【2025年版】LGS建築とは?軽量鉄骨の特徴・規格サイズ・納まりまで解説|プロの設計・施工ポイント

LGSは、従来の木造や重量鉄骨に代わる構造材として注目されており、軽量・高精度・加工性の高さが魅力です。しかし、どのように利用できるのかわからない、実際に利用するメリット・デメリットを知りたい方も多いでしょう。

そこでこの記事では、LGS建築の基礎知識から規格サイズ・使用される素材・納まり・施工ポイントまで、建築の実務に携わる方に向けてわかりやすく解説します。

LGS(軽量鉄骨)建築とは?

LGS建築とは、「Light Gauge Steel(軽量鉄骨)」を使用した建築構法のことです。

LGSは、薄く軽量な鋼材を成形加工してつくられた構造部材であり、特に内装の下地や非耐力壁、間仕切り壁の骨組みとして活用されます。

また、JIS規格のなかで「冷間成形軽量形鋼(JIS G 3350・A 6517)」として定められているのが特徴です。品質・形状が標準化されており、すでに非木造建築物での採用件数が増加傾向にあります。

木造・重量鉄骨と何が違う?

LGSは、軽量で非耐力構造向けの鋼材であるため、木造・重量鉄骨とは「構造用途」「施工目的」が異なります。

種類用途特徴主な素材
木造戸建住宅・小規模建築・加工がしやすい・コストが安い木材(在来・2×4)
重量鉄骨中〜大規模構造体・耐震性・高強度・構造躯体に使用H形鋼、角型鋼管等
LGS内装間仕切り・下地構造・軽量・寸法精度が高い・加工が容易軽量形鋼(LGS材)

LGSは構造躯体ではなく、非耐力壁など内装の下地用の補助構造として機能する部材です。

あくまで建築の「仕上げに近い段階」で使われることから、乾式工法・短工期・現場での作業性向上などの目的で採用されています。

軽天との違い

「軽天」とは、軽量天井下地工事の略称であり、内装職人の間でLGS材を使った工事一式を指して使われる用語です。

以上より「LGS=素材名」「軽天=施工用語」であると覚えておきましょう。

LGS建築に使われる素材

LGSに使われる鋼材は、一般的な鉄骨構造材とは違い「軽量かつ成形性に優れた素材」であるのが特徴です。たとえば、次のような素材がLGS建築に用いられます。

素材名特徴用途例
亜鉛めっき鋼板防錆性が高く、価格と耐久性のバランスが良い内装間仕切り・天井下地
ガルバリウム鋼板耐食性に優れ、屋外でも使用可能一部外装下地、湿気の多い箇所
ステンレス鋼板耐水・耐薬品性が高く、高価特殊用途(医療・研究施設など)

上記のうち、ほとんどの場合は亜鉛めっき鋼板(0.5〜1.2mm程度の厚さ)が使用されます。

また、選定する素材によって、建物の耐久性や施工効率、コストパフォーマンスにも大きな差が生じるため「軽くて丈夫」なことはもちろん、現場状況や建築物の目的などに合わせて比較することが重要です。

LGSの種類とJIS規格サイズ

LGSの部材は「形状の種類」「サイズの規格」が複数あり、それぞれJIS A 6517(建築用鋼製下地材)にてその仕様が標準化されています。以下に主な種類と用途を整理しました。

部材名称用途例
スタッド間仕切り壁の縦枠
ランナースタッドをはめ込む上下枠
チャンネル天井下地や設備支持
インナー材接続補強や端部処理

また、JIS規格によるサイズ分類は次の通りです。

呼び名幅(mm)高さ(mm)厚さ(mm)
6545650.5〜1.2
7545750.5〜1.6
100451000.5〜1.6

参考:日本産業企画の簡易閲覧「JISA6517:2010 建築用鋼製下地材(壁・天井)」

LGS部材は「どれを使っても同じ」ではなく、施工場所や性能要求に応じて最適な種類とサイズを選定する設計判断が求められる点に注意が必要です。

LGSボードとの関係

LGS(軽量鉄骨)と密接に関係するのが「ボード」と呼ばれる仕上げ材です。

LGSは、単体で使われることがほぼなく、次のようなボードと組み合わせて壁や天井の下地を構成します。

  • 石膏ボード
  • ケイ酸カルシウム板

つまり、LGSは骨組みとして、またボードは表面材として、それぞれが建築仕上げの精度と性能を左右します。セットで性能を満たす部材として設計・施工する必要があるため、LGSとボードの組み合わせで選定と施工精度の検討が必要になります。

石膏ボード・ケイ酸カルシウム板との納まりの違い

前項で登場した、石膏ボードとケイ酸カルシウム板は、それぞれ重さ・硬さ・吸湿性・施工性が異なります。

項目石膏ボード(PB)ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)
比重約9.5〜12kg/㎡
(9.5〜15mm厚)
約12〜16kg/㎡
(6〜12mm厚)
剛性・割れやすさ柔らかめ・曲げに強い割れやすく、施工に注意が必要
用途居室・一般壁・天井湿気の多い場所・不燃壁・厨房・洗面所等

たとえば、内装設計の実務では、湿気の多い場所ではケイカル板を使用して、スタッド厚0.8mm・間隔300mmの高剛性納まりとすることが推奨されています。一方で、一般オフィスではPBに対し、スタッド厚0.5mm、600mm間隔の標準仕様が効率的です。

ボードの種類によってLGSの厚さ・ピッチ・留付け方法すべてが変わる点に注意してください。

LGS建築のメリット・デメリットをプロが解説

LGS(軽量鉄骨)建築は、コスト・工期・施工性・耐火性といった利点がある一方で、音環境や構造用途における制限も存在します。

ここでは、現場視点でLGS建築の長所・短所を解説していきます。

メリット|軽量・耐火・施工性に優れる

LGS建築は、非耐力壁や内装間仕切り、天井下地構造などにおいては、従来の木材や重量鉄骨に比べて扱いやすく、施工の効率化が可能です。ほかにも次のようなメリットがあります。

