スマートアイランドとは|離島での国土交通省事例まとめ
目次
トレンドワード:スマートアイランド
「スマートアイランド」についてピックアップします。国土交通省は離島地域の課題解決を目指しており、最新テクノロジーを使った事例も多数あります。本記事では、スマートアイランドの概要や具体事例についてご紹介していきます。
スマートアイランドとは
ここでは、スマートアイランドの概要や国土交通省の予算についてご紹介していきます。
スマートアイランドの概要
https://www.mlit.go.jp/smartisland/index.html
スマートアイランドとは、新たなテクノロジーで離島が抱える問題を解決する取り組みのことを指します。国土交通省では2020年度から「スマートアイランド推進実証調査」を実施しており、ICT等の最新技術をもった民間企業の実証調査を推進しています。
今後全国に展開させることで、離島地域の活性化に繋げることを目指します。
スマートアイランド関連の予算・補助金
https://www.mlit.go.jp/scpf/archives/docs/event_seminar220316_4.pdf
2022年度のスマートアイランド推進実証調査事業の予算は「2億円」でした。スマートアイランドは「スマートシティ関連」の予算に含まれ、できたる社会の実現に向けた重点計画に位置付けられています。
国土交通省では地域が抱える様々な課題(防災、セキュリティ・見守り、買物支援など)をデジタル技術の活用で解決することを目指しており、今後も広がりが期待されています。
「スマートシティ」に関して詳しくは、下記記事をご覧ください。
離島特有の問題とは
国交省のスマートアイランド推進実証調査では、「離島特有の課題」を解決することを目的としています。そのため事業採択時には、「中山間地域」での実施調査は優先度が下げられています。
中山間地域でも過疎や高齢化の問題は同様に起こっていますが、「離島ならでは」の課題とは一体何でしょうか。ここでは、国土交通省が挙げている離島の課題について整理しておきます。
欠航で流通が途絶える
離島地域は、「周囲を海に囲まれている」という特徴があります。中には橋やトンネルで陸続きになっている離島もありますが、主要な交通機関は船です。
そのため悪天候で欠航してしまうと、住民が孤立状態になったり流通が途絶えたりしてしまいます。それだけでなく燃料費高騰による普段のコスト負担も大きく、人口減少や高齢化を加速させる要因になっているのです。
公共交通がない
本土とは違い、離島地域には電車や地下鉄といった公共交通機関がほぼありません。主要な手段は車やバスとなっており、日常生活には車が必須という離島地域も多いでしょう。しかし高齢化で「免許返納」をしてしまうと、その後の移動手段がなく行動範囲が極端に狭まってしまうのが課題です。
ある程度の規模の離島だと、島外への交通手段として「航空路」が整備されている場合もあるでしょう。しかし利用者減少に伴い、近年赤字に陥っている路線は多いです。
特にここ数年は新型コロナウイルスの影響で、航空業界全体が低迷しています。赤字が続けば廃線となる可能性も高く、移動手段の維持が課題となります。
地域防災を担う人材の高齢化
住民の高齢化により、消防団や猟友会といった「地域防災」を担う人材が不足しています。そのため災害や事件が起こっても適切に対応できず、被害が広がる危険性があるのです。
また離島地域ならではの「密漁」の問題も無視できません。貴重な海産資源を勝手に荒らされるケースが多発しており、監視体制の見直しが必要となっています。
介護人材の不足
離島に限らない問題ではありますが、介護人材の不足が住民生活に支障を及ぼしています。単純に介護職員が足りないだけではなく、「地域の見守り力低下」も問題です。近所同士で声を掛け合う、いつもと違う様子なら気にかけるといった機会が減っているため、高齢者の孤立を引き起こしてしまいます。
そして子どもの数も減っているので、若い世代との交流が全くないという離島地域も多いです。
スマートアイランドで活用されるツール
上述したような離島ならではの問題を解決するツールとして、「IT技術」が注目されています。ここでは代表的なツールについてご紹介します。
ドローン
ドローン(UAV:Unmanned aerial vehicle)とは無人航空機のことを指し、さまざまな分野で活用が進んでいます。スマートアイランドの取り組みでは、重量物運搬可能なドローンでの「物流手段」としての役割が期待されています。
ドローンは趣味やスポーツ競技として楽しまれているほか、産業用としては土木測量、農薬散布、災害復旧等での導入が進んでいます。
建設・土木での「ドローン測量」について詳しくは、下記記事をご覧ください。
ICT
「ICT」は「Information and Communication Technology」の頭文字を取った言葉で、読み方は「アイシーティー」です。
「IT」とは違い「コミュニケーション」が入っているのが特徴です。通信技術を通して「人と人が繋がる」「人とサービスが繋がる」等の「人間が介在する」という意味合いが強くなります。
スマートアイランドにおいては、遠隔地に住む人との交流の場としての活用が進められています。
遠隔カメラ
カメラからの映像や音声を遠隔地から確認できることで、防犯や監視に活用されています。それだけでなく、最近では「ペットの見守り」など家庭内でのカメラ導入も広がっています。
スマートアイランドでは、センサー技術を活用して介護業務や見守り活動の効率化を図っています。
スマートアイランド推進実証調査の事例
ここでは、国土交通省のスマートアイランド推進実証調査で採択された事例についてご紹介していきます。離島の課題解決方法を探ってみましょう。
八丈島(東京都)|遠隔での災害検知
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/content/001476558.pdf
八丈島では雨量が多く、土砂災害の危険性が高いのが課題となっていました。また場所的に津波の影響を受けやすく、南海トラフに備える必要があります。
そのため「雨量計や定点カメラ」を導入し、災害危険度を常に把握する取り組みを行いました。これにより地区ごとに降雨時間帯の違いがあることが分かり、きめ細やかな災害対応に繋げられるようになりました。
飛島(山形県)|オンライン買い物システム
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/content/001476558.pdf
飛島では、オンラインで注文から配達まで一元化するシステムを検証しました。結果、閑散期には月6万円の赤字が出るものの、「年間30万円の利益が確保できる」ことが実証されています。
事業の継続には利用者や客単価の増加が求められるものの、住民サービスの向上に向けて検討が進められています。
佐渡島(新潟県)|電子地域通貨・タクシー配車システム
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/content/001476558.pdf
佐渡島では電子地域通貨やクラウド型タクシー配車システムを導入し、島内での行動分析に役立てています。
データベースの分析を進めることで、購買行動や配車システムを効率化できると期待されています。
男木島(香川県)|高齢者住宅開閉センサー
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/content/001476558.pdf
男木島では、高齢者の見守りにIoTセンサーを活用しています。ドアセンサーが異常値を検知し、医療・福祉関係者と連携が取れるようになっています。
今後は島外に住む家族への伝達や、島全体での見守りシステムについて開発が進められる予定です。
中ノ島(島根県)|ICT介護
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/content/001476558.pdf
中ノ島では、介護現場にベッドセンサーを導入する検証を行いました。呼吸数や心拍数が分かることで、介護職員への心理的負担が軽減されるという結果が得られました。
ただし夜勤中の見回りといった心理的負担の軽減までは至らなかったため、さらなる対策が求められます。
まとめ|スマートアイランドで離島の課題解決
本土・北海道・四国・九州に住んでいる人は普段意識しづらいですが、日本はそもそも全体が「島国」です。そのため離島で起こっている問題が、将来全国に広がることも十分考えられます。ドローンやICTといったテクノロジーで、住民の課題解決や生活の向上が期待されます。