イ準耐火とは?|ロ準耐との違い・木造3階で必要になる条件を実務ベースで解説

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Tag:建築

著者:上野 海

木造3階や店舗併用住宅の計画では「イ準耐」が必要になることが多い一方で、ロ準耐との違いや必要条件で迷う方も少なくないでしょう。特に準防火地域では、地域・用途・階数によって必要な防火性能が変わるため、判断を誤ると確認申請直前で仕様変更になることもあります。

そこでこの記事では、イ準耐火の基本から、ロ準耐との違い、実務で詰まりやすいポイントまで整理して解説します。

イ準耐火とは

イ準耐火とは、建築基準法第2条第9号の3イに規定される「準耐火建築物」のことです。

準耐火建築物は、主要構造部に45〜60分程度の耐火性能を持たせる仕様として扱われることが多く、特に準防火地域の木造3階案件で重要になります。

イ準耐とロ準耐の違い(最重要)

イ準耐とロ準耐の違いは、「主要構造部そのもの」にどこまで耐火性能を求めるかです。どちらも「準耐火」とまとめて呼ばれることがありますが、必要な仕様や確認内容は大きく異なります。

比較項目イ準耐ロ準耐
考え方主要構造部の耐火性能延焼防止仕様
対象木造3階・共同住宅など一般木造住宅
耐火時間45〜60分仕様基準中心
竪穴区画必要になる場合あり不要なことが多い
コスト高め比較的抑えやすい

まず押さえたいのが、イ準耐は「建物全体の耐火性能」を重視する考え方だという点です。壁・柱・床・梁・屋根などの主要構造部に、45〜60分程度の耐火性能が求められます。

一方、ロ準耐は外壁や軒裏など、延焼を防ぐための仕様基準が中心です。そのため、同じ木造でも必要な納まりや仕様が変わります。

木造で準耐火建築物を計画する際の注意点は、以下の記事でも解説しています。

イ1準耐・イ2準耐の違い

イ1準耐とイ2準耐の違いは、求められる耐火時間です。どちらもイ準耐火に分類されますが、必要性能が異なるため、採用される建物や仕様に差が出ます。

実務では「イ準耐」と一括で呼ばれることが多いものの、確認申請や仕様選定ではイ1・イ2を分けて整理する必要があります。大きな違いを整理すると、次のとおりです。

項目イ1準耐イ2準耐
耐火性能60分45分
主な用途共同住宅・規模大きめ木造3階住宅
防火性能より高い比較的緩和
コスト高め抑えやすい
仕様制約多い比較的少ない

このように、イ1準耐は、主要構造部に1時間耐火が求められる仕様です。共同住宅や店舗併用など、防火安全性をより重視する建物で採用されることがあります。

一方、イ2準耐は45分準耐火です。実務では、準防火地域の木造3階住宅で使われるケースが多く、戸建住宅ではこちらを目にする機会が多いでしょう。

イ準耐火構造と準耐火構造の違い

実務でよく混同されるのが、「イ準耐火構造」と「準耐火構造」です。

結論として、イ準耐火は「準耐火建築物」の分類です。一方、準耐火構造は、壁・床・柱など「部位単体」の性能を指します。つまり、対象としている範囲が異なります。

用語意味
イ準耐火建物全体の区分
準耐火構造部位単体の性能

たとえば、壁や床が準耐火構造になっていても、建物全体として必要条件を満たしていなければ、「イ準耐火建築物」にはなりません。認識のズレを避けるためにも、実務では、「どの基準の話をしているのか」を最初に揃えることが重要です。

イ準耐火が必要になるケース

イ準耐火が必要になるのは、主に「火災時の延焼リスクが高い建物」です。たとえば、準防火地域の木造3階や、共同住宅・店舗併用住宅で対象になるケースが多くなります。

準防火地域の3階建て木造住宅

イ準耐火が必要になりやすい代表例が、準防火地域の木造3階住宅です。

準防火地域では、延焼防止のために防火性能が強化されます。さらに3階建てになると、避難時間や周辺への延焼リスクが高くなるため、主要構造部に耐火性能が求められます。

条件注意点
準防火地域防火性能が厳しくなる
木造3階イ準耐対象になりやすい
狭小地開口部制限が増える

実務では、「防火サッシ追加」「石膏ボード仕様変更」「階段区画変更」などが後から発生しやすいため、営業段階で地域条件を確認しておくことが重要です。

なぜ木造3階でイ準耐が必要になるのか

木造3階でイ準耐が求められるのは、火災時の避難時間が長くなるためです。

建物が3階建てになると、2階建てよりも避難経路が増え、都市部では隣地との距離も近くなります。そのため、建物が短時間で倒壊しない性能が必要になります。特に実務で影響しやすいのは次の部分です。

