「Autodesk Revit」向けの免震装置のファミリ公開について|深堀り取材【毎月更新】

建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第29回は、「Autodesk Revit」向けの免震装置のファミリ公開について、参考資料等を用いて解説します。

オートデスクでは、免震装置メーカー2社(オイレス工業・ブリヂストン)と大手建設会社5社(大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設・竹中工務店)からの協力を受けてBIMソフトウェア「Autodesk Revit」向けの構造用ファミリとして新たに構造系の免震装置のファミリを公開した。

免震装置メーカーの協力を得て免震建物の設計時にニーズの高い装置のファミリを共同整備

免震装置は、主に建物の下部などに配置することによって地震時などに建物に伝わる揺れを軽減し、安心・安全を担保する。免震装置の一つである免震ゴムは、薄いゴムと鉄板(鋼板)を交互に重ねた構造でできており、地震による激しい揺れをゆっくりした揺れに変える機能やエネルギーを吸収する機能を持つ。

一般的な耐震構造と免震構造
免震装置のイメージ(左:ブリヂストン・右:オイレス工業)


今回提供する免震装置のファミリでは、大手免震装置メーカーであるオイレス工業とブリヂストンの協力を得て、免震建物の設計においてニーズの高い天然ゴム系積層ゴム、鉛プラグ入り積層ゴム、高減衰積層ゴムを共同整備している。


設計符号や型番といった設計情報+ゴム径やせん断弾性係数など装置の詳細な情報を提供

 従来、設計者は、「Autodesk Revit」を用いて免震建物を設計する際、メーカーからカタログやCADデータを取り寄せて自前でファミリを作成していた。その際、メーカー提供の製品ファミリがある場合においても、製品ファミリでは設計符号の管理や型番の選択、配置の方法などが設計者の利用方法に合っておらず、設計フローに沿った使い方は困難であった。

これらの課題に対して、設計者・メーカー共に利用・整備がしやすいように、今回は入れ子の構成とした免震装置ファミリを整備した。設計者が直接編集を行うホストファミリ(親ファミリ)には、設計符号や型番といった設計情報、メーカーが整備するネスト(入れ子)されたファミリ(子ファミリ)には、ゴム径やせん断弾性係数など装置の詳細な情報が含まれている。

ホストファミリ(親ファミリ)は、「BIM Summit 構造分科会」によって作成されており、ネストされたファミリ(子ファミリ)は、「BIM Summit 構造分科会」の監修の基、各メーカーによって作成されている。

ホストファミリ(親ファミリ)及び手順書は、オートデスク社のホームページから、ネストされたファミリ(子ファミリ)は、各メーカーのホームページからダウンロードできる。弾性すべり支承などの免震装置は、今後、順次整備して公開をしていく予定だ。


◇ホストファミリ(親ファミリ)及び手順書 https://www.autodesk.com/jp/campaigns/bim-summit2024
◇オイレス工業(TOP/製品/免震・制振装置/CADファイルダウンロード/建築用製品/CADデータ一覧) https://www.oiles.co.jp/mt/plugins/AMember/auth.cgi?url=https%3A%2F%2Fwww.oiles.co.jp%2Fproducts%2Fdamping_isolation%2Fcad_download%2Fbuilding%2Findex.php
◇ブリヂストン(CADデータ[DXF]/技術資料ダウンロードサービス/免震ゴム[建築用]) https://www.bridgestone.co.jp/products/dp/antiseismic_rubber/download_cad.html


「BIM Summit 」によるファミリ提供活動の延長として捉えられる免震装置のファミリ提供

従来まで、設計業務においては、設計事務所や建設会社が異なるソフトウェアや独自のルールによってデータを作成していることから、各部材のモデルに含まれる属性データが異なることで、設計から生産・施工・維持管理などの各プロセスでデータの連携や活用ができないケースが多々あった。

