【2025年版】建築設計とは?仕事内容・年収・必要な資格まで初心者にもわかりやすく解説

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著者:上野 海

建築設計は、住宅やビル、商業施設をつくる際に欠かせない重要な仕事です。しかし、具体的にどのような仕事をするのかイメージできずにいないでしょうか。

そこでこの記事では、建築設計への就職・転職を検討している方向けに、仕事の内容や平均年収、やめとけと言われる理由をわかりやすく解説します。

建築設計とは?

建築設計とは、建物の機能性・安全性・デザイン性を計画し、次のような成果をまとめていく専門知識を求められる仕事です。

  • 図面
  • 数量
  • 工事費
  • 設計の根拠資料

建築士という国家資格をもつプロフェッショナルが携わるケースが多く、住宅やオフィスビル、公共施設、商業施設など、さまざまな建物の「設計図」を描いて、実際の施工へとつなげていきます。

主に「建築基準法」「建築設計基準(令和6年改正)」などに、もとづいて設計を進めることから、技術基準等の理解が必要な仕事です。

建築士・建築施工との違い

建築設計と混同しやすいのが「建築士」「施工管理」です。以下に、比較表をまとめました。

主な業務資格の有無対象
建築設計設計図作成、構造・法規の検討一級・二級建築士など設計段階
建築士設計を含め、建築確認申請や監理業務を行う国家資格者必須(法的責任あり)全工程
建築施工図面に基づく工事現場の進行・管理建築施工管理技士など施工段階

まず建築設計と近い関係にあるのが、建築施工です。建築設計で作成したデータをもとに建築施工へと進むため、業務プロセスとしてつながっています。ただし、建築設計は設計のみ、建築施工は施工のみ対応するという点が違います。

一方で、建築士は建築系の国家資格を所有する人のことを指します。建築設計業務に携わる人物であることから、業務と従事者という違いがあると覚えておきましょう。

建築設計の仕事内容

以下に建築設計で対応することが多い、主な仕事内容を整理しました。

建築設計の仕事内容詳しい業務
施主との打ち合わせ・ヒアリング建物の用途、予算、デザイン要望、スケジュールなどを確認
敷地・周辺環境の調査日当たり、風向き、地盤、法規制(建ぺい率・容積率)を調査
基本設計の作成建物全体の構成・平面図・立面図・断面図の初期案を作成
実施設計の作成構造設計・設備設計を含む、工事に必要な詳細図面を作成
建築確認申請などの手続き建築基準法・条例に沿った設計内容を行政に提出
見積もり調整・施工会社との協議設計内容に基づく見積もり調整や施工計画の確認
工事監理現場で図面通りに施工されているかを確認および修正指示
竣工検査・引き渡しサポート完成後に法的検査や施主検査を実施し、建物を正式に引き渡す

上記のすべてに対応するのではなく、部分的に業務を進行していくのが特徴です。設計業務は図面作成を実施するものだとイメージされがちですが、実際には打ち合わせや手続きなども頻繁に発生します。

担当するプロジェクトの種類

建築設計者が関わるプロジェクトは、戸建住宅以外にもさまざまなプロジェクトがあります。以下に、プロジェクトの種類を整理しました。

種類設計で重視される点
戸建住宅生活動線、断熱性、デザイン、コスト
集合住宅(マンション)住戸配置、構造効率、防音性、管理性
オフィスビル機能性、フレキシビリティ、設備計画
商業施設動線計画、集客性、視認性、環境デザイン
医療・福祉施設バリアフリー、耐震性、衛生・導線設計
学校・公共施設耐久性、安全性、景観との調和
工場・物流施設作業動線、安全設計、機能分離

「誰が・何のために使うか」によって、設計のアプローチが変化します。専門分野を深めれば、それぞれの建物タイプで高い専門性を発揮することも可能です。

実務で使うソフト・ツール

建築設計では、アイデアを形にするために、専門的な設計ソフトやツールが活用されています。以下に現在利用されている一般的なソフト・ツールをまとめました。

ジャンルソフト名
2DCADAutoCAD
Jw_cad
DRA-CAD
3DCADSketchUp
Rhinoceros(ライノセラス)
SOLIDWORKS
BIMRevit
ArchiCAD
GLOOBE(グローブ)
解析ソフトSTAAD.Pro(架構構造解析・設計システム)
MIDAS Gen(構造分析ソフト)
OpenFOAM(数値流体力学の解析)

用いるソフトの種類などは、職場環境やプロジェクトの規模によって異なります。

なお最近では、国土交通省・厚生労働省が推進する「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」「働き方改革」などの影響を受け、BIM対応スキルが重視される傾向が強まっています。

またBIMの概要を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

建築設計の平均年収はいくら?

