
NTTテクノクロスら、首掛けウェアラブルデバイスのメディア処理技術の共同開発契約
掲載日:
目次
「IOWN」についてピックアップします。NTTが進めるネットワーク構想であり、実現すれば低遅延・高速通信が可能になります。本記事では、IOWNのメリットや課題、具体的な活用方法についてご紹介していきます。
ここでは、IOWNの概要やメリット、課題についてまとめていきます。
https://www.rd.ntt/iown/0001.html
IOWN(読み方:アイオン)とは「NTT等が進めるネットワーク・情報処理基盤構想」のことを指します。「Innovative Optical and Wireless Network」の頭文字を取った造語で、直訳すると「革新的な光およびワイヤレスネットワーク」です。最先端の光技術を使って、豊かな社会を創り出します。
IOWNの構成要素としては、下記3点が挙げられます。
まず「オールフォトニクス・ネットワーク」は、ネットワークから端末まで「光」のまま伝送する技術のことです。従来の方式では「一旦電気に変換する」プロセスを経ていましたが、IOWNは変換なしで伝達可能になります。これにより「電力効率100倍」「伝送容量125倍」「エンド・ツー・エンド遅延200分の1」といった目標が実現します。
次に「デジタルツイン・コンピューティング」は、従来のデジタルツインを発展させた技術のことを指します。具体的には「多様な産業やモノとヒトのデジタルツインを自在に掛け合わせて演算を行う」といったことにより、高精度な再現や未来予測が可能になります。
最後に「コグニティブ・ファウンデーション」は、あらゆるICTリソースを全体最適に調和させ、必要な情報をネットワーク内に流通させる機能を担っています。
具体的には、マルチオーケストレータがクラウドやエッジ、ネットワーク、端末まで含めて様々な「ICTリソースを最適に制御する」ことで、ニーズにこたえるオーバレイソリューションの迅速な提供を目指すものです。
IOWNの主なメリットは、下記が挙げられます。
近年IT技術の発展がすさまじく、デジタル化のニーズが高まっています。IOWNにより通信の高速化や遅延解消が実現し、生活の質が向上すると考えられるでしょう。
また電力効率が上がることで省エネに繋がり、将来的なカーボンニュートラルの目標も達成できます。
一方でIOWNには、下記の課題やデメリットがあります。
IOWNは、NTTが開発を進めている構想です。しかし1社だけで実現できるものではなく、広範囲にわたる知識・見識が必要となります。
また、NTTは過去にiモードで「世界展開に失敗」した苦い経験があります。日本は素晴らしい技術力を持ちながらも、「ガラパゴス化」してしまう傾向があるのです。そのためIOWN構想では、グローバル市場で主導権を握れるかどうかが注目されています。
https://www.rd.ntt/iown/0005.html
NTTは、IOWNのロードマップを公表しています。2023年にはICTインフラにおけるエネルギー効率の飛躍的向上に取り組んでおり、データ伝送を段階的に「電気ベースから光ベースへ」と置き換え、経路を簡略化しています。
今後はロードマップに従い、データセントリックコンピューティング技術、ディスアグリゲーテッドコンピューティング技術などを取り込んでいくことにより、Smart World時代のナチュラルなサイバー空間の創造を加速していきます。
具体的には大容量データを低遅延に伝達しながら「AI制御」を行い、ヒトの知覚能力、反射能力を超越したシステム制御を実現します。また多数のAIシステムの協調により、社会規模の全体最適化や大規模シミュレーションを通じた「未来予測」を実現します。
ここでは、IOWNによって具体的に実現できることをご紹介します。
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/11/15/221115a.html
IOWNでは、遠隔地とのコミュニケーションが円滑になります。2022年には将来一般化していくと想定される「遠隔手術」の実現に向けた研究として、国産の手術支援ロボット「hinotori™ サージカルロボットシステム」とIOWNオールフォトニクス・ネットワークを接続する実験を行いました。
物理的に離れた環境を「1つの環境のように統合」することで、手術室の状況をよりリアルに伝送できることが実証されています。
この技術は、建設業で導入が広がっている「遠隔臨場」にも活用できます。遠隔臨場について詳しくは、下記記事をご覧ください。
https://www.rd.ntt/iown/0006.html
2023年4月には「自動運転レベル4」が解禁され、幅広い活用が見込まれています。その自動運転には都市や交通網全体の状況をリアルタイムにセンシングし、情報を統合する仕組みが求められます。
IOWNでは、データ容量、信頼性、消費エネルギー量など多くの点で高度な協調システムと制御システムの安定的な稼働が実現します。
「自動運転」について詳しくは、下記記事をご覧ください。
https://www.rd.ntt/research/JN202106_14115.html
人手不足や高齢化、天候不良などによる収入の不安定さや新型コロナウイルスといった要因から、農業の自動化ニーズが高まっています。
IOWNでは、監視センタ等の遠隔地から農機やドローン、草刈機、収穫機等の監視・制御が可能になります。またさまざまなロボットの相互連携など「デジタルアグリ革命」につながる新たなイノベーションの創出を目指しています。
IOWNは低遅延で高速の通信が可能になります。この技術は遠隔操作や自動運転にも生かすことができ、さらなる生活の質向上が期待されるでしょう。今後、日本だけでなくグローバル展開できるかどうかにも注目です。
二級建築士/インテリアコーディネーター(IC)/福祉住環境コーディネーター。 建築学科卒業後、インテリアメーカーにてICの業務を経験。 現在は建築・住宅系ライターとしてコラムを担当。ハウスメーカー、リフォーム、住宅設備会社での執筆多数。