子どもの転落や車内置き去り多発…事故・事件はDX技術で対策できる?|安全装置やスマートシティに期待
目次
トレンドワード:安全対策DX
子どもが犠牲になる事故で対策が急がれている「安全対策DX」についてピックアップします。建築等ハード面での対策のほか、スマートシティにも繋がる「地域での見守り」といった方法もご紹介していきます。DX技術を用いた事件・事故防止対策に注目してみましょう。
相次ぐ子どもの事故で安全対策が問われる
多発する子どもの事故が問題に
最近、子どもが犠牲になる事故が多発しています。特に通園バスの車内に取り残されたことによる事故、マンションからの転落事故などが目立ちました。ニュースでは注意喚起が行われていましたが、いずれも「類似の事例が繰り返し起こっている」という点が問題とされています。取り返しのつかない事故を防ぐためには、防止対策が急務です。
すぐにできる安全対策は?「心がけ」だけでは限界も
消費者庁では、子どもの事故防止について防止対策ポイントをまとめています。まず子どもの事故が起こる前提として、「思わぬ行動をしたり、いろいろな遊び方をする」「発達段階によって、事故が起こりやすい場所や状況が変わる」といった特徴があります。
具体的な事故対策としては、たとえば窓やベランダからの転落事故の場合は下記が挙げられます。
- 小さな子どもだけを家に残して外出しない
- 窓、網戸、ベランダの手すり等に劣化がないか定期的に点検する
- 勝手に窓を開けたりベランダに出たりしないように、手の届かない位置に補助錠を付ける
- 足場になるようなものを置かない
やはりすぐにできる対策は「親の見守り」がメインとなりますが、鍵の設置などハード面でできる方法は建築施工時からも対策可能です。「事故が起こりにくい建物作り」が今後ますます求められるでしょう。
国土交通省が安全対策を検討
子どもの事故防止対策としては、まずは「大人が見守る」ということがもっとも大切です。しかし「24時間いつも目を離さずにいる」ということは現実的に難しい場合も多く、事故を100%防ぐのは困難でしょう。こういった事情から、安全対策にも「ITツールやDX技術を活用」することが求められています。
たとえばバス置き去り事故に関しては、国土交通省が2022年10月4日に、安全装置(仮称)のガイドラインを作成するワーキンググループを開催しました。こちらでは、送迎バスの置き去り防止を支援する安全装置の性能要件等について検討を行っています。
具体的には、上図のような「押しボタン方式」「自動検知方式」といった安全装置の開発が検討されています。複数回のワーキンググループを経て、2022年12月中旬にはガイドラインが策定される予定です。今後明確な基準が策定されることで、安全管理の徹底が期待されます。
安全対策のDX事例
ここでは、子どもの安全対策のDX事例についてご紹介します。車両の安全装置といったツールから、街全体を巻き込んだ「スマートシティ」に繋がる事例まで幅広い対策があります。事故や事件を防ぐには、適切なDX技術の導入が有効です。
①MIELS(ミエルス)構想|街が子どもたちを見守る
「MIELS(ミエルス)構想」とは、デジタルツールを活用した子どもの見守りサービスです。「親が自分の子どもを見守る」という”点”の見守りだけではなく、「街が子どもたちを見守る」という”面”での見守りが特徴となっています。
具体的には、学校や自宅等の特定のスポットを「見守りスポット」として設定し、同スポットに子どもが到着した際に通知を受け取れるサービスです。地域住人がアプリをスマートフォンにインストールすることで、犯罪や災害が発生した際にも子どもたちの居場所特定も可能となります。
②オッタバイ(福岡市)|IoTを活用した子ども見守り事業
「オッタバイ」とは、福岡市が提供する子どもの見守り事業です。市内の約3,000箇所以上に固定基地局を設置しています。主な設置箇所は、小学校校門、コンビニエンスストア(ローソン、セブンイレブン、ファミリーマート)、商業施設(イオン)、郵便局、警察署交番、福岡市役所公共施設、自動販売機、電柱等です。
こちらはGPS端末とは違い、「現在地を把握するもの」ではありません。検知する位置情報は、「端末を検知した基地局や、見守りアプリを登録したスマートフォンがある場所」となります。見守りアプリの登録者が増えることで多くの位置情報が取得可能となるため、福岡市では登録を広く呼び掛けています。
③置き去り防止車内確認ブザー|通園バスの置き去り防止
TCIによる「置き去り防止車内確認ブザー」は、通園バスの置き去り防止システムとして開発された商品です。エンジン停止後「3分以内」に車内後部のスイッチを押さなければブザー音を鳴らす仕組みで、強制的に車内後方への移動を促し、車内確認をさせるシステムとなっています。
「①モニターで車内確認→②ブザーで車内確認の促し→③目視による車内確認→④AIカメラシステムによる車内監視」といった4重構造のため、徹底的な置き去り防止につながります。
まとめ
頻発している子どもの事故対策には、まずは大人の見守りが大切です。しかし設備や装置といったハード面での対策をすれば、防げるものも数多くあります。また事故や事件の防止には、「社会全体での見守り」も大きな対策となります。現在各地で開発が進められているスマートシティに関しても、「子どもを街全体で見守る」という視点での整備が必要となってくるでしょう。