  • 階段まわり
  • 開口部
  • 軒裏
  • 界壁

また、木造3階の防火性能が重視されている背景には、近年の法改正による「木造化促進」の流れもあります。国土交通省は2022年改正建築基準法の中で、中大規模建築物を含めた木材利用拡大を進めており、木造建築の増加を前提に防火規定や構造規定の合理化を進めています。

一方で、木造建築が増えるほど火災時の安全確保も重要になるため、準防火地域の木造3階では、イ準耐火による耐火性能確保がより重視されるようになっています。

店舗併用住宅・共同住宅

店舗併用住宅や共同住宅でも、イ準耐が必要になることがあります。理由は、不特定多数の利用や避難条件の複雑化です。

特に共同住宅では、界壁や共用部について、防火性やイ準耐火への対応が求められる建物には、デメリットがある点も理解しておく必要があります。

性能が重要になります。実務で多いのが、住宅前提で進めていた案件に店舗用途が追加され、防火条件が変わるケースです。その場合、以下の対応が発生しやすくなります。

  • 防火設備追加
  • 区画変更
  • 内装制限対応

用途追加は後から修正コストが大きくなりやすいため、初期段階で整理しておくことが重要です。

イ準耐火のメリット

ここでは、イ準耐火に該当する建物のメリットを紹介します。

木造でも高い防火性能を確保できる

イ準耐火は、主要構造部に45〜60分の耐火性能を持たせるため、木造でも一定時間は倒壊・延焼しにくい建物にできます。特に準防火地域や木造3階では、防火安全性を確保しながら木造を採用できる点が大きなメリットです。

火災保険が安くなるケースがある

イ準耐火仕様は、防火性能が評価され、火災保険料が下がるケースがあります。特に木造住宅では、一般木造より保険条件が有利になることもあり、長期的にはランニングコストの差につながります。

耐火建築物よりコストを抑えやすい

RC造や鉄骨造の耐火建築物に比べると、イ準耐火は木造を活用しやすく、建築コストを抑えやすい特徴があります。都市部の狭小地や木造3階では、防火性能とコストのバランスを取りやすい仕様として採用されることがあります。

耐火建築物の概要を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

イ準耐火のデメリット

イ準耐火には、コストや設計面でのデメリットもあります。

建築コストが上がりやすい

イ準耐火では、防火サッシや被覆材、石膏ボード増し張りなどが必要になるため、一般木造より建築コストが上がりやすくなります。確認申請直前で仕様変更になると、見積や工程にも影響しやすくなります。

設計自由度が制限される場合もある

イ準耐火では、防火区画や開口部制限の影響で、窓配置や吹き抜け計画に制約が出ることがあります。特に木造3階や狭小住宅では、デザイン優先で進めると後から納まり変更が発生するケースもあります。

イ準耐火かどうかを確認する方法

イ準耐火かどうかは、「木造3階だから」「2×4だから」といった見た目だけでは判断できません。実務では、確認申請書や認定仕様をもとに確認する必要があります。

確認申請書・設計図書を見る

イ準耐火かどうかを確認する場合は、まず確認申請書や設計図書をチェックします。特に仕上表・特記仕様書・防火区画図には、防火性能や認定仕様が記載されているケースが多くあります。

確認時は、以下を重点的に見ると判断しやすくなります。

  • 準耐火建築物の記載
  • 主要構造部の仕様
  • 防火設備の有無
  • 竪穴区画の記載
  • 認定番号の記載有無

特に木造3階や共同住宅では、防火区画や開口部仕様まで含めて確認することが重要です。

仕様書の認定番号を確認する

イ準耐火は、認定仕様に基づいて成立しているケースが多いため、仕様書の認定番号確認も重要です。たとえば、外壁・床・柱・屋根などが、どの認定仕様で構成されているかによって、防火性能の扱いが変わります。

また、「準耐火対応」とだけ書かれていても、イ1準耐なのかイ2準耐なのかで必要性能は異なります。認定番号まで確認しておくことで、確認申請や施工段階での仕様ズレを防ぎやすくなります。

まとめ

イ準耐火は、準防火地域の木造3階や共同住宅などで重要になる防火基準です。特に実務では、ロ準耐との違いや、イ1・イ2の仕様差を整理せず進めると、確認申請直前で仕様変更になるケースも少なくありません。

地域条件・用途・階数を初期段階で確認し、認定仕様や防火設備まで整理しておくことが、手戻りやコスト増を防ぐために重要です。