国土交通省発表、令和5年度建設資材使用量が20%超減少、技術革新で効率化進む

国土交通省が6月2日に発表した調査結果によると、令和5年度に発注された建築工事において、工事費100万円当たりに必要な建設資材の量が、すべての種類で前回調査から減少したことが明らかになりました。この調査は昭和49年から実施されており、建設業界の資材効率化の動向を示す重要な指標となっています。

目次
主要建設資材の使用量が大幅減少
今回の調査では、令和3年度の前回調査と比較して、以下のような減少傾向が確認されました。
・セメント: 0.59トンから0.47トンへ(約20%減)
・生コンクリート: 1.61立方メートルから1.27立方メートルへ(約21%減)
・骨材・石材: 2.48立方メートルから1.95立方メートルへ(約22%減)
・木材: 0.36立方メートルから0.28立方メートルへ(約24%減)
・鋼材: 0.31トンから0.26トンへ(約15%減)
これらの数値は、建設業界における技術革新や効率的な施工方法の導入が着実に進んでいることを示しています。
人材効率も向上、労働力需要が減少
建設資材だけでなく、労働力についても効率化が進んでいます。工事費100万円当たりの就業者数は、前回の6.63人日から5.19人日へと約22%減少しました。これは、建設現場での機械化や作業工程の最適化により、より少ない人数で同じ規模の工事を完成できるようになったことを意味します。
住宅と非住宅で異なる傾向
建物の種類別に見ると、住宅と非住宅で異なる傾向が見られました。
住宅分野では
・セメント: 0.53トンから0.45トンへ(15%減)
・生コンクリート: 1.48立方メートルから1.25立方メートルへ(16%減)
・木材: 0.59立方メートルから0.49立方メートルへ(18%減)
非住宅分野では
・セメント: 0.66トンから0.49トンへ(26%減)
・生コンクリート: 1.76立方メートルから1.29立方メートルへ(27%減)
・木材: 0.09立方メートルから0.07立方メートルへ(25%減)
非住宅分野の方が、より大幅な効率化が進んでいることが分かります。
調査方法と規模
この調査は、令和5年度に受注された建築工事4,878件を対象として実施されました。回収された調査票のうち、主要資材量編では2,162件、労働力編では2,484件が有効なデータとして分析に使用されています。
調査では以下の2つの指標で原単位を算出しています。
・金額原単位: 請負工事費100万円当たりの資材投入量
・面積原単位: 延べ床面積10平方メートル当たりの資材投入量
■面積当たりの使用量は一部で増加
一方、延べ床面積10平方メートル当たりの資材使用量を見ると、セメント、生コンクリート、鋼材では前回調査から増加しています。これは、建物の構造や品質要求の変化により、単位面積当たりにより多くの資材が必要になったことを示しています。
■長期的な効率化トレンド
過去10年間のデータを見ると、建設業界では一貫して資材効率化が進んでいることが確認できます。平成25年度と比較すると、すべての主要資材で使用量が大幅に減少しており、技術進歩による恩恵が着実に現れています。
建設業界への影響と今後の展望
今回の調査結果は、建設工事に関わる現場や政策において、複数の重要な意味を持ちます。
まず、資材費の削減により工事コストの抑制が期待できます。また、環境負荷の軽減にも寄与し、持続可能な建設業界の実現に向けた重要な一歩となっています。
さらに、労働力不足が深刻化する中で、より少ない人員で効率的に工事を進められることは、業界全体の生産性向上につながります。
まとめ
今回の調査結果は、日本の建設業界が技術革新と効率化により着実に進歩していることを示しています。資材使用量の減少と労働効率の向上は、コスト削減と環境配慮の両方を実現する理想的な発展といえるでしょう。今後も継続的な技術開発と施工方法の改善により、さらなる効率化が期待されます。
出典情報
国土交通省リリース,建設資材・労働力需要実態調査【建築部門】の結果について~令和5年度の金額原単位はすべての資材及び就業者で減少~,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001892253.pdf