BIMとCADの違いは?それぞれのメリット・デメリットをご紹介
建設DXを推進する上で欠かせないBIMについて、よく利用されているCADとの違いは何なのか、それぞれのメリットやデメリットをご紹介します。CADとの比較を通して、BIMとは何かを理解する手がかりになればと思います。
目次
BIMとは
BIMとは、「Building Information Modeling」の頭文字を取った略語です。BIMの概念自体は、CADが登場した時期とそれほど変わらない時期に生まれています。
日本の企業に普及し出したのは2010年代頃からです。今や手書きで実務をこなしている方はほとんどおらず、CADは広く普及していると思いますが、BIMについては、小規模な事務所をはじめまだ導入がそこまで進んでいないのが実態です。
CADは2Dや3Dの形状を操作するモデリングに特化している一方で、BIMの場合は、BIMの中にInformationという言葉が入っていることからも、形状のみでなく、多くの情報を用いてモデリングを行います。形に関する3次元情報に加え、時間やコスト等の次元を加え、4Dや5Dなどと多次元でBIMモデルが表現されたりもします。
例えば窓の場合は、形状情報である各種寸法の他に、ガラスやサッシの素材、メーカー、コスト等の属性情報を付与していきます。BIMは、1つの建物データを構築していき、必要なデータを必要な時に抽出するイメージで、CADは、建物の1部を表現したもので、1つの建物データは存在せず、作成された図面や仕様書等から最終形を浮かび上がらせるイメージです。
BIMの概念は、CADのそれと大きく異なるので、手書きからCADに移行した時よりも生産プロセスを大きく変化させる可能性があります。
CADとは
まずはCADのことを簡単に説明します。CADとは、「Computer Aided Design」の頭文字を取った略語です。日本語ではコンピュータ支援設計などと訳されますが、これまで人の手で行われていた設計作業の効率を、コンピュータの力で高める目的からきた言葉です。
CADの登場は、1960年代に遡ります。最初は2DCADが生まれ、1970年代に入って3DCADが開発されていきます。一般企業に導入されるのは、1980年以降でしたが、当時はコンピュータの性能がボトルネックとなり、一部の大手企業にしか導入できないものでした。
2000年以降には、多くの企業でCADが定着するようになりました。振り返ってみると、CAD自体の歴史は長いですが、実際に現場で使用されるようになったのは、ここ20年程度です。
実際、CADソフトの普及により、これまで手作業で行っていた設計業務をコンピュータで行えるようになり、業務効率が大幅に上がりました。
BIMとCADの違い
BIMとCADには主に「データ保持の役割」「3次元化の順序」に違いがあります。
データ保持の役割の有無
BIMはCADと違い、データ上に建築物の各部位の要素を付加できるのが強みです。そのため製図のサポートといった役割を果たすほか、情報をデータとして保持が可能。設計段階だけでなく、維持管理や積算業務にも活用されています。
3次元化の順序の違い
まずCADは、2次元の平面図を書くところからスタートします。その後3次元の形状に組み立て、3D CADを作成していくのが手順。そのため作業終盤で修正になった場合、2次元の図面からやり直す手間が掛かっていました。
それに対してBIMは、最初から3次元で設計するという違いがあります。2次元の図面は、3次元の断面図として切り出して作成。したがって部分的な修正が入っても、リアルタイムで各部位に反映されます。わざわざ2次元の図面を作成しなくても良くなるため、業務効率化が図れるのです。
BIMのメリット・デメリット
BIMのメリット
・情報共有が行いやすい
BIMファイルに情報を詰め込むので、情報の管理、運用や活用が行いやすくなります。
・図面間に不整合が生じない
元となる建物モデル自体に手を加えて、図面化を行うので、不整合は絶対に生じません。修正が容易に行えます。
BIMのデメリット
・導入コストが大きい
BIMソフトの価格が高い上に、使いこなすには、高い技術と知識が求められ、学習コストも高いです。活用するには運用ルールが必要になり、導入の際に決めておくべき事項が多いのもBIMの導入が難しい理由の一つです。
・データが大きくなりがち
情報を詰め込むため、建物規模によってはデータが大きくなり、ハイスペックなコンピュータが必要になることがあります。データを分割するなど運用上のルールの構築が必要になります。
CADのメリット・デメリット
CADのメリット
・データが軽い
基本的には形状データのみなので、多くの情報を詰め込むBIMに比べてデータは軽く、扱い易いです。
・導入コストが小さい
一般的にBIMソフトに比べ安価で、無料のソフトもあります。ソフトの選択肢がBIMに比べて多いです。BIMソフトの導入に比べ費用を抑えられるのと、学習コストも低いです。
CADのデメリット
・修正に時間がかかる
各図面を個別に編集するため、図面間の整合が取りにくく、修正に時間がかかる上、設計ミスの原因となります。
BIM主要ソフト
次に、BIM対応の主要ソフトについてご紹介します。
Revit
Autodesk社製のため、同社製の「AutoCAD」等との連携がしやすいのがメリット。3Dcadとしてよく使用されている「Rhino」といったツールとの連携機能など、バージョンアップする度に新機能が登場しています。
ArchiCAD
操作性が良く、特に意匠系で用いられることが多くなっています。RevitがWindowsでの使用が想定されているのに対し、ArchiCADはWindows、Macのどちらでも使いやすいのが特徴。Grasshopperとの連携が可能で、比較的簡単にパラメトリックな検討ができます。
GLOOBE
国産のBIMソフトで、日本の設計手法や建築基準法に対応しているのが特徴です。施工支援システムも搭載しており、設計・施工からトータルマネジメントが可能となっています。
ソフトについて詳しく知りたい方はこちら
最後に
CADとBIMの違い、それぞれのメリットやデメリットを挙げさせていただきました。
上記に挙げた以外のメリットやデメリットももちろんありますし、自身の環境によっても異なると思います。BIMは、生産プロセスを変革する大きな可能性を持っていますが、導入時のコストが大きいことが普及を阻んでいる最も大きな理由です。
最初は、完全にどちらか一方で業務を行うよりも、それぞれのメリットとデメリットを理解し、必要に応じて補完して実務で使用していく形が良いでしょう。