MaaSとは?メリットや具体事例を紹介|CASEとの違いも

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著者:小日向

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「MaaS」についてピックアップします。「移動手段をサービスとして提供するビジネスモデル」として注目されており、国交省でも取り組みが推進されています。本記事ではMaaSのメリットや課題、具体的な事例をご紹介していきます。

MaaSとは|簡単に解説

ここでは、MaaSの概要やメリット・デメリットについて簡単にご紹介します。

MaaSの概要

https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001320589.pdf

MaaSとは「移動手段をサービスとして提供するビジネスモデル」のことを指します。Mobility as a Serviceの略称で、読み方は「マース」です。具体的には、複数の交通手段(自動車、公共交通機関、自転車、タクシー、シェアリングサービスなど)を統合し、一つのアプリプラットフォームから利用者が利用することができるサービスとなります。

MaaSは利用者が必要とする移動手段を選択し「運賃を一括して支払える」のが特徴です。またデータを元にした移動パターンの分析や、交通渋滞やCO2排出量の削減などの社会的効果も期待されています。

MaaSのレベル

https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001320589.pdf

MaaSには、サービスの提供に不可欠なデータ(静的データ、動的データ及び予約・決済データ)、MaaSの提供によって生じる移動関連データ、MaaSと連携するデータ(生活・観光サービス関連データ、都市・交通インフラ関連データ等)があります。

それぞれの段階に応じて、レベル0~4の5段階が設けられています。各レベルの詳細は、以下の通りです。

  • レベル0:統合なしで単体のバラバラのサービスの段階
  • レベル1:情報の統合による複数交通モードの検索や運賃情報の段階
  • レベル2:複数の交通モードのルートを単一トリップ化(検索、予約、決済まで)
  • レベル3:複数の交通サービスを定額制で提供/パッケージ化して提供(個々の料金は不明)
  • レベル4:まちづくりとの連携、交通制御等による人・モノのコントロール

MaaSのメリット

MaaSのメリットには、下記が挙げられます。

  • 交通手段の多様化
  • コスト削減
  • ストレス軽減
  • 環境に配慮した移動
  • 交通事故の削減

MaaSはバスや電車、タクシーなどの交通手段だけでなく、自転車やカーシェアリングなどの新しい交通手段も含めた多様な選択肢を提供します。そのため、従来と比較して移動手段の自由度が増すのが特徴です。

またコストに関しても、移動に最適な手段を組み合わせることで効率化して削減できます。MaaSは移動に必要な情報や予約手続きなどをアプリなどで一括して行うことができるため、移動中のストレスを軽減する効果も期待できるでしょう。

自転車やカーシェアリングなどの新しい交通手段を含めることで自家用車の利用を減らし、環境に配慮した移動が可能になります。ドライバーの疲労や運転ミスが無くなることで、交通事故の削減にも繋がります。

MaaSのデメリット・課題

一方でMaaSには、下記のデメリットがあります。

  • コストメリットが限定的
  • サービス提供者が限られる
  • システム不具合の可能性
  • プライバシーの問題

たとえば地方の山間部など、乗り換えが多い場合や交通手段の乏しい地域ではMaaSがうまく機能しない場合があります。また一括でまとめた請求書の金額が高くなりがちで、従来の交通手段と比べてコスト面でのメリットが限定的な場合もあります。

サービス提供者が限られるため、地域や企業によっては利用できないことも考えられるでしょう。MaaSではインターネットを利用するため、システムやアプリの不具合が生じた場合は不便です。さらにプライバシーやセキュリティの問題が生じる可能性があり、利用には注意が必要となります。

MaaSとCASEの違いは?

MaaSとよく似た言葉に「CASE」があります。CASEとは、Connected, Autonomous, Shared, Electric(つながる・自動化・共有・電動化)を指す概念です。

具体的には「インターネットへの接続」「自動運転」「カーシェア」「電気自動車・エコカー」といった取り組みです。自動車業界は変革の時期を迎えており、各社でCASEへの対応を強化しています。

CASEが主に「車」の変革を指すのに対して、MaaSは「移動サービス全体」を含んでいるという違いがあります。MaaSではユーザーがアプリ上で簡単に予約や決済を行い、車に限らず複数の交通手段を組み合わせられます。これにより、最適なルートやコストを選べるのです。

