建設業の人手不足解決策|ロボット活用事例紹介
目次
トレンドワード:建設業界の人手不足
『建設HR独自分析|2030年の技術者は3.2万人、技能工は23.2万人不足と予測』でご紹介した「建設業界の人手不足」についてピックアップします。
建設業界の人手不足の現状
建設業では、慢性的な人手不足が問題となっています。ここでは、その主な背景を解説します。
建設業就業者の減少
建設業就業者数(令和4年平均)は479万人で、ピーク時(平成9年平均)から約30%減少しています。また建設業者数についても現状は約48万業者で、ピーク時から約21%減っているのが現状です。
特に若年世代の減少も問題となっており、建設業全体で高齢化が進んでいます。令和4年度では、29歳以下の割合は1割にまで低下しています。
外国人労働者が増加
日本では少子高齢化が進んでおり、労働力不足が問題になりつつあります。各業界において、外国人労働者が日本人労働者の減少を大きく支えているというのが現状です。
数ある業界の中でも、特に外国人労働者の割合が高いのが建設業界です。年々その数は増え続け、2020年には2015年の5倍になっています。(「厚生労働省 外国人雇用状況の届け出資料より作成:急増する建設業界の外国人就労者の推移」より)
ヒューマンリソシアの試算によると、2030年には建設技術者が3.2万人の不足、建設技能工は23.2万人が不足するとの予測がなされています。
建設業界の人手不足の要因
「3K」の現場作業
建設業はよく「3K」の職場と言われます。3Kとは「きつい、汚い、危険」の頭文字を取った言葉です。
重い建材や資材を扱う肉体労働で、土埃や汗にまみれて作業することも多くあります。また高所作業、地下作業、荒天時の作業といった危険を伴う現場も日常茶飯事です。現在ではかなり改善されている部分もありますが、依然として3Kのイメージがあるため人材が集まりにくいのが現状でしょう。
雇用環境
建設業界に人材が集まらない理由としては、現場作業が多く残業超過も日常的ということも大きな要因と考えられます。
休日が少なかったり、月給が仕事内容に見合ってなかったりすると、新卒採用でも避けられる傾向が強いです。最近ではSNSの普及により現場の状況が分かってしまうケースも多いため、とくに若者からは敬遠されがちとなっています。
建設業界の人手不足への対策
建設現場での改善すべき点を是正していくことが、労働力不足対策として期待されます。その中のひとつとして、ロボットにより現場作業を省人化する取り組みが広がっています。ここでは、建設業での具体的な事例をご紹介します。
大成建設|自律走行搬送ロボット
大成建設は、自律走行搬送ロボットシステム「T-DriveX」を開発しました。これは自動搬送を行うことにより資材搬送の省人化を実現する技術で、「フォークリフト型ロボット」と軽量タイプの「パレット型ロボット」の2機種で構成されています。
従来のICタグやマーカーの配置などによる誘導を必要とせず、AIによる画像解析やマッピング技術を用いているのが特徴です。これにより、建設現場特有の作業環境でも対応可能となっています。今後、建設現場だけでなく幅広い分野での活用が期待されます。
竹中工務店|四足歩行ロボット
竹中工務店は、四足歩行ロボット「Spot」が建設現場内を巡回して撮影した映像を、実測図の作成用データとして用いる実証実験を行いました。
Spotはこれまで、建設現場巡回、施工状況の遠隔確認と記録、軽量資材の運搬への活用の効果が実証実験で確認されています。今回新たに、Spotの活用シーンを建設現場における実測図作成の補助業務に拡大できることが分かりました。
清水建設|ロボットのエレベータ同乗技術
清水建設は、複数のサービスロボットがそれぞれの目的階まで移動するエレベータ同乗技術を開発しました。
自社開発した複数ロボット・モビリティの統合制御システム「Mobility-Core」を利用することで、ホールでの待機位置や、かご内の乗車位置、乗降の順番など、エレベータ内外におけるロボットの空間利用を統合的に管理します。これにより、ロボット同士の干渉による走行不全や膠着を回避し、タイムロスの少ない効率的なサービスロボットの運用を実現します。
まとめ|省人化で人手不足改善に期待
今回は「建設業界の人手不足」についてピックアップしました。3Kと呼ばれるきつい現場作業や長時間労働は、ロボットやIT技術の導入で大幅に改善されることが期待されます。これからさらに激しくなることが予想される労働力不足にも、建設のDX化で対処する企業が増えるでしょう。