【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第3回)モノのためのデジタル

掲載日:

Category:

DX,コラム,連載

Tag:

    髙木秀太事務所 代表 髙木秀太です。「建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術」の連載も第三回を迎えました。第二回のテーマ「ヒト」に対して第三回のテーマは「モノ」です。髙木秀太事務所の対「モノ」づくりのデジタルサポート術をご紹介していきます。

    過去の連載記事はこちら

    第一回:【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第1回)「髙木秀太事務所白書」で自己紹介

    第二回:【連載】建築設計×デジタル 髙木秀太事務所のサポート術 (第2回)ヒトのためのデジタル

    「モノ」づくりをデジタルサポートするってどうゆうこと

    建築は人類史上最大規模レベルの「モノ」づくりです。ヒトのスケールよりも遥か大きなものをつくろうとするわけですから、とても大変です。しかし、「とても大変」だということは、「工夫のしがいがある」ということの裏返しでもあります。有史以来、ヒトはありとあらゆる理論や道具を利用し、様々な建物を実現してきました。

    コンピューターもそれらの理論や道具の例に洩れず、です。コンピューターは沢山の計算を①ミスなく、②高速に、③何度も繰り返す ことが出来るので、この大変な「モノ」づくり(=建築設計)と相性が悪いわけがないのです。

    上手な使い方をすれば百万馬力で設計者をサポートしてくれます。コンピューター(ソフトウェア)を使わないと考えられもしなかったようなアイデアが生まれることなども「サポート」のうちの一つだと言えると思います。

    デジタルで利用できるものはすべて利用する

    ですから、こんなツールを(ときには設計者に代わって、)思い通りに操ることが髙木秀太事務所には求められます。コンピューターに教え込んで、建築設計に役立てる理論であれば何であろうと利用します。毎日が勉強です。以下、どんな理論で「モノ」づくりをサポートしてきたのかを「髙木秀太事務所白書」掲載のプロジェクトをベースにご紹介していこうと思います。

    幾何学(Geometry)で「モノ」づくりをサポートする

    幾何学はデジタルサポートの基本です。世の中のあらゆるカタチを定義する論理なので、これを制すれば、どんなカタチも(理論上は)実現が出来るはずです。とても人の手には負えないような複雑なカタチもコンピューターのサポートがあれば実現の可能性が高まります。

    東京タワートップデッキ(=展望台)の内装計画(アーティスト:KAZ SHIRANE)をサポートしたことがありましたが、ここではミラーパネルの形状をパズルのようにコントロールしています(図1)。

    図1

    物理学(Physics)で「モノ」づくりをサポートする

    物理学も幾何学と同じく重要な理論です。特に力学はモノの力の伝わり方を定義する理論なので、これを制すれば、どんなカタチも(理論上は)地面に立ち上がるはずです。富士吉田市に計画されたギャラリーで、有機的な形状のエントランスの造形(設計:O.F.D.A. associates)をサポートしたことがあります。

    ここでは重力による形態シミュレーションを用い、造形の重さ(=「自重」)をスムーズに地面に伝えられるような最適なカタチを算出しています。ガウディのサグラダ・ファミリアで用いられた理論と全く同じものです(図2)。

    図2

    材料工学(Materials engineering)で「モノ」づくりをサポートする

    「モノ」を対象にするのであれば材料(あるいは素材)の振る舞いも我々の検討対象になります。例えば、いまや、世界中でもっとも注目される建材となった木材。様々な加工に対する反りや伸縮、割れのリスクを加味しつつ、デジタル処理との折り合いをつけなければいけません。

    PRISM TV STUDIOというテレビ収録スタジオの計画(設計:クマタイチ)をサポートした際は、300枚を超える板材の加工をコントロールしました。繰り返された木工所での実験が実を結びました(図3)。

    図3

    情報工学(Information engineering)で「モノ」づくりをサポートする

    膨大な情報を整理整頓し、必要なときに狙った情報を過不足なく取り出すことは、コンピューターを扱う上で、とても大切なスキルです。このような技術や理論を「情報処理」と言いますが、BIM(Building Information Modeling)はこのジャンルを体現するソフトウェアです。

    さまざまな建材、空間同士のデータが相互に結びついた状態にまとめあげ、建築設計をアシストします。髙木秀太事務所では自社運営のBIMソフトウェアArchicadの独学Webサイト「ARCHICAD-Learning.com」(共同運営:株式会社日建設計、グラフィソフトジャパン)を展開しています。Archicadを学習してみたい方は、ぜひ利用してみてください(図4)。

    図4

    タフでハードな「モノ」づくりに立ち向かう設計者に寄り添えるか

    以上のように、髙木秀太事務所は多種多様な理論とコンピューターをかけ合わせ、「モノ」づくりをサポートします。すべては建築設計という、タフでハードな「モノ」(=建築)づくりをミッションとして抱えている設計者のためにあります。とあるプロジェクトの完了時、クライアント(=設計者)に褒めて頂いた際のフレーズが忘れられません。

    「髙木事務所のおかげでアイデアをギリギリまで検討することが出来たし、いままでおざなりになっていたことも考えられるようになったよ、ありがとう」。

    こんな言葉をいただいてしまうと、やはり、この仕事はやめられませんね。

    髙木秀太事務所Webページ

    公式ホームページ https://takagishuta.com/

    「髙木秀太事務所白書」の購入先はこちら

    ・Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4416921470/

    ・楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/17401324/?l-id=search-c-item-img-01

    ・honto:https://honto.jp/netstore/pd-book_32253844.html

    この記事を書いた人

    髙木 秀太

    合同会社髙木秀太事務所、2016年4月設立。建築設計、内装設計、プログラミング、3Dモデリング、BIMサポート、コンサル、web制作、講習など、建築・都市計画をデジタルツールでサポートする幅広い業務を行う。 代表 髙木秀太、建築家/プログラマー。1984年長野市出身。これまでに東京大学、北海道大学、慶應義塾大学、東京理科大学、工学院大学、多摩美術大学、長岡造形大学で非常勤講師を務める(一部担当終了)。

    この記事が参考になったら、
    ボタンをクリック
    今後の記事制作に活用いたします

    注目の連載

    連載をもっと見る

    BuildApp Newsとは

    BuildApp News は
    建設DXの実現を支援する
    BIMやテクノロジーの情報メディアです。

    建設業はプロセス・プレイヤーが多く、デジタル化やDXのハードルが高いのが現状ですが、これからの建設業界全体の成長には「BIM」などのテクノロジーを活用した業務効率化や生産性の向上、環境対応などの課題解決が不可欠と考えます。

    BuildApp Newsが建設プレイヤーの皆様のDXの実現の一助となれば幸いです。

    注目の記事

    DX の人気記事

    もっと見る