建設業の省力化は進んでいる?事例を含めた現状を解説

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著者:鈴原 千景

建設業は、生産性の向上やイメージの改善など、業界として多くの課題を解決していく必要があります。特に、生産性に関しては残業規制も含めて、業界全体で向上を促す取り組みが増加している状況です。しかし、「建設業における省力化を実感できておらず、具体的な対策を検討することが難しい」というケースもあるでしょう。

本記事では、建設業の省力化の概要や事例について詳しくみていきましょう。

「トレンドワード:省力化」

建設業に受ける省力化は、業務に対する作業の負荷を軽減することを意味します。例えば、作業者担当者の業務負荷を軽減するための以下のような取り組みは省力化に該当するといえるでしょう。

  • ロボットによる溶接・運搬・見回り
  • リアルタイムの情報共有
  • BIM/CIMの活用による設計業務の効率化
  • アプリによる勤怠管理
  • 遠隔地からの重機・タワークレーンの操作

書類作成業務に関しても、写真の自動整理・フォルダ分け、報告書類作成も行えるものもあります。事業者によって、省力化するポイントは異なるものの、労働者の減少や生産性低下の対策にもなりえるため、多くの事業者が取り組んでいるといえるでしょう。

また、政府が提唱する「i-Construction2.0」は、DXを推進したうえで作業の自動化を図るものであり、生産性向上の手段を業務として取り入れる前提となっています。労働力の減少が理由であるものの、建設業界として省力化・省人化に注力していく必要がある状況です。

省力化に注目が集まっている理由

ここでは、建設業界の省力化についてみていきましょう。人口減少に伴う労働力不足が深刻化しているため、効率的な作業や先進的技術の導入が求められています。また、省力化は作業員の安全性向上や労働環境の改善、企業の競争力強化にもつながります。

労働人口の減少

建設業の労働人口は、令和3年の段階で約479万人です。今後はより減少していく見込みとなっています。労働人口が減少する理由は、少子高齢化が日本に進んでいる点だけでなく、建設業に入職する人材が退職する人材よりも少ない点が原因です。

業界イメージを変える施策として、建設キャリアアップシステムの活用や長時間労働の是正、女性の活躍推進などを行っているものの、イメージが変わるまでには時間がかかります。

また、労働力を確保する前に省力化に取り組まなければ、現状で活躍している人材の退職につながるといった悪循環につながるため、省力化に注目しているといえるでしょう。

残業の上限規制

2024年の4月から中小企業も残業の上限規制が適用されています。勤怠管理を徹底的に行った上で違反した場合には、罰則が適用されるため、多くの事業者は上限規制を守りながら、作業を行わなければなりません。

また、工期に関しても休日を考慮した適正な工期の見積が努力義務となりました。そのため、これまでと同様の働き方では生産性を高めることが難しく、残業を前提とした業務の実施が難しい状況です。

そのため、できるところから業務を省力化し、これまで以上に生産性を上げていく必要がある状況に変化しつつあります。

労働時間に対する生産性向上

建設業では、労働時間に対する生産性が低いといわれてきました。しかし、現状では、生産性向上の取り組みを行っている事業者とそうではない事業者では、期間や作業を行う人々に対しての負荷が大きく変化しています。

また、生産性向上によって、省力化につながることから、結果として工事の利益率の改善や労働環境の改善につながるといえるでしょう。

省力化の事例

建設業界では、労働力不足や作業効率の向上を目的として、さまざまな省力化の取り組みが行われています。BIM/CIMやドローンといった技術の導入と従来の作業方法の見直しによって、労働時間の短縮と作業負担の軽減につなげている事例が多くあります。

ここでは、具体的な省力化の事例についてみていきましょう。

ロボットによる現場内運搬

資材運搬をこれまで人力に頼っていた場合は、自立運転が可能なロボットを導入することも省力化につながります。例えば、スラブや床板どの配筋が麦田氏となっている場所でも運搬作業をロボットに任せられるため、人材の負荷を軽減可能です。

段差への対応などは調整が必要になるものの、人の力では持ち運びにくい重量の鉄筋を運べる点やセンサーによる障害検知などはメリットといえるでしょう。

衛星とドローンを活用した現場計測

地形の測量や構造物の周りの測定に、ドローンとGNSS衛星の情報を連携させることで、人による測量の手間を削減できます。また、作成された3Dモデルをクラウドプラットフォーム上で展開することで、関係者への情報共有を円滑にすることも可能です。

ただし、事前のドローン用のルート策定や共有プラットフォームの選定といった専門的なスキルや発注者とのルール作りといった作業も必要です。

ロボットによる現場見回り

生成AIとロボットを活用した現場の見回りも開始されています。IoTセンサーやカメラのデータを遠隔のPCで確認できることに加え、スマホを通じてロボットから異常を伝えることも可能です。

そのため、現場管理者はトラブルを早く把握できるだけでなく、他の事業者との話し合いが必要な場合は、作業員に指示を出しながら他の事業者とコミュニケーションを取るといったこともできます。

衛星を使ったレーザースキャナでの計測

ドローンではなく、衛星を使ったレーザースキャンによる計測も可能です。出来高管理や施工においてもICT重機を活用し、報告に関しても3次元施行データを工事完成図書として納品するため、管理者だけでなく、作業者の負担も軽減可能です。

まとめ

建設業は、労働環境の改善や生産性の向上といった課題に対して、様々な施策が実施されています。ロボットの導入やBIM/CIMの活用、人力に頼らない計測は今後増加していくでしょう。いずれ、建設業のイメージも変化する可能性も予想されます。

技術の導入から、省力化につながるまでには、ある程度の時間がかかります。しかし、労働時間の短縮や工事の質の担保、生産性の向上を図るには最新技術の導入が必須です。自社でできるところから省力化に取り組んでみましょう。