このような課題に対処するべく、大林組、清水建設、大成建設では共同で「Autodesk Revit」による設計施工の効率的な業務プロセスの構築を目指した「BIM Summit」を 2016 年に発足し、その中で組織された「BIM Summit 構造分科会」において構造設計用 Revit ファミリの整備に向けた活動を行ってきた。

「BIM Summit 構造分科会」では、2018年12月より共同整備した鉄骨構造用ファミリの提供を開始し、2019年6月に鉄骨構造系部材ファミリの拡充を行った。2020年7月には鹿島建設も参画して、RC構造系の柱・梁ファミリを、2022年2月には社竹中工務店も参画して基礎・杭ファミリ、壁・床のパラメータを発表した。更に2024年1月には中高層木造建築の普及・拡大に対応して木造のファミリを追加した。

今回提供する免震装置のファミリについても、これまでのファミリと同様に、生産・施工のために必要な設計データの種類について、異なる組織間でも円滑に利用できるように整備を行い、パラメータを使用した効率的な構造設計ができるようになっている。これによって設計情報を生産工程で利用できるようになり、複数の組織間や業務プロセスを跨いだ生産性向上が期待できる。

オートデスク並びに大手建設会社5社は Revit向け構造用ファミリの国内整備を進め、JSCA(日本建築構造技術者協会)、BLCJ(BIMライブラリ技術研究組合)、bSJ(building SMART Japan)などの構造系BIMを検討する団体へも提案し、設計事務所や他の建設会社などにも利用を働きかけて業界全体の業務効率向上に取り組んでいく。


参考資料:設備機器・家具・給排水衛生・昇降機・空調メーカーなどによるファミリ公開情報

「Autodesk Revit」のファミリに関しては、BIMの普及が加速化し、建設のワークフローへの援用が進むのと並行して、複数の組織(サイト)において公開、提供されている。ここではネット上で流通している代表的な「Autodesk Revit」のファミリの公開サイトを再編集し、列記する。
◇オートデスク(建築設備向けコンテンツライブラリ) https://boards.autodesk.com/revit-mep-resources
 Revit MEPを活用する際に役立つコンテンツを提供。

◇BIMobject×大塚商会Revitファミリ特設サイト https://www.cadjapan.com/special/bim-navi/bimobject/
 Revitユーザー向けに国内で提供可能な海外含めた各種メーカーのRevitファミリ(Revitプロジェクトで利用できるファイル拡張含む)を提供する。

◇RUGライブラリ(RUG) https://bim-design.com/rug/library/
 Revit User Groupが作成したサンプル、テンプレート、ファミリ・共有パラメータ(設備)を公開中。
◇BIMobject https://www.bimobject.com/ja
 Revit、Archicad、Vectorworks、SketchUp、AutoCADに関する無料の製品メーカー別のBIMオブジェクトをダウンロード可能。
◇TOTO https://www.mediapress-net.com/search/TOTO2/index.do?id=TOT21081&tid=TOTO2
 TOTOのBIMデータを公開。
◇LIXIL https://www.biz-lixil.com/service/cad/search/
 BIMデータ(Revit形式・Archicad形式)を提供。
◇岡村製作所 https://www.okamura.co.jp/professional/
 レイアウト時に使用できるオフィス家具などのBIMデータをシーンごとに提供。
◇コクヨ https://www.kokuyo-furniture.co.jp/cad/download.html
 主要なコクヨ製品の3D CAD・BIMデータを提供。
◇イトーキ https://design.itoki.jp/index.php
 イトーキ製品の中から主要な製品をセレクトしてBIMデータ(Revit形式)を提供。
◇三菱電気 https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/bim/index.html
 納まり検討、仕様検討など昇降機のレイアウト、設計を行うためのBIMパーツを提供。
◇東芝エレベータ https://www.toshiba-elevator.co.jp/elv/new/support/bim/
 東芝エレベータの昇降機のBIMに関する各種情報を提供。
◇新晃工業 https://www.sinko.co.jp/bim/?p=AHU&f=PH
 空調機、ファンコイルユニットに関するRevitのファミリを提供。