大林組によるBIMの利活用を目指した設備設計分野のBIMモデリングルールの一般公開|深堀り取材【毎月更新】
建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第38回は、大林組による更なるBIMの利活用を目指した設備設計分野のBIMモデリングルールの一般公開について解説します。
大林組では、自社のBIMモデリングルールである「Smart BIM Standard(SBS)※」の一領域を構成する設備設計分野のBIMモデリングルール(設備SBS)を1月15日付けで一般公開した。
「Smart BIM Standard(SBS)※」は、大林組が2023年1月に建設業界並びに関連事業者のBIMの活用推進を目的に開設した。その後も建築分野のモデリングルール(建築SBS)や部材データ(ファミリ)などのコンテンツを社外に公開することで、業界関係者とのBIM標準化に向けた活動を重ねてきた。
開設当初には1年間の限定公開としていたが、BIMの利活用を更に促進するため継続公開し、SBSサイト開設以来、2025年1月現在、各コンテンツのダウンロード数は延べ3万件を超えている。このたび建物の機能に関する電気・給排水・空調などの設備設計分野においてもモデリングルールを公開することで、設備設計や施工関係者を始め、業界の垣根を越えた関係者によるBIMの利活用の活性化を目指している。
※Smart BIM Standard(SBS):「情報の一貫利用を目指し、関係者が等しく理解できるデータをつくるための基準」として、大林組が策定した社内ルールのこと。
※Smart BIM Standard(SBS)ウェブサイト
https://smartbimstandard.com/
目次
コンセプトを解説する「一般公開ページ」+ファミリなどの「ダウンロードページ」から構成
公開サイトである設備SBSは、設備SBSを理解するためのコンセプトを解説する「一般公開ページ」や丸紅アークログのArch-LOG※サービスを活用したファミリ、テンプレート、マニュアルなどの「ダウンロードページ」で構成されている。
設備SBSの策定に際しては、大林組のBIM利用方針に加え、Revitユーザ会(RUG-jp)やBIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)、一般社団法人building SMART Japan(bSJ)といったBIMの標準化や情報交流を行う団体の動向にも考慮したルールとしている。今後ともBIMに集約される「情報」を活用して、空調衛生設備と電気設備などのデータ連携や機器の仕様情報のリスト連携、諸元表や計算書への情報連携も順次、進めていく。
公開によって設備SBSのコンセプトを理解した設備設計者や設備専門工事会社は、公開済みのファミリやテンプレートを参考に、自らもモデリングルールを作成することで、BIMの更なる利活用に向けた輪が広がることを目指していく。
※Arch-LOG:
https://m-arch-log.com/
今後ともSBSを通じてBIMモデル標準化に取り組み建設プロセスにおける生産性向上に貢献
BIMの一貫利用によって建設プロセスに関わる関係者間での情報伝達が合理化され、迅速な意思決定、折衝時間の短縮など生産性向上が期待できる。設備設計分野のBIM利用を促進することによって、新築や改修時にはエネルギー効率の最適化によるカーボンニュートラル実現への貢献や建物管理における設備情報の取得が容易となり、建物管理者の生産性向上及び顧客満足度の向上にも繋がると考えている。
今後、大林組では、SBSの公開を通じてBIMモデル標準化に積極的に取り組み、計画から設計、施工、施工管理、完成後の維持管理を含めて、業界の垣根を越えたBIMの一貫利用を推進し、建設プロセスにおける生産性向上に貢献していく。
SBSに準拠したRevitのファミリなどを参考に関連事業者がルール化するのを目的に公開
今に至るSmart BIM Standard(SBS)運用の経緯を俯瞰してみよう。大林組では、永年に渡って蓄積してきたデジタル運用の経験と知見に基づき、2018年に「プロジェクト関係者が等しく理解できるBIMモデルをつくるための基準」としてBIMモデリングルール「Smart BIM Standard(SBS)」を策定し、多くのプロジェクトに運用するなど社内運用を続けてきた。
一方で、業界全体を見渡すと、発注者、設計事務所、元請施工会社、専門工事業者などの関連事業者を横断してBIM運用するためのBIMモデルのモデリングルールの標準化は実現していなかった。それらの背景を受けて、SBSの考え方や内容を社外に公開することがBIMの標準化に向けた機運を醸成し、関連事業者間のBIM活用への速度を早めることに繋がると考え、SBSの公開に踏み切っている。
公開に際しては、各関連事業者がSBSのコンセプトを理解し、同一の考え方に基づき、汎用BIMソフト「Revit」のファミリやテンプレートを参考に、各々がルール化することを目指している。
