【2025年版】土木管理とは?仕事内容・将来性・土木管理総合試験所の実態も紹介

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Category:コラム土木

著者:上野 海

土木管理は、インフラ整備の最前線を支える重要な職種です。特に、専門性と責任感が求められ、土木業界を支える重要なポジションになると言えるでしょう。

そこでこの記事では、土木管理の仕事内容や資格制度を解説したのち、土木管理を担う企業事例や、就職・転職希望者に役立つ情報を紹介していきます。

インフラを支える土木管理とは?わかりやすく解説

土木管理とは、以下に示すような「社会インフラ」を維持・発展させる必要不可欠な管理業務のことです。

  • 道路
  • 橋梁
  • トンネル
  • 上下水道
  • 河川・海岸
  • ダム

国内の何万箇所に設置された構造物を安全に施工・運用することはもちろん、工事業務をする際の「品質管理」「進捗管理」「環境配慮」など多面的な対応が求められます。

特に近年の日本では構造物の老朽化が問題に挙がっており、国土交通省の「インフラ長寿命化計画(平成26年5月改訂版)」でも、2030年を迎えると建設後50年を超えるインフラ施設が約半数にまで増える予想です。

出典:国土交通省「インフラ長寿命化計画(行動計画)」

こうした状況を踏まえ、今後の土木管理では「点検」「維持管理」における需要が高まっていくと考えられます。

また土木分野全体の基礎知識から知りたい方は、以下の記事がおすすめです。

土木管理と施工管理・技術職の違い

土木管理と施工管理、また技術職の仕事の違いが分からないとお悩みの方向けに、比較表を整理しました。

土木管理職施工管理職技術職(設計・分析)
主な業務内容試験・調査・報告・管理工程・品質・安全の現場指揮設計図作成、構造解析、法令対応
重視するスキル観察力・分析力・報告力判断力・調整力・体力論理的思考力・CAD操作・法令知識
必要な資格例技術士、RCCM、測量士など施工管理技士
(1級・2級)
技術士、RCCM、構造設計1級建築士など
活躍の現場試験所、インフラ点検現場建設現場・施工会社設計事務所、建設コンサル、官公庁

上表からもわかるように、土木管理は「監視・記録・評価」を通じ「品質・安全・工程」の維持がメインのポジションです。

一方で、施工管理は「現場を動かす責任者」であり、発注者と協議しながら工程管理・職人への指示・進捗管理を行います。また技術職は主に設計という立場から「計画・設計・分析」の役割を担うのが特徴です。

より簡単に説明すると、第三者的な立場から施工品質を確保し、社会基盤の信頼性を支える職種だと言えます。

また、上表のなかでも建設コンサルタントの仕事に興味がある方は、以下の記事をチェックしてみてください。

民間と公共における土木管理の違い

土木管理は「民間企業」と「公共団体」で、それぞれ目的や仕事内容が異なります。以下に比較表を整理しました。

民間
(土木管理会社・施工会社)
公共
(自治体・国土交通省等)
立場施工者・請負側発注者・監督側
主な役割品質・安全・進捗管理、試験業務委託業務の監理、報告評価、仕様確認
求められる姿勢効率性・納期厳守法令遵守・公共性・説明責任
雇用形態正社員・契約社員
(企業による)
公務員・外部委託先職員
キャリアの方向性プロジェクト実務・専門スキル習得総合職的立場・行政マネジメント

例えば民間では、施工会社や建設コンサルタントにおける品質管理や試験・検査業務が中心であることに対し、公共では、発注者側として監理や第三者評価を担うケースが多いです。

土木管理の仕事内容と必要スキル

土木管理では、品質管理や調査、監理などに関わる次のような仕事を行います。

品質管理コンクリート強度試験、土質試験、非破壊検査、配合管理
測量・調査位置出し、出来形確認、地盤調査、環境測定
工程管理工事進捗の記録、日報作成、写真管理、施工記録の整備
安全管理作業環境の確認、安全設備の点検、KY活動記録

特に国土交通省や地方自治体が発注者となる公共工事では、試験成績書や写真帳といった「施工記録」が求められます。土木管理者は工事の透明性と信頼性を確保する仕事だと覚えておきましょう。

