国土交通省、AI活用でインフラ現場の生産性向上目指す方針を策定、フィジカルAI導入も推進

20260907_インフラ分野のAI実装方針

国土交通省は令和8年8月26日、インフラ分野におけるDX推進本部の会合を開き、AI活用の基本的な方向性を示す新たな方針と、建設現場へのフィジカルAI導入に向けた戦略の中間とりまとめを公表しました。

人口減少による担い手不足やインフラの老朽化、災害の激甚化が同時に進むなか、現場を支える一人ひとりの力をAIで底上げしようという狙いがあります。政府全体でも人工知能基本計画が令和8年7月に改定されており、こうした動きも踏まえた策定となりました。

国土交通省では2020年からインフラ分野のDX推進本部を設け、取り組みを積み重ねてきた経緯があり、今回の方針はその延長線上に位置づけられています。

AIを能力拡張の基盤に位置づけ

今回まとめられた「インフラ分野のAI実装に向けた取組方針」では、AIを現場で働く人の能力を広げ、生産性向上を後押しする土台として位置づけています。人とAIが役割を分担しながら協力することで、国民の安全・安心と地域の暮らしの豊かさを長く保つことを目指す考え方が軸になっています。

ここでいう現場とは工事や管理の現場にとどまらず、計画や設計、発注などの事務作業も含む幅広い業務の場を指しており、行政職員だけでなく建設業やコンサルタントなど関わる人すべてが対象とされています。方針は技術の進展を踏まえ、今後も適宜見直していくとしています。

建設現場ならではの難しさ

建設現場には工場のような量産型の生産と違い、気象や地形、地質が現場ごとに異なるという特徴があります。同じ条件のデータを大量に集めにくく、AIの学習や汎用性の確保にも工夫が求められます。

加えて発注者から元請け、下請けまで関係者が幾重にも連なる構造もあり、現場で生まれるデータが各所に分散しやすいという課題も挙げられています。

屋外での作業が基本となるため天候などの不確実性も高く、人の判断とAIの支援を組み合わせる設計が欠かせません。こうした特性は裏を返せば、データが整えば日本の現場力そのものが強みになり得るとも説明されています。

3つの柱で段階的に推進

方針は3本の柱で構成されます。

まず国自身が直轄の現場でAIを積極的に取り入れ、実践を通じて得た知見を自治体や中小企業へ広げていきます。次に、産学官が手を組んでAI用のデータ連携基盤を整え、現場データを技術革新につなげます。

そして将来的には、物理空間で自ら状況を認識し判断して動く「フィジカルAI」の導入も進めていく計画です。あわせて、人材育成や利活用環境の整備、データ基盤の確立という取り組みを一体的に進め、現場への定着を図るとしています。具体策には、工事関係書類をやり取りする情報共有システムに対話型AI機能を加える取り組みも含まれます。

フィジカルAI戦略の中身

あわせて公表された「建設分野におけるフィジカルAI戦略」の中間とりまとめでは、機械施工や鉄筋の組立といった人力作業、現場内の小運搬、構造物の点検、巡視、除草や除雪、災害調査、災害復旧という8つの重点分野を選びました。

熟練技能者が長年の経験で培ってきた判断の根拠や作業の手順をセンサ等でデータ化し、ロボットや建設機械が現場を支援できる仕組みづくりを進める内容です。

あわせて建設関係者やAI開発企業、大学、研究機関からなるコンソーシアムを今後設け、共通の技術基盤や性能評価の方法を検討します。導入にあたっては技術ありきではなく、現場の課題を出発点に据える姿勢も示されました。

基準類のAI対応も並行整備

現場実装を後押しする取り組みとして、技術基準をAIが参照しやすい構造化データへ整える動きも進んでいます。その先行事例として、土木工事共通仕様書(案)をJSON-LD形式のデータを加えたHTML版で公開しました。

従来のPDF形式では改ページによる文章の分断や図表の読み誤りが生じやすいという懸念がありましたが、HTML化によって文書の構造が明確になり、AIによる検索や解釈の精度を高める効果が見込まれています。

データ連携基盤の拡充も視野に

国土交通データプラットフォームでも対話型AIとのデータ連携を進め、民間企業によるサービス開発を後押しする評価の仕組みも検討されています。

行政が保有する膨大な基準類や図面を段階的に構造化していくことで、将来的には設計支援や審査支援など幅広い場面での活用が見込まれるとしています。

現場実証を通じてAI活用を本格化

「建設分野におけるフィジカルAI戦略」は中間とりまとめとして、現時点でのAI技術の水準を踏まえた方向性を整理したもので、今後の連携体制における議論や現場実証を経て、得られた知見や課題を踏まえながら内容は随時見直される予定です。

国土交通省は姿勢と取組内容を示し続けることで、産学官が一体となった推進体制の構築を図る考えを明らかにしています。

出典情報など

出典:国土交通省,「国土交通省インフラ分野のAI実装に向けた取組方針」及び「建設分野におけるフィジカルAI戦略」(中間とりまとめ)の策定~AIの実装で「現場で働く人の能力を拡張させ生産性向上を加速」~,https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001361.html,リリース日:2026-09-04