国土交通省:i-Construction2.0を発表。施工現場のオートメーションは進むか?
建設業では「i-Construction」というワードを聞いたことのある事業者は多いでしょう。ワードに馴染みがなかったとしても、業界内でDX推進やICT施工の実施が業界内で増加したのは、i-Constructionの影響だといえます。たとえば、公共工事におけるBIM/CIMの原則適用などは代表的な施策です。
そして、2024年4月16日には、国土交通省から更なる生産性向上を目指した「i-Construction2.0」が発表されました。
本記事では、i-Construction2.0の概要やこれまでの取り組みについて詳しくみていきましょう。
目次
i-Constructionとは何か
i-Constructionとは、2016年に国土交通省が策定した「建設業の生産性向上のために、ICTを活用する」という取り組みです。次のような成果を挙げました。
- 2016年にはICTの公告件数は84件程度。しかし、2022年には13,429まで増加した
- 2022年の段階で土木工事においてはICT施工率が87%となっている
- ドローンを活用した測量や施工管理における3次元データを扱えるアプリ、ソフトウェアが増加した(ドローンにおいては人工を4割程度までに削減した)
- 生産性の向上では9.2%の効果があった
生産性の向上や業務効率化、労働時間の削減などに一定の効果を示したといえるでしょう。しかし、現場内におけるオートメーションや省人化においては課題があり、今後の社会情勢をふまえると、更に生産性を向上させていく必要があります。
i-Constructionが必要とされる3つの理由
i-Constructionが必要とされる主な理由は次のとおりです。
日本全体の労働人口は減少傾向にあり、建設業に関しては今後多くの人材が退職すると予想されています。また、若年層の入職者が退職者と比較して少ないため、更なる生産性の向上や業務効率化が必要な状況です。
災害に関しては、気候の変化によって、今後も短期集中型の雨が増加すると予想されています。そのため、建設業の役割として、災害を未然に防ぐ・発生後の復旧をスピーディーに行うことが求められています。
インフラの老朽化に関しては、自治体によってはメンテナンスもできていないケースも多い状況です。今後官民一体となって設備更新に取り組む意向を国土交通省が示しており、社会基盤を維持も含めて建設業として取り組んでいく必要があります。
i-Construction2.0は何が違うのか
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf
i-Construction2.0とは、建設現場の生産プロセスのオートメーション化を目的としている取り組みです。デジタル技術の使用を前提として、省人化や生産性の向上を目指しています。
i-Constructionとの違いは以下のとおりです。
- i-ConstructionはICTを含む技術の普及・活用促進を目指したもの
- i-Construction2.0は普及したICTやAIなどの技術を駆使してオートメーションを促進するもの
また、目標として「2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍向上する」ことを目指している点も知っておきましょう。
「施工のオートメーション化」
施工のオートメーション化では、ノウハウを持つオペレーターが複数のICT重機などを離れた場所から管理する取り組みを行います。また、施工管理者も遠隔から現場を確認できるため、作業効率の向上・人材の適正配置につながります。
国土交通省としては、安全ルールやデータ規格の基盤作りを行い、ICT施工を原則とする動きも進めている状況です。また、現在は各社で作っているプラットフォームなどの提供も検討されており、AIやデータ活用を前提とした施工を進めていくとしています。
「データ連携のオートメーション化」
調査から維持管理にいたるまでのデータをデジタル化・3次元化する取り組みを行います。たとえば、次のような取り組みに注力していく意向を示している点を知っておきましょう。
- 施工に関わる全ての人々が必要なタイミングで必要なデータにアクセスし、情報を共有・参照する
- 各段階で必要なデータの整備、情報共有基盤の構築
- BIM/CIMを用いたデータ連携、ペーパーレスの徹底
国土交通省においては、BIM/CIMの課題であるデータの明確化を目指し次のような取り組みを行うとしています。
- 数量が把握できている積算や設計変更からデータ連携の仕組みを作る
- デジタルツインを利用するための国土交通データプラットフォームの改良やデータベースの構築する
「施工管理のオートメーション化」
国土交通省は、図面やデジタルデータの活用に加え、必要となる建材などの発注や運搬、計画などにおいてもオートメーション化を進める予定です。たとえば、検査や出来高確認においては、遠隔での確認ができるネットワーク体制やカメラ画像による解析が可能となる設備を整えるとしています。
また、次のような目標も策定されています。
- 5年以内.リアルタイムデータの活用・プレキャスト製品の規格の統一促進
- 10年以内.大規模土木工事における一定工種の自動施工
- 15年以内.建築も含んだ大規模現場での自動施工
ロボットを使用した施工については、国土交通省でも施設内での動作確認を行っており、今後は山岳地や離島でも活用していく予定です。
まとめ
i-Construction2.0とは、デジタル技術の使用を前提とした、建設現場の生産プロセスのオートメーション化を目的としている取り組みの総称です。建設業においては、これまで各社が生産性向上、業務効率化を目指し、独自にICT施工やDX化を進めているケースも多かったといえるでしょう。
しかし、i-Construction2.0ではプラットフォームの構築やデータ活用、施工の自動化を目的としており、国土交通省としても注力していく意向を示しています。i-Construction2.0によって業界がどのように変化していくのか注目しましょう。