施工BIMと使用するソフトについて
特に施工フェーズに焦点を当てた施工BIMは、合意形成、干渉チェック、施工計画、施工図作成、数量算出などを効率化できるメリットがあります。施工の中にも様々な業務があるため、BIMを活用できる業務も多く、ソフトの選定においては明確な目的の設定が成功のポイントとなります。
BIMが活かせる領域は広く、その広さから、フェーズや目的に応じて設計BIMや施工BIM、維持管理BIMなどと区別して呼ばれることがあります。このように呼び方が分かれているのは、同じBIMでも必要な情報やその詳細度等がそれぞれで異なるためです。
設計BIMについては過去のこちらの記事(https://news.build-app.jp/article/21995/)をご参照ください。
本稿では、設計の次のフェーズである施工BIMに焦点を当ててご紹介します。
施工BIMとは
施工BIMとは、その名の通り建物の施工時にBIMを活用することです。設計時には、要求を満たし、実現できる計画案を作ることにフォーカスしますが、施工時では、いかに建てるかということによりフォーカスします。
設計時に決めていなかったことや決められなかったことが、施工時に決まってきます。そのため、基本的に施工BIMの方が、設計BIMよりさらに細かな情報を扱います。設計時のBIMモデルをそのまま活かして施工時のBIMモデルを作れれば無駄が無く良さそうですが、実際には施工時にBIMモデルを新たに一から作成しているケースが多いです。
一見無駄が多いように思えるのですが、設計時のBIMモデルを確認し、修正や情報の追加を行うよりも、慣れたソフトで一から作った方が、結果的に早く、使えるデータが作れるのです。というのも、BIMデータだけを渡されたところで、作成時のルールや情報の正確性が不明、責任範囲が曖昧など単純に引き継ぐことが難しい問題もいくつかあるため、そのようになってしまいます。
引き継ぐためには、BIMデータ以外にも引き継げるだけの情報を別途用意する必要があります。仮に施工時に一からBIMモデルを作成したとしても、得られるメリットはたくさんあるので、以下にまとめます。
関係者との合意形成
3Dモデルを用いて計画を進めるため、発注者や設計者、施工関係者間での情報共有が行いやすく、合意形成の迅速化が可能になります。
干渉チェック
躯体と設備、躯体と建具などの建築部材同士の干渉確認のほか、仮設計画においても足場や仮囲い等の干渉確認も容易になり、修正があった際にも早期に対応できるようになります。
施工計画
BIMモデルを活用することで、施工時のイメージも掴みやすくなり、施工計画の検討や確認速度の向上が図れます。
施工図作成
BIMで作成した図面間に不整合は起こらないので、正確に素早く図面の作成や修正が可能になります。ただし、従来のCADと同等の図面を作成するには多くの工数が必要になるので、BIMソフトの上手い使い方を考える必要があります。
数量算出
部材の属性情報を活用することで、簡単に数量を拾うことができるため、現場での省力化につながります。ただし、項目によっては従来のような数量拾いが難しい部分があります。
施工BIMでよく使用されるソフト
日本の施工BIMにおいて、BIMモデルを作成するためによく利用されているソフトは、Autodesk社のRevitやGraphisoft社のArchicadで、設計BIMとの違いはほぼ無いです。
鉄骨製作業者などは、Trimble社のTekla Structures、設備業者だとNYKシステムズ社のRebroなども利用されており、専門業者によっては違いもあります。干渉チェックや施工シミュレーションを行うのには、NavisworksやSolibriなども利用されています。
BIMモデルを作成する際には、各ソフトの基本的な機能に加えて、施工時に役立つ便利な機能をアドインで追加するなどして適宜カスタマイズして活用しています。例えば、MFToolsというツールは、外部足場作成機能などを有した施工時に活用できるRevitのアドインです。
施工と一括りに言っても、実際に行なっている業務は様々です。施工計画の作成、納まりの検討、施工図の作成、工事管理、製作業者との連携、数量確認、発注、安全管理など多岐に渡り、関わる人の数も多いです。そのため、上で述べたBIMモデルを作成する以外にも、BIMデータを活用できる業務がたくさんあります。
BIMモデルの作成には高度な技術やノウハウが必要ですが、関係者全員が作成できる必要は全くなくて、各自必要な情報を素早く得られればそれで効率化は進みます。例えば、ANDPAD BIMのようなBIMデータの閲覧や共有が行えるものも現場での業務効率化を進めるツールの一つです。
施工領域では、スタートアップも多く出てきており、BIMの活用は今後さらにスピードを持って進んでいくものと思われます。また、それ以外にも大手企業を中心に各社BIMを活用した様々なソフトを独自開発し、実際に活用しています。
それらの多くは、BIMだけではなくて、点群やVR/AR技術などの他の技術と組みわせることで新しい価値を生み出し、幅広い業務に対して効率化を推進しています。
BIMは、建物に関わる誰に対しても価値を提供できる可能性を秘めています。施工BIMだけでも幅は広いので、ソフトを選定、あるいは開発する際には、その目的を明確にし、特に最初は目的を絞ってそれらを活用することが成功のポイントです。