厚生労働省が公開している職業情報提供サイト「job tag」によると、建築設計技術者の平均年収は、全年齢で平均632.8万円です。

出典:厚生労働省「job tag」

なお年齢別にみる平均年収では、55〜59歳の795.9万円までは継続的に上昇傾向にあり、その後はなだらかに年収が減少していきます。

国税庁より、日本全体の平均年収は461万円だと言われているため、比較的高収入を得やすいのが特徴です。

年収を上げるポイント【資格・実績】

前述した建築設計技術者の平均年収はあくまで、全体の平均であるため、計画や努力次第ではさらに年収を高めることも可能です。以下に、建築設計技術者として、年収を上げるポイントをまとめました。

  • 国家資格「一級建築士」の資格を取得する
  • コンペに入選して実績を積む
  • BIMスキルを習得する

なお一級建築士を取得した場合には、年収1,000万円以上を獲得できるケースもあります。自身の設計事務所をもてるようになることも含め、技術力向上に合わせて年収アップも目指してみてください。

建築設計の仕事はつらい?やめとけと言われる理由とは

ネット上ではよく「建築設計はやめとけ」「仕事がきつい」といった口コミなどを目にすることがあります。参考として以下に、やめとけと言われる理由をまとめました。

  • 労働時間が長くなりがち
  • クライアントとの板挟みがつらい
  • 法改正や確認申請の複雑さ
  • 責任が重くプレッシャーが大きい
  • 給与が労力に見合わないと感じる
  • プライベートとの両立が難しい

確かに、建築設計といった建設業の仕事はハードワークや業務の重さを理由に転職する人がいるのも事実です。

ただ近年では徐々に働き方改革が進み、フレックス制度やリモートワークの導入も徐々に広がっています。残業時間の減少なども実際に起きているため、以前よりも働きやすくなってきていると覚えておきましょう。

建築設計士になるには?手順を解説

建築設計の仕事に就くためには、法的な資格や専門的な学びが求められます。参考として、建築設計士になるためのステップをまとめました。

ステップ内容
【1】学歴取得大学・専門学校で建築学を専攻する
【2】実務経験設計事務所やゼネコンなどで働き経験を積む
【3】建築士試験受験一級建築士・二級建築士などの国家試験を受験する
【4】登録・免許取得合格後、建築士として正式登録する
【5】設計実務へ建築設計士として独立、または事務所勤務を継続する

なお建築設計士は未経験からチャレンジすることも可能です。ぜひ上記のキャリアを踏みながら、建築士の道を目指してみてください。

また上記のステップのなかでBIMを学習したい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

建築設計についてよくある質問

建築設計は英語でなんと言う?

建築設計は英語で「architectural design」と言います。同じくそこに携わる建築設計士は「architectural designer / architect」と言われるのが特徴です。よくプレゼン資料や職務経歴書(CV)でも使われます。

建築設計の仕事は将来性ある?

建築設計の仕事は、社会の変化と共に進化していることから、将来性が非常に高い仕事だと言えます。特に近年では、BIMやサステナブル建築など新しい分野が登場したため、そこに携わる専門人材が求められているのが特徴です。

建築設計に向いている人の特徴は?

建築設計はクライアントの要望をくみ取りつつ、法令・構造・機能・意匠をすべて満たす「調整力」をもつ人ほど向いています。「図面を描くのが好き」「建築が好き」だけでは続かないこともある仕事ですので、自己分析をしておきましょう。

まとめ

建築設計は、ただ「図面を描く」だけではなく、施主の要望や理想を形にしつつ、法規や構造、安全性、そしてデザイン性をバランスよく満たす専門分野の仕事です。

厳しさがある一方で、非常にやりがいのある職業であり、かつ国内の平均年収よりも高収入を得やすいため、就職・転職先の候補に加えてみてはいかがでしょうか。