大成建設、岩盤データとAIで山岳トンネル工事の発破パターン自動設計システムを開発

大成建設(社長:相川善郎)は、山岳トンネル工事における「生産プロセスのDX」の一環として、岩盤データとAIを組み合わせ、発破パターンを自動設計する新システム「T-iBlast Designer」を開発しました。

T-iBlast Designer開発の背景

近年、山岳トンネル工事では国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」のもと、自動化・機械化による生産性向上が積極的に進められています。その中核を担うのが「フルオートコンピュータジャンボ」と呼ばれる削孔機械で、あらかじめ設定した発破パターンや移動順序にしたがって自動で削孔作業を行うため、熟練技術者に依存せず、高精度な削孔を自動で行う中核技術として普及が進んでいます。

ところが、発破パターンの設計作業は今もなお技術者の経験や勘に頼る部分が多く、岩盤条件への最適な対応が課題として残っていました。切羽(掘削面)の内部では岩盤の強度分布が場所によって異なるため、発破パターンが最適化されないと「余掘り」と呼ばれる設計断面を超えた過剰な掘削が生じます。余掘りが増えると掘削残土や覆工コンクリートの使用量が増加し、コストと環境負荷の両面で悪影響が出てしまいます。

新システム「T-iBlast Designer」の仕組み

今回開発した「T-iBlast Designer」は、同社が既に開発していた「T-iBlast TUNNEL」で算出した岩盤強度の分布データをもとに、発破パターンを自動で設計するシステムです。岩盤条件に応じた最適な孔数・削孔位置・装薬量を自動的に割り当てるとともに、余掘りへの影響が特に大きい「外周孔」については独自のAIを活用して削孔先端の位置を最適化します。

なお、同システムの有効性は国道13号新及位トンネル(仮称、発注者:国土交通省東北地方整備局)での実証によって確認されています。

新システム4つの特長

「T-iBlast Designer」には、以下の4つの特長があります。

・発破パターンの自動最適設計 切羽の天端・中央・側壁部といった各部位ごとに、岩盤強度の分布に応じた基準発破パターンを自動で割り当てます。掘削体積あたりの装薬量を算出できるため、品質の安定化や技術の平準化に貢献します。

・AIによる余掘りの抑制 余掘りに最も影響する外周孔については、AIが余掘りの厚さを推定し、目標値に近づくよう削孔先端位置を自動調整します。技術者はシステム上で推定値を確認したうえで発破計画の採否や修正方針を判断できます。

・既存の施工フローへの組み込みが可能 主要メーカーのフルオートコンピュータジャンボに対応しており、現行の施工手順にそのまま組み込めます。施工データを継続的に蓄積・学習させることで、AIによる推定精度のさらなる向上も見込まれます。

・コスト削減と環境負荷の低減 現場データを使った検証では、切羽1回あたり最大約17%の装薬量削減の可能性が確認されました。掘削残土や覆工コンクリートの使用量削減を通じて、コスト縮減と環境負荷低減にも寄与します。

今後の展開

大成建設は今後、「T-iBlast Designer」の適用範囲を山岳トンネル工事全般へ広げていく方針です。あわせて、関連技術である「T-クイックショット」「T-ファストスキャン」と組み合わせることで、削孔から装薬・発破・掘削断面の形状測定・評価・次サイクルの発破設計に至るまで、一連の発破サイクル全体の最適化・効率化を進めていくとしています。

さらに、施工データの蓄積とAI活用による発破パターン設計の高度化を継続的に行い、多様な地盤条件に対応できるシステムの構築をめざします。これにより、山岳トンネル工事の安全性と生産性の向上、環境負荷の低減を実現し、持続可能な社会インフラの整備に貢献していく考えです。

出典情報

大成建設株式会社リリース,山岳トンネルの最適発破パターン自動設計システム「T-iBlast® Designer」を開発 岩盤データとAI活用により余掘りを抑制し、省人化・効率化を実現,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2026/260605_11061.html