中野サンプラザを3次元データで再現してオープンデータとして公開し広く利活用を促進|深堀り取材【毎月更新】

中野サンプラザは2023年7月に惜しまれつつ閉館した。中野区では、ランドマークとして、音楽の殿堂として愛された中野サンプラザを、文化財としてデジタルアーカイブ化するため外観と建物内部を計測して3次元データ化し、広く公開した。

今回、作成したデータは、オープンデータとして公開されているため、VR空間上に中野サンプラザを蘇生し、バーチャルツアーやコンサートを開催するなど、利用者が商用利用も含めて自由な発想で活用できる。

3次元点群データと3次元PLATEAU建築物モデルを重ね合わせた活用事例など広く公開中

中野サンプラザの3次元データの活用事例を紹介する。3次元データの周知と今後の更なる利活用を図るため、中野区ではデータ利用者を対象として利用目的などを尋ねるアンケートを行っている。回答内容は、中野区のホームページなどで紹介する場合もあるとのことだ。
著作権は、各著作物の制作者に帰属すると共に、掲載しているアプリケーションなどについては内容の正確性や動作を中野区が保証するものではない。

アンケートフォーム
3次元点群データをWebブラウザで閲覧できるビューア (制作:ぴっかりん)

3次元点群データと3次元都市モデル(PLATEAU建築物モデル=LOD1)の重ね合わせ (制作:Geolonia・塩飽洋平氏)

外観・内観をレーザースキャナで計測+3次元点群データを基に3次元建物モデルを作成

3次元データについては、中野サンプラザ外観、エントランス、コンサートホール、チャペル、レストランをレーザースキャナなどを計測し、3次元点群データ(las形式:xyzの3次元座標の情報と色情報を持った点の集まりから構成されるデータ)を作成すると共に、点群データを基に3次元建物モデル(ifc・nwc・nwd、・glb形式)を作成している。

3次元点群データ表示イメージ


データ利用については、東京都オープンデータカタログサイトでデータをダウンロードできる。 

データの閲覧は、各データの拡張子に対応したソフトウェアによる。データはいずれも、※クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0国際(CC-BY4.0)の基で提供している。

◇計測に使用した機材
・外観: CityMapper-2(航空測量センサ)、Hovermap ST-X(ハンドヘルドレーザスキャナ)、iPhone 12PROMax(搭載のLiDARセンサを利用したソフトウェアPix4DCatchを使用。
・建物内部: Focus S350(地上レーザスキャナ)、ZEB-HORIZON(ハンドヘルドレーザスキャナ)、Hovermap ST-X(ハンドヘルドレーザスキャナ)、iPhone 12PROMax(搭載のLiDARセンサを利用したソフトウェアPix4DCatchを使用。
※クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0国際(CC-BY4.0): クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、インターネットのための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツール。

3次元カメラ「Matterport」による360度ビューとドールハウスビューをビューア上で閲覧

Webビューアによる閲覧のみも可能となっている。3次元カメラ「Matterport」によって撮影した成果をもとに作成した、360度ビューとドールハウスビュー(いずれも建物内部のみ)をWebビューア上で閲覧できる。公開期間は2027年3月27日までとなっている。

以下のリンクからアクセスすると、パスワード画面が表示されるので「nakano」と入力し、「移動」ボタンをクリックすること。
エントランス
コンサートホール1階
コンサートホール2階
チャペル
レストラン

Matterportエントランス3次元ビューイメージ


Matterportドールハウスビューイメージ


iPhoneのLiDAR+国交省「plateau 」+ BIMソフト「Archicad」などで3次元都市データ作成

筆者の住まう身近な環境においても3次元都市モデルを日常的に公開する動きが急だ。デジタル化した施工図事務所を母体としてスタートアップしたスカブラ社(代表取締役原行雄氏)が手掛けた事例を紹介する。
練馬区には比較的、多くの公園や緑地がある。スカブラ社では、大泉学園から石神井公園の南口一帯を対象にして国土交通省の「plateau 」から都市データを読込み、「Scaniverse」で3次元スキャニングしたものをBIMソフト「Archicad」のビューア「BIMx」に落とし込んでいる。

数年前までは数百万円した業務用の3次元スキャナも手頃な価格で利用できるようになった。スカブラ社が用いたのは、iPhoneの最新機種に採用されたLiDAR(Light Detection And Ranging)という3次元スキャニング技術だ。
LiDARは、照射した光が対象物に当たり、センサーに戻ってくるまでの時間差を計測し、距離を測る技術のことだ。照射した点群を基にデータ処理をすれば3次元モデルが完成し、さまざまに加工、利活用できる。スマホ一台とBIMソフトが稼働するパソコンがあれば、本事例のようなレベルの3次元データ処理が可能となる。
スカブラ社による大泉学園+石神井公園の3次元都市データ