BIMと生成AI技術を組み合わせたシステムを開発するなどDXを加速化する長谷工の動向|深堀り取材【毎月15・30日更新】

建設業においても試行錯誤を重ねつつ、生成AIを積極的に活用する事例が顕著になっている。本稿では、2024年10月15日付けで『マンション専業企業として「長谷工版 BIM」を推進する長谷工の現在地』と題して報告した長谷工コーポレーション(以下:長谷工)の生成AI技術活用の進捗状況を報告する。

建設現場での活用を目的にBIMデータと生成AI技術を組み合わせたシステムの開発を公表

長谷工では、燈(文京区・代表取締役CEO:野呂侑希)と協働して長谷工版BIMと燈の持つ生成AI(大規模言語モデルシステム)技術を組み合わせた新たなシステムを構築した。建設現場での活用を目的にBIMデータと生成AI技術を組み合わせたシステムの開発は国内初(燈社調べ)となり、これによって建設現場での設計図書確認が更に効率化する。

長谷工は、マンションの施工累計戸数71万戸を超える実績(2024年12月末現在71万5,800戸・長谷工総合研究所調べ)と高い設計施工比率(2023年4月~2024年3月期実績96.8%)を活かした長谷工版BIMを構築し、2020年度には設計段階、2021年度には施工段階での導入体制を確立した。

一方で、建設現場の所員が設計図書を読み込み、技術情報を正解に把握するためには多くの習熟時間を要している。新たなシステムでは、長谷工版BIMと燈が有する生成AI技術を組み合わせることによって、チャット形式の質問により長谷工版BIM内の設計図書データから瞬時に必要な情報を検索・取得できる。昨年からプロトタイプの試験運用を行い、想定通りの運用が可能なことを確認しており、これによって建設現場での設計図書確認の効率化を実現する。

長谷工では、現中期経営計画(NS計画)の重点戦略において将来に向けた取り組みとしてDXの具現化を進めており、引き続きマンション事業全体でDXを活用した効率化による生産性の向上と働き方改革を実現していく。

システム活用概念図

システムを使用する際には、PC画面の左に長谷工版BIMを活用した3次元設計モデルが表示され、右のようにチャット形式で質問をすると、瞬時に回答を得ることができる。

操作画面イメージ

グループ全社員を対象に「生成AIリスキリングプログラム」を実施して約8,000名が受講

長谷工グループ(代表会社:長谷工コーポレーション)では、DX人材育成強化プロジェクト「DXアカデミー」の一環として、Microsoft社提供の生成AI「Copilot」の効果的な利用促進を目的としてグループ全社員を対象とした「生成AIリスキリングプログラム」を実施した。

長谷工グループでは、中期経営計画「HASEKO Next Stage Plan:略称:NS計画)」の重点戦略の一つにDXよる既存事業の革新的な生産性向上を掲げ、最新の技術を活用した業務改善に取り組んでいる。2023年7月には、「生成AI利活用推進プロジェクト」を設置し、グループ全社員へ生成AI「Copilot」を展開、全社的な業務効率化を目指して実業務での活用を促進してきた。

他方、直近の社内調査では、「具体的な使い方が分からない」「業務に応用する方法が分らない」といった声も寄せられた。合わせて生成AIの活用スキルは業務変革における重要なDXリテラシーの一つと捉え、「DXアカデミー」特別編として、グループ全社員を対象に「生成AIリスキリングプログラム」を実施し、約8,000名が受講した。

約90%がCopilot活用に意欲を示しグループ全体の業務改善に向けた具体的な成果が期待

生成AIリスキリングの講義内容としては、

1)生成AIで創る未来:全社的な生成AI活用の意識醸成とゴールの明確化を目的とする。
2) 活用方法とリスク:情報漏えい対策など正しい生成AI活用の理解を目的とする。
3) Copilotとプロンプト:具体的な生成AI活用イメージのため、プロンプト創出方法の紹介。
4) 徹底活用する方法:実業務での活用を促すべく生成AI活用業務の提示。
が挙げられる。

プログラム修了後のアンケートでは、約90%がCopilot活用に意欲を示しており、グループ全体の業務改善に向けた具体的な成果が期待できる。今後も、生成AIを活用した業務改善のアイデアを更に推進し、全社員が日常的に生成AIを活用できる環境を整えていくと共に、意見交換会やイベントを通して組織全体のDXスキル向上を目指していく。

左: 講義動画・右:プロジェクト代表者(役員)メッセージ