MaaSはユーザーがより柔軟な移動手段を選択できることを目的としており、車を売ることではなくサービス全体の利便性向上を目的としています。

MaaSの事例

ここでは、各企業が提供している代表的なMaaSの事例についてご紹介します。

①トヨタ自動車|e-Palette

https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/34527255.html

「e-Palette(イーパレット)」は、トヨタ自動車が開発した自動運転車両プラットフォームです。自律走行技術によりドライバー不要な電気自動車で、自動運転が可能な車両となっています。

e-Paletteは物流や移動サービスに応用され、自動運転バスや配送用車両、モビリティサービス用の車両として使用される想定です。またモジュラータイプのため、今後様々な業界や用途に適用できるように設計されています。

またe-Paletteは、トヨタが開発を進めるスマートシティ「Woven City(ウーブン・シティ)」での運行が計画されています。人々が生活を送るリアルな環境のもとで走らせることで様々な学びを得ながら、より安全・安心・快適なサービスを提供できるよう、進化を続ける予定です。今後、2020年代前半の複数のエリア・地域での商用化が目標となっています。

「ウーブン・シティ」について詳しくは、下記記事をご覧ください。

未来都市ウーブン・シティに住みたい|スマートシティの課題や事例紹介も

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②JR東日本|TOHOKU MaaS

https://lp.tohoku-maas.com/

「TOHOKU MaaS」は、JR東日本が提供するMaaSです。スマホひとつで「便利で快適な旅」をサポートするサービスで、旅のプランニングから各種電子チケットの購入·予約·決済などが完結します。

具体的には高速バスの予約、レンタカーやレンタサイクルの手配、観光チケット、お土産のクーポンなどが利用可能です。たとえば「仙台まるごとパスワイド」はTOHOKU MaaSでしか購入できない電子チケットとなっており、事前にスマホ購入しておけば観光がスマートに楽しめます。

③建設MaaS|竹中工務店

https://www.takenaka.co.jp/solution/kensetsu_dx/dx_sheet/12/

竹中工務店では、移動・搬送・サービスプラットフォームとして「建設MaaS」を開発しています。スマートシティ/スーパーシティ実装実現へ向けて、規制緩和・官民データ連携基盤整備の推進を図ることが狙いです。

具体的には、社員約1000人を対象として10km四方の街区で「シェア社有車によるオンデマンド移動・搬送実証実験」を2か月間実施しました。こういった取り組みにより、建設業の「ヒトの移動」「モノの搬送」をAIアプリと貨客混載輸送で効率化します。

④Uber|配車アプリ

https://www.uber.com/jp/ja/

Uber(ウーバー)は、スマホアプリを利用したライドシェア(相乗り)サービスです。ドライバーは運転手として登録でき、空き時間で自家用車を「タクシー」のように稼働できます。ユーザーはタクシーより安価にサービスを利用できるので、海外では爆発的な人気となっています。

UberはMaaSの一例であり、利用者は自分のスマホからUberアプリをダウンロードして利用します。近くの利用可能なドライバーを検索して、利用者が目的地までの運賃を決定できるのが特徴です。都市部での交通渋滞や駐車場の問題を解決し、自動車の所有や駐車場代などの経費を削減することができるため、MaaSの一形態として注目されています。

Uberは日本でも展開されています。しかし現在は法規制によりタクシーと同じような形態となっており、「一般ドライバーによる配車はできない」のが実情です。

国土交通省、MaaSガイドラインを改訂|データ連携を後押し

https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000301.html

国土交通省では、「MaaS 関連データの連携に関するガイドライン」を定めています。そして2023年3月には、利用者及び事業者の双方にとって有益な情報を盛り込んだ改訂版が策定されています。

具体的な変更点は、以下の通りです。

  • チケッティングに関する連携高度化の意義や不正利用対策等に関する内容追加
  • 動的データに関する連携高度化の意義やデータ取扱い上の留意点等の追加
  • データ連携基盤を活用したデータ連携に関する内容追加

MaaS により提供されるサービスの向上のためには、参画する事業者等の間におけるデータの連携が不可欠です。今後も地方自治体や民間事業者等による円滑なデータ連携を促進し、MaaS の高度化を図っていくとしています。

まとめ|MaaSで移動を快適に

MaaSは次世代の移動サービスであり、効率化や省コスト化といった面でも注目されています。スマホ一つで決済まで完了すれば、移動に掛かるストレスも軽減されるでしょう。今後範囲が拡大すれば、さらなる満足度向上に繋がると考えられます。