遠隔臨場とBIMの可能性|国土交通省も注目!【2022年度版】

ここ数年で遠隔臨場の試行が増えてきています。

国土交通省では、2022年5月に発表された国土交通省資料でも「本格的な実施」への方針が示され、BIM活用の推進の他にも作業効率化や生産性向上のための取り組みとして、建設現場における遠隔臨場の適用を推進しています。

国土交通省で発表された「国土交通省要領」の解説記事はこちら

本稿では、遠隔臨場とBIMの関わりについて考察します。

遠隔臨場とは

まずは、遠隔臨場について簡単にご説明します。遠隔臨場の目的の一つとして挙げられているのが、「建設現場での時間の有効活用」です。遠隔臨場を実施することで、確認書類の簡素化や立会検査に伴う時間の削減が可能に。これは新型コロナウイルスの感染防止や、建設現場での事故防止にも繋がる施策です。下記リンクでは、国土交通省による詳しい情報が発信されています。(https://www.ktr.mlit.go.jp/gijyutu/gijyutu00000212.html

またBuildAppNews内でも、遠隔臨場の説明からオススメツールの紹介までされている記事があるため合わせてご覧ください。(https://news.build-app.jp/article/5806/

従来より、建設現場での働き方は「労働集約的」という課題があります。建設業の労働生産性は他産業に比べて著しく低く、さらに人材不足も加速しているのが現状。今後の建設業では、時間効率を上げていく取り組みがますます必要性を増していきます。すでに実施された遠隔臨場の報告ではまだ適用範囲は限られているようですが、効果があることは実証済みです。遠隔臨場を適用する建設現場は、将来的に増加していくことが予想されます。

BIMで何ができるか

上記で述べた通り、遠隔臨場とは建設現場での確認作業を効率化する取り組みです。一般的に現在現場の映像等と合わせて確認用に使用される資料は、契約図書がベースとなっています。そのためBIMデータ自体を建設現場での確認作業に使用できる範囲は、どうしても限られてしまうのが現状です。現段階ではBIMデータ自体は建築確認申請(計画通知)に直接使用できず、契約時にも求められない場合があります。BIMデータで建築確認申請を行う試みは継続して進んでいますが、実現から普及までにはまだもう少し時間がかかりそうです。

しかし近年、BIMデータ活用で現場作業をサポート・効率化を図るシステムの開発事例は数多く出てきています。たとえばMR技術を用いて3Dモデルと現場を重ねて見て確認作業を行う取り組みや、点群データを活用した事例もあります。BuildAppNewsでは、下記リンクのようにMR技術に言及した記事も。(https://news.build-app.jp/article/2245/)こちらは一例ではありますが、BIMモデルを活用した業務効率化の取り組みは今後も増えるでしょう。これは、BIMデータに多くの情報が集約できるという特徴によります。

BIMは「ある建物のデータベース」と捉えられがちですが、「業務のプロセス」とも考えられます。遠隔臨場の取り組みは業務プロセス改善の一手なので、BIMとの相性はばっちりです。今後BIMを中心に据えたプロセスを構築できれば、効率化はぐっと進むでしょう。CADからBIMへの移行は、単に作図作業の改善ではありません。BIMの恩恵を得られる領域はCADと比較にならない程広く、さらなる活用が期待されます。

BIMデータを有効活用するにあたって重要なポイントの一つが、設計・施工・維持管理それぞれのフェーズや人によって必要となるデータが異なるという点です。そのためBIMを中心に据えた業務プロセスにおいては、「必要な時に必要なデータにアクセスできる仕組み」が必要です。Revitデータとは別に、Autodesk Forgeなどを用いてWebブラウザ上で情報を確認できるシステムを開発して活用している事例も。RevitやArchicad等のBIMソフトは非常に専門性の高いソフトで、使用するにはそれなりの知識やスキル・操作環境が必要です。建物に関わる人は各フェーズで異なり、全員がBIMソフトを使用できるわけではありません。そのためBIMソフトのみで全てに対応することは難しく、現実的ではありません。しかしデータ自体やプロセスは全員と共有可能なため、インターフェースを整えてデータにアクセスできる環境を構築することで、BIMデータをあらゆる場面で活用できるでしょう。

今日では5Gなどの通信技術が急速に進化し、クラウド化が進んでいます。遠隔臨場の取り組みに関しても、より詳細な情報のやり取りやBIMデータを用いた確認作業が可能になれば、確認作業の効率化やミスの削減、適用範囲の拡大に繋がります。遠隔臨場は建設現場の効率化を進める有効な取り組みであり、BIMと組み合わさることでより一層効果を発揮するでしょう。

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