「DX人材」のスキルや育成方法とは|実は文系向き?

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著者:小日向

トレンドワード:DX人材

DX人材」についてピックアップします。経済産業省による「DXリテラシー標準」から、DX人材に必要なスキルを解説していきます。また社会人向けのDX人材育成プログラムなど、研修に生かせるサービスについてもご紹介します。

DX人材とは?

ここでは、DX人材の定義について簡単にご紹介します。

DX人材の定義

DX人材とは「DXに必要なスキルを身につけた人材」のことを指します。

経済産業省によると、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と解釈されています。

具体的には上図のように、それぞれの職務に応じた「DXリテラシー」が備わっていることが求められます。

「DX」について詳しくは、下記記事をご覧ください。

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DX人材に求められるスキル

経済産業省では2022年3月、「DXリテラシー標準」を策定しています。これは働き手がDXに参画し、成果を仕事や生活で役立てる上で必要となるマインド・スタンスや知識・スキルを示す「学びの指針」です。

ここではDXリテラシー標準の内容を元に、DX人材に求められるスキルについて解説していきます。

①Why|人々が重視する価値や社会・経済環境の変化について知っている

社会の変化・顧客価値の変化・競争環境の変化など、世界や日本社会におきている変化への知見が求められます。具体的な学習項目としては、「メガトレンド・社会課題とデジタルによる解決(SDGs等)」、「顧客・ユーザーを取り巻くデジタルサービス」などが挙げられます。

②What|データやデジタル技術について知っている

「データ」には数字だけでなく、文字・画像・音声等様々な種類があることや、それらがどのように蓄積され、社会で活用されているか理解している必要があります。データ分析や結果の読み取り、加工といった作業のほか、データ結果によって業務改善のアクションを起こすことが求められます。

また、AIクラウド・ハードウェアやソフトウェア・ネットワークについての知識も必要です。

③How|結果を踏まえて活用できる

活用事例を理解し、その実現のための基本的なツールの活用方法を身につけたうえで、留意点などを踏まえて「実際に業務で活用する」ことが求められます。

この中には、セキュリティ対策、インターネット上のモラルやコンプライアンス意識といったものも含まれます。

④マインド・スタンス|新たな価値を生み出すために必要な心構え

「マインド・スタンス」とは、個人に求める行動・姿勢の指針となります。

  • 変化への適応
  • コラボレーション
  • 顧客・ユーザーへの共感
  • 常識にとらわれない発想
  • 反復的なアプローチ
  • 柔軟な意思決定
  • 事実に基づく判断

個人レベルでの意識変化が求められますが、組織のリーダーには「組織としてどのようなマインド・スタンスを重視するか」、「従来から組織が持っている強みで、今後も生かしていく部分はどこか」等の方向性を示すことが望ましいとされます。

「文系」もDX人材になれる?

DX人材と聞くと「ITに詳しい理系の人」というイメージがあるかもしれません。

確かに、業務のデジタル化やプログラミングをするなら理系の知識は役に立ちます。しかしDXには「ビジネスモデルの変革」が求められ、前項でご紹介したように「常識にとらわれない発想」が重要なポイントとなります。

基本的に理系の考え方は、数学や物理学といった「自然法則がベース」となっています。「1 + 1=2」であり、それ以外の解は間違いです。

一方で文系の場合、「1 + 1」の解は必ずしも「2」ではありません。文系の考え方のベースは「法律など人間が作ったルール」です。そのため「場合によってはルールを変えてもよい」という傾向が見られます。

たとえば弁護士や営業といった文系的職業では、「法律の解釈を変える」「厳しい条件の契約を交渉で勝ち取る」といったことが日常茶飯事です。「常識を疑い、別のアプローチを考える」という方法は、DXでの新しい価値創造に応用できます。

以上のように、DXには文系的思考が不可欠です。「ITやプログラミングが苦手だからDX人材にはなれない…」と諦める必要はありません。

経済産業省の指針でも「人生100年時代を生き抜くためには、組織・年代・職種を問わず、働き手一人ひとりが自身の責任で学び続けることが重要」と述べられています。文系理系に関係なく、時代に即したスキルを適宜学ぶことが大切です。

DX人材育成の事例

ここでは、DX人材育成の事例をご紹介していきます。社会人向けの学習の場も多く設けられているので、ぜひ活用してみましょう。

①メタバース工学部|東京大学

メタバース工学部」は、2022年9月に東京大学大学院工学系研究科・工学部に設立された教育の場です。主に学外の社会人や中高生を対象としており、DX人材の育成を目指しています。

中高生向けの「ジュニア講座」と社会人向けの「リスキリング講座」に分けられ、オンライン授業やサマースクールに参加できます。産官学民が一体となり、DX人材の育成を進める予定となっています。

②NECアカデミーfor DX|NEC

NECでは、企業向けDX人材育成プログラムとして「NECアカデミーfor DX」を提供しています。

DXの基礎から実践まで学べる内容となっており、デジタル人材育成のために必要な要素を体系化し、総合的な人材開発を推進します。デジタル事業推進に必要な「思考・行動方式」「テクノロジー」等のトレーニングプログラムが整備されています。

③ディジタルグロースアカデミア|KDDI

「ディジタルグロースアカデミア」は、KDDIらによる合弁会社です。広くDX人材育成事業を展開しており、大手企業へのDX人材育成プログラムにも提供実績があります。

画像認識AIアプリの開発や、自然言語処理によるAIチャットボットの開発、企業や自治体におけるデジタル技術活用のグランドデザインといったDXの現場を多く持っており、単なる技術知識だけでなく現場での活用も視野に入れた研修コンテンツの提供が可能です。

④マナビDX|経済産業省

「マナビDX」は、経済産業省が2022年に開設したポータルサイトです。地域企業・産業のDXの実現に向けて、デジタル人材の育成を推進するため、デジタル知識・能力を身につけられる学びの場として活用されています。

個人としてキャリアアップに役立つスキルを身につけられるコンテンツのほか、企業の研修に活用できる講座も用意されています。受講料や受講期間中の賃金に対する「助成金」が受けられるなど、サポートも充実しているのが特徴です。

(詳しくは厚生労働省「人材開発支援助成金」のウェブページへ)

DX人材の課題

日本では経営上の課題を、マネジメントではなく「個々の人材の優秀さや現場のハードワーク」でカバーする傾向があります。しかしDX人材を採用すれば課題をすべて解決してくれるわけではなく、組織が人材を活用できる「土壌作り」を行うことが大切です。

また「一度でも失敗すると二度と土俵に上がれない」という風土も課題です。日本では最初から完璧な状態を目指す風潮がありますが、海外では「とりあえずスタートアップさせ、動きながら改善する」という手法が広まっています。

素晴らしいDX人材が採用できたとしても、組織に上手く受け入れられなければ活躍できません。DXリテラシーに「マインド・スタンス」の項目があるように、組織自体の意識改革ができるかどうかがポイントとなるでしょう。

まとめ|DX人材活用に期待

DXの実現には、デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかという経営戦略が必要であり、それを実行する上での体制や企業組織内の仕組みの構築等が不可欠です。

研修プログラムなど学びの機会を生かし、一人ひとりがDXリテラシーを身につけることが期待されています。