実用段階に入ったロボット運用の現状について|深堀り取材【毎月更新】
建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第20回は、建設業において実用段階に入ったロボット運用の現状を解説します。
目次
ロボットと人が共生するビルOSともいえるプラットフォーム構築に向けて実証実験を実施
再開発で活況を呈している神谷町地区に新築された高層のオフィスを取材で訪ねた際のことだ。エレベータホールに入ると、液晶パネルがあり、乗降者は液晶パネルで希望階を指示する。これによって全エレベータの挙動を制御しており、個々のエレベータのカゴに入場した際も、個別に希望階を指示する必要はない。
この事例のようにオフィスビル自体も益々、挙動を制御するべくインテリジェント化している。その際にエレベータのような垂直方向の移動と、ロボットのような水平方向の移動を統合的に制御するビルOSともいえるプラットフォームの構築が急務となっている。本稿では、実用段階に入ったロボット運用の現状を探索し、報告する。
ロボットと人の共生空間を創造する「ロボットフレンドリービルディングデザイン」というビジョン
戸田建設は、ALSOK、オカムラ、ZMP、三菱電機ビルソリューションズと協働してロボットと人が共生できる「ロボットフレンドリーな環境」の実現を目指し、「ロボットの群管理及び人のエレベーター同乗連携(クラウド方式)」に関する複合実証実験を行い、その成果を公表した。
戸田建設では、ロボットと人の最適な共生空間を創造する「ロボットフレンドリービルディングデザイン」というビジョンを掲げ、この分野のリーディングカンパニーを目指している。今後は、RFA(Robot Friendly Asset Promotion Association:ロボットフレンドリー施設推進機構)への参画企業として通信規格の標準化に積極的に取り組むと共に、「ロボットフレンドリービルディングデザイン」の構築に向けて更なる努力を重ねていく。
RFAのロボット群管理における通信仕様の規格化に先行してシナリオを想定して実証実験
従来、建物内において複数のロボットと人が共存する際には、複数のロボットが同じ通路や交差点を通行する際のルールがなく、複数のロボットがエレベータを使用する際のルールもないなどの課題があった。加えて建物全体で複数ロボットの位置情報を一元化して把握・管理する明確な定義もなく、エレベータのカゴ内では電波が届かないためロボットを制御することが難しかった。
今般、それらの課題を解決するためにRFAのロボット群管理における通信仕様の規格化に先行して、独自のシナリオを想定して実証実験を行った。
実証実験では、都内の施設「Lstay&grow南砂町」において3台のロボットが、共通のロボット管理プラットフォーム「1ROBO-HI(ロボハイ)※1」と連携して通路や交差点を衝突することなく走行した。
ロボットがエレベータを使用する際には、「ROBO-HI」を通じて「Ville-feuille(ロボット移動支援サービス)※2」と連携し、順番に乗降した。エレベータのカゴ内においては、ウェーブガイドLANシステムから供給されるWi-Fi環境を通してロボットが制御され、ドローンを活用した屋内警備も合わせて実施した。
※1 1ROBO-HI(ロボハイ):ZMP社が提供する提供複数ロボットの運行管理やビルOS、エレベータとの連携を実現しているロボット管理プラットフォーム。
※2 Ville-feuille(ロボット移動支援サービス):三菱電機ビルソリューションズの商標。
ロボットの社会実装を促す「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」を積極的に推進
NECネッツエスアイでは、サービスロボットを群管理するための標準規格案を策定し、本社ビルにおいて複数種・複数台のサービスロボットを稼働させる実証実験を実施した。
労働力不足の解消に向け、配送や清掃、案内などを行う様々なサービスロボットの普及が進みつつある。経済産業省は、2019年からロボットの社会実装を促す「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」を積極的に推進しており、NECネッツエスアイにおいてもサービスロボットのさらなる普及を目指して2021年から本事業に参画している。
通路の通行状況などを集約して制御システムとの接続に必要な仕様の標準規格案を策定
近年、顕在化しつつある労働力不足を解消するためには同一建物内において、異なる役割を担うサービスロボットを同時に複数台稼働させることが非常に効果的だ。一方でそれらを管理する制御システムはメーカーや機種によって異なるため、複数台のサービスロボットの群管理を実現するには、それぞれの制御システムを連携させる必要がある。
加えて、エレベータ、セキュリティゲートなどの建物設備との連動、狭路・袋小路など建物内の構造に合わせた調整が必要となるなど、スムーズな導入や活用エリア拡大の妨げになっていた。
それらの課題を解決するために複数のサービスロボットが同時に進入することが困難な建物設備の使用状況、すれ違いが困難な通路の通行状況などをリソース管理※3サーバに集約し、制御システムとの接続に必要な仕様の標準規格案を策定した。これによって異なる制御システム間の連携が容易になり、複数種・複数台のロボットの群管理をスムーズに実現できる。
※3 リソース管理:エレベータ、セキュリティゲート、狭路など建物固有の設備の状況を管理サーバに集約。各々のロボット制御システムは管理サーバから提供されるリソース情報を基に制御対象ロボットへの動作指示を行うため、制御システム間の精緻なすり合わせが不要となり、群管理の実現に要するコストを大幅に低減することができる。
本社ビルにおいて複数種・複数台のロボットの群管理制御を目指して実証実験を実施
実証内容
・サービスロボットによるエレベータの呼び出し、乗降、順番待ち。
・サービスロボット同士の狭路での待ち合わせ、すれ違い。
・サービスロボットによるセキュリティドアの通過、順番待ちなど。
実証サービスロボット
ー配送ロボット:YUNJI GOGO
ー清掃ロボット:PUDU CC1
ー案内ロボット:temi V3
実証システム
マルチロボット管理プラットフォーム。サービスロボットと建物設備・外部システムを連携させ、フロア間移動等の利便性向上、複数ロボットを共通管理することで運用効率化を実現するクラウド型プラットフォーム。NECネッツエスアイ製。