担当業務の流れ【測量・試験・報告】

以下に土木管理業務の一般的な流れを整理しました。

  1. 現場入り・測量開始(基準点測量、出来形確認など)
  2. 各種試験実施(スランプ試験、テストピース採取など)
  3. 環境確認・安全点検(振動・騒音試験、安全柵確認など)
  4. 写真撮影・日報作成(出来形写真・施工日報など)
  5. 報告書のまとめ・提出(試験結果の整理、成績表作成など)

担当者ごとに対応する業務は異なりますが、主に上記のような実務を行うイメージです。屋内での試験、屋外での調査など幅広い業務がかかわってきます。

土木管理の資格とキャリアパス

土木管理の仕事に従事する際には、将来的に次のような資格を取得するのがおすすめです。キャリアパスも含めて、取得すべき資格をまとめました。

キャリア保有しておくと
有利な資格・経験
期待される
役割・ポジション
新人・未経験技術士補、測量士補、土木施工管理技士2級現場サポート、日報・写真記録
中堅クラスRCCM、測量士、土木施工管理技士1級工程管理、報告書作成の主担当
上級職・管理者技術士(建設部門)、CALS/EC認定設計監理、顧客折衝、指導・育成業務

土木管理のキャリアは「実務経験 × 資格取得」の組み合わせで広がっていきます。20〜30代での資格取得が将来的な年収アップや管理職登用にも直結するため、民間・公共のどちらでも安定して働ける地盤づくりのために、資格取得を目指してみてください。

土木管理のやりがい・きつい点

土木管理という仕事は、社会の役に立つ達成感ややりがいがある一方で、土木業界特有の厳しさやストレスが伴う場合があります。以下に、実務のなかで感じやすい「やりがい」「きつい点」を整理しました。

【やりがい】

  • 災害対策や老朽インフラの延命に携われる
  • 各種試験や測量、ICT機器など専門知識を学べる
  • チームで働くため協調性が高まりやすい
  • 土日休みや定時退社も比較的取りやすい現場も多い

【きつい点】

  • 管理がメインであるため、結果が表に出にくい
  • 特殊な分野であるため専門知識の習得に時間がかかる
  • 真夏・真冬など気候条件が厳しい
  • 納期前(繁忙期)などで残業が発生することも多い

以上より「黙々と地道に働き、裏方から社会を支えたい人」に向いている仕事です。

また近年では、土木業界における「きつい」という問題を解決するために、ICT関連の技術が進化しています。詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。

土木管理の企業事例【年収・離職率・評判】

土木管理の業務を行う代表的な2社の「年収」「離職率」「評判」など、就職・転職で気になるポイントをまとめました。

土木管理総合試験所(長野・山口など拠点)

「土木管理総合試験所」は、インフラ工事に欠かせない各種材料試験や測定・調査業務を専門に手がける上場企業です。全国に34の拠点を構えており、技術職や検査員としてのキャリアを目指せます。

項目内容
平均年収約435万円(30歳前後の技術職)
勤務地全国36拠点(長野・山口・東京・大阪など)
福利厚生資格手当、制服貸与、目標達成慰労金
離職率推定15〜20%(転職サイト情報より)
評判の傾向「資格支援が手厚い」「現場が多く体力は必要」「未経験でも育成制度あり」などの声が多い

土木管理総合試験所公式サイト、および求人サイトなどの情報をもとに作成

中部土木株式会社(愛知県名古屋市)

「中部土木株式会社」は、愛知県名古屋市に本社を構える地域密着型の建設会社で、土木工事の「施工管理」「安全管理」の2本柱で業務を展開している企業です。特に「現場の安全教育」「人材育成」に力を入れていることから、現場未経験者からチャレンジしやすい会社となります。

項目内容
平均年収推定400万円前後(20代後半〜30代)
勤務地愛知県名古屋市・東京都中央区日本橋
福利厚生社員旅行、資格取得支援制度、年3回賞与
離職率非公開(口コミサイトでは「3年以内離職あり」の声も)
評判の傾向「若手でも現場を任される」「施工管理との兼務が大変」「丁寧な教育体制」などの声が多い

中部土木株式会社公式サイト、および求人サイトなどの情報をもとに作成

まとめ

土木管理は、維持管理や試験など、表に出にくい職種ですが、品質・安全・記録といった「現場の信頼性」を維持する縁の下の力持ちです。

老朽化により日本のインフラ問題が加速している今、ますます重要性が高まる仕事であると言えるでしょう。