  • 軽量で施工負担が少ない
  • 耐火性能が高い
  • 寸法精度・加工性に優れる
  • 工期短縮が可能になる
  • 環境に優しい

スピード感のある現場や、高い防火性能が求められる用途、内装変更をひんぱんに実施する空間との相性のよい構法です。

施工性と機能性のバランスを重視する設計の場合には、最適な選択肢だと言えます。

デメリット|コスト面・遮音性に劣る

LGSには構造用途としては使えない点や、遮音・断熱性能の確保に工夫が必要というデメリットがあります。特に、木造に比べて材料費がやや高めである点は注意が必要です。

以下に、主なデメリットを整理しました。

  • 構造体には不向き
  • 材料費が木材より高い
  • 遮音・断熱性能に課題がある(ZEBなどには不向き)
  • 施工に専門知識が必要である

用途を誤れば、トラブルに発展することもある構法です。

なかでも、遮音や断熱が重視される空間、構造体としての使用が必要な建築では、適切な素材選定・併用対策・設計段階での仕様調整が欠かせません。

LGS建築の設計・施工の活用術

LGS建築を成功させるためには「事前設計の精度」「現場施工の標準化」を意識した設計・施工が欠かせません。

特に、納まり・スタッドの配置・ビス留め間隔などをCAD図面上で明示し、現場に伝達する体制が整っているかどうかが、品質を左右します。主な工夫ポイントは以下の通りです。

  • スタッド配置は300mm or 450mmピッチを基本にする

 → 高さや使用ボードの重量でピッチを調整

  • ビス位置は割付図で指定する

 → 石膏ボードの継ぎ目にスタッドを確実に配置

  • 開口部補強はインナー材やチャンネルを活用する

 → ドアや配管スペースのたわみ・振動を防ぐ

  • 干渉対策として早期に電気・空調図と整合を取る

 → 天井内や壁内での干渉事故を防止

  • 3D設計ソフト・BIMソフト(Revit・Archicadなど)との連携を図る

 → 納まり確認と干渉チェックが事前に可能

設計と施工を分離せず、密接に連携させることが極めて重要です。

特に、現場への図面情報の正確な伝達と、標準化された施工手順の共有が、高品質かつトラブルの少ないLGS施工を実現します。

なおBIMソフトのRevit・Archicadの違いを知りたい方は、以下の記事がおすすめです。

LGS建築で採用される代表的な建築事例

LGSは構造体ではないものの、建物の内装性能と施工効率を大きく左右する存在です。参考として以下に、実際にLGS建築が採用された建物の事例を整理しました。

事例概要
LGS・PB貼り工事|市川市介護施設
株式会社アークインテリア
EV後付けに依るEVシャフト耐火壁工事と、トイレ改修工事の際に、LGS(軽量鉄骨)で壁下地を組み、PB(プラスターボード)を貼って仕上げが実施されました。
店舗のLGS工事|東京都中野
株式会社MEIS
店舗の改装に合わせてLGSで下地組が実施されました。

また、LGS建築は次のような建物で採用される傾向が強いです。

建築物タイプ採用箇所採用理由・特長
商業施設(モールなど)店舗間の間仕切り壁内装変更が多く、LGSなら簡単に取り外し・移設できる
オフィスビル天井・間仕切り壁天井裏の配線や設備が多く、軽量なLGSが作業性に優れる
医療施設(病院など)診察室や処置室の壁遮音性・防火性能が重視されるため、LGS+PB構成が適す
教育施設(学校など)教室間の壁・天井下地工期短縮が可能で、安全性・コストにも優れている
集合住宅(マンション)室内間仕切り壁リノベーション対応・軽量施工・省施工性が魅力
ホテル・宿泊施設客室間の壁音漏れ防止・耐火性に配慮した遮音壁構成に適す

公共・商業・医療・住宅などあらゆる建築物に柔軟に適応可能です。

「軽量で解体・改修しやすい」「耐火・遮音性を確保しやすい」という点は、現代建築の変化に対応できる内装構法として、LGSが選ばれやすい理由だと言えます。

LGS建築に関するよくある質問【FAQ】

LGSの耐震性は良い?悪い?

LGS自体は構造体ではないため、耐震構造の主力にはなりませんが「揺れに柔軟に対応できる内装材」としては非常に優秀です。特に、木造建築やS造の内装で、倒壊時の二次被害リスクを抑える素材として評価されています。

木造とLGSだとコストはどちらが安い?

建築用途によりますが、小規模住宅では木造の方が安価、大規模・防火建築ではLGSの方がコストパフォーマンスが高い傾向にあります。特に商業施設や医療施設、共同住宅など法的に不燃材が必要な場合は、LGSを選ぶ方がトータルコストは安くなるケースも多いです。

LGSで二世帯住宅は建てられますか?

構造体としてのLGSではなく、内装にLGSを用いた二世帯住宅なら可能です。LGSは間仕切り壁や天井下地として用いるのが基本で、構造体(柱や梁)として使用することは建築基準法上認められていません。しかし、防音性の高い間仕切り・非耐力壁をLGSで構成することは可能です。

まとめ

LGS(軽量鉄骨)建築は、内装設計・施工の自由度を広げ、現場の効率化と高品質な仕上がりを両立できる現代的な建築手法です。

非耐力壁・天井下地・リノベーションなど、構造体以外の領域で「軽量・高精度・耐火性」を活かせるため、今後導入を検討する際には、納まり・施工体制・遮音性能などトータルでの最適化設計に取り組みましょう。