竹中工務店と吉野石膏、中性子線遮蔽ブロック・ボード開発、加速器・医療施設向け導入へ

竹中工務店(社長:丁野成人)と吉野石膏株式会社(社長:須藤永作)は、天然素材を主原料とした中性子線専用の遮蔽材「RadBlock®-N(ラドブロック エヌ)」と「RadBoard®-N(ラドボード エヌ)」を共同で開発しました(2026年5月21日付)。放射線施設における安全性・施工性・環境性を同時に追求した製品として、加速器施設や放射線医療施設への導入を想定しています。
中性子線とはどんな放射線?
放射線にはいくつかの種類がありますが、なかでも中性子線は物質を非常に透過しやすいという特徴を持っています。適切な遮蔽なしでは、人体や電子機器に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、中性子線を扱う施設では、設計・施工・安全管理の各段階において、しっかりとした遮蔽対策が欠かせません。
なぜ新しい素材が必要だったのか
これまで建物内で中性子線を遮蔽するには、壁・床・天井に厚いコンクリートを用いるのが一般的でした。ところが、この方法にはいくつかの課題がありました。
・壁が分厚くなり、室内スペースが狭まってしまう
・コンクリートにホウ素系鉱物を混ぜると、硬化不良や材料の均一性に問題が起きやすい
・コバルトやユーロピウムを含むコンクリートは、中性子線を受けることで「放射化」し、放射性物質に変化してしまう
「放射化」とは、中性子などの照射を受けた物質が放射性物質へと変わる現象のことです。これが起きると、施設の維持管理や将来の改修・解体が大きな課題となるケースがあります。さらに、装置点検の際には壁や装置自身が放射化するため、装置停止直後に入室できないケースもあり、大型装置の搬入・更新にも工期面での制約が生じていました。
こうした課題を解決するため、両社は遮蔽性能・環境性・施工性・改修しやすさを兼ね備えた新素材の開発に取り組んできました。
新製品の概要
今回発表された製品は、ブロック型とボード型の2種類です。
・RadBlock-N:サイズ200×200×250mm、重量16kg
・RadBoard-N:サイズW910×H1820×T12.5mm、重量22kg
どちらも石膏やホウ素鉱物などの天然素材を主原料としており、鉛などの有害重金属や放射化の原因となるコバルト・ユーロピウムをほぼ含みません。
4つの注目ポイント
1. 人と環境にやさしい材料
原料に天然素材を使用し、各種法令で規制される有害重金属を排除しています。使用済みの製品は吉野石膏においてリサイクルが可能で、廃棄物の削減にも貢献します。
2. 乾式施工で工事がシンプルに
水や湿式材料を使わない「乾式施工」により、一般的な内装工事に近い感覚で取り付けられます。遮蔽ボードは不燃認定(NM-5675(3))を取得しており、ホルムアルデヒドの放散量も建材の最高基準「F☆☆☆☆」相当です。仕上げに壁紙を貼ったり塗装したりすることも可能です。
3. 優れた遮蔽性能と放射化の抑制
「RadBlock-N」は高エネルギーの中性子線に対して、鉄筋コンクリート(RC)壁の約1.3倍の遮蔽性能を発揮します。「RadBoard-N」は比較的エネルギーの低い中性子線を対象とし、コンクリートの放射化抑制にも期待できます。さらに両製品をRC壁と組み合わせることで、幅広いエネルギーの中性子線に対応しながら、壁厚を約20%削減できます。
4. 改修・更新への柔軟な対応
乾式遮蔽壁として組み上げるため、解体・再構築が比較的容易です。施設稼働中の改修工事でも、騒音や振動を抑えた施工が可能で、大型装置の搬入やレイアウト変更にも柔軟に対応できます。
今後の展開
本製品は、加速器施設や放射線医療施設への導入を皮切りに、将来的には次世代エネルギーとして注目される核融合施設など、幅広い分野での活用が想定されています。竹中工務店はすでにX線・ガンマ線を対象とした遮蔽技術(RadBlock®-X、RadBoard®-X)を保有しており、今回の中性子線向け製品を加えることで、放射線遮蔽技術のラインアップをさらに充実させていきます。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,中性子線遮蔽ブロック・ボード「RadBlock®-N」「RadBoard®-N」を開発 天然素材をベースとし、中性子線に対して高い遮蔽性能を実現,https://www.takenaka.co.jp/news/2026/05/03/