大成建設と日揮グローバル、建設用3Dプリンタで大型PCa部材の一体製作を実証

大成建設と日揮グローバル株式会社は2026年5月20日、建設用3Dプリンタを使って柱・梁・スラブの型枠を一体で造形した大型プレキャスト(PCa)部材の製作・施工技術を実証したと発表しました。福島県浪江町での実証では、土木学会が定めた技術指針に準拠した初めての取り組みとして、従来工法と同等以上の品質が確認されています。

建設業界が抱える「人手不足」と「複雑化」の問題

建設業界では現在、技能者・従事者の減少が深刻な問題となっています。こうした状況を受けて、省人化や工期短縮を実現するPCa工法(プレキャストコンクリート工法)の普及が進んでいます。しかし近年、プラントやインフラ分野における構造物の大型化・複雑化が加速しており、PCa工法を採用しても部材数の増加や接合作業の手間、精度管理の煩雑さといった新たな課題が生じていました。

従来の手法では、柱・梁・スラブはそれぞれ個別に製作し、現場で組み合わせる必要がありました。これが施工の手間を増やし、高所作業などの安全リスクにもつながっていました。

3Dプリンタによって何が変わったのか

今回の技術では、建設用3Dプリンタで造形した型枠を活用し、柱・梁・スラブを一体化した大型PCa部材を一体で製作することが可能になりました。これにより、次のような効果が期待されています。

・部材点数と接合作業の大幅な削減

・人力作業・高所作業の減少による安全性向上

・将来的に人工50%削減、コスト15%削減を目標

また、建設地の近くで部材を製作する「ニアサイトプリント」という手法も採用しています。現場近くで製作するため、大型部材の輸送に伴う制約がなくなり、調達期間の短縮やコスト削減にも貢献します。さらに、形状の自由度が高いため、配管や周辺設備と干渉しやすいプラント設備の支持架構など、複雑な構造物にも対応できます。

2社の技術を掛け合わせた実証

日揮グローバルはこれまで、デンマークのCOBOD社製の大型ガントリー型セメント系3Dプリンタを国内外で活用し、実績を積み重ねてきました。一方、大成建設は独自の建設用3Dプリンティング技術「T-3DP®(Taisei-3D Printing)」を開発し、専用材料や施工技術に関する豊富なノウハウを持っています。

今回の実証では、両社が持つ「大型プリント設備」と「高性能プリント材料・施工技術」を組み合わせ、実際の建物と同じスケールでの大型PCa部材の製作・施工を実現しました。異なる企業が開発した装置と材料を組み合わせた場合でも、従来工法と同等以上の品質を確保できることが確認されており、技術の汎用性の高さが示された形です。

本技術の3つの特長まとめ

① 一体造形で施工性・安全性が向上

柱・梁・スラブを一体で造形することで接合作業や高所作業を削減

② ニアサイトプリントで生産性が向上

建設地近傍での製作により輸送制約がなくなりコスト低減にも貢献

③ 複雑な構造物にも対応可能

形状の自由度が高く、プラント設備など複雑な条件にも柔軟に対応

今後の展開と社会的意義

今回の実証では、設計どおりの形状・強度が確保できることが確認されたほか、工程の短縮や作業負荷の軽減効果も実証されました。本技術はプラント分野にとどまらず、基礎構造物やインフラ構造物への応用可能性も見えてきており、建築・土木の幅広い分野での活用が期待されます。

両社は今後、技術のさらなる高度化と標準化を進め、国内外の建設プロジェクトへの普及をめざします。建設工事の生産性向上と安全確保を図りながら、深刻化する技能者不足という社会全体の課題解決に向けて、設計段階から施工方法に至るまでの建設プロセス全体の見直しを進めていく方針です。

出典情報

大成建設株式会社リリース,建設用3Dプリンタを活用した柱・梁・スラブ一体型大型PCa部材の製作・施工技術を実証 土木学会技術指針に基づく初の事例として、従来と同等以上の品質を確保,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2026/260520_11034.html