターの重要度が増しています。経済産業省でも早急な整備の必要性を提言しており、ゼネコン等の技術力が期待されています。