SBSサイトは、大別すると、SBSを理解するためのコンセプトなどを説明する「一般公開ページ」や、丸紅アークログの「Arch-LOG」を利用したファミリ、テンプレート、マニュアルなどの「ダウンロードページ」などから構成されている。
「Arch-LOG」は、丸紅アークログが運営する建築建材業界のDXを促進するプラットフォームで、大林組では2023年1月に運用面で連携している。
検索ワードを入力することによって建材の中から、複数のメーカー製品を横断的に比較しながら、必要な建材を選定できる。それらの建材をスペックインしたマテリアルボードの作成や、リモートによるプロジェクト関係者との会議など、建材選定におけるあらゆる工程がWEB上で可能となる。
通読ことによってBIMの課題解決に向けた情報管理の実務ノウハウが獲得できるSBSサイト
Smart BIM Standard(SBS)サイトの一般公開ページでは、最上部に「What’s SBS?」「建築」「設備」「BLOG」などが列記されている。
「What’s SBS?」は、「Smart BIM Standardとは」「階層的な仕分け手法について」「Smart BIM Connection」から構成されている。
「Smart BIM Standardとは」では、大林組がBIM一貫利用のためのルールとして何故、SBSを策定したのかがBIMの現状と将来を踏まえて語られている。「階層的な仕分け手法について」では、BIM ソフト「Revit」のシステムファミリ命名規則やビューテンプレートの命名規則について明記している。BIM ソフト「Revit」には、モデルを構成する要素に対し「カテゴリ」「ファミリ」「タイプ」といった分類があり、階層的にデータができあがる構成となっている。また命名規則を追加することで更に分類を追加することができる。 図にあるように、「ファミリ」に対して「製作もの」「規格もの」のような製造方法による分類、「タイプ」に対して「鋼製」「アルミ製」といった素材による分類を命名規則で追加することが可能だ。
次いで「Smart BIM Connection」では、Smart BIM ConnectionがSmart BIM Standardを効率的に運用するために、同じ考え方に基づいて開発したRevitのアドオンアプリとクラウドサービスで構成されるシステムと明示されている。なお、「Smart BIM Connection」は、2019年10月に締結した3社間(大林組・トランスコスモス・応用技術)のアライアンスに基づいて大林組が開発し、オートデスクのBIMソフト「Revit」のアドオンアプリケーションとクラウドサービスのパッケージ商品として、トランスコスモスと応用技術が共同展開する「toBIMサービス」を通じて2021年5月10日からトライアル利用の受け付けを開始、2021年9月1日から販売している。
「建築」「設備」は、それぞれ「管理のポイント」「モデリングガイド」「命名規則」「ファミリ」「テンプレートの使い方」「共有パラメータ」「コンテンツ一覧」から構成されている。
「管理のポイント」では、BIMモデルの情報を一貫利用するためには、データの型や質の定式化が必要であり、このサイトでは、関係者が等しく理解できるデータの作成を目指したガイドを示している。
「モデリングガイド」では、SBSの普及と発展によりBIMデータの標準化、モデルの業務フローの確立、日常業務への応用を図ることを目的に、「Revit」の入力カテゴリの統一、段階に応じた入力状態の共有、データ構成の管理の3つの観点から基本的なルールをまとめている。
「命名規則」では、命名規則は、情報の集積するBIMモデルを整理し、関係者間での情報共有を助け、同時に情報管理上のさまざまな恩恵をもたらすとしている。
「ファミリ」では、大林組が作成したobファミリの内、一部を公開すると共に、ファミリの命名規則や使い方を解説している。
「テンプレートの使い方」では、モデルの見え方を規定するビューやモデルを構成するファミリ、塗りつぶしパターンや線種などが設定されており、コンテンツ一覧からダウンロード可能となっている。
「共有パラメータ」では、共有パラメータがGUIDというID番号を用いて定められており、Revitのプロジェクトやファミリとは別のテキストデータ(.txt)として保存できるため、同じパラメータを複数のファミリやプロジェクトを跨いで使用することができるとしており、具体的なパラメータグループなどが明示されている。
「コンテンツ一覧」では、大林組が作成した「各種コンテンツ」が階層的に一覧表示されており、ダウンロードが可能となっている。ダウンロード時には外部サイト(Arch-LOG)へと遷移し、その際には、Arch-LOGのアカウント(無料)が必要となるなど使い方も明記している。
「BLOG」には、情報の一貫利用へ向けて関係者が等しく理解できるデータを創るための基準であるSBSを最大限に活用する際に必須となる情報が掲載されている。「プロセス管理に必要なLODとは」「課題の解決へ向けて」「BIMの難しさの正体(1)-プロセス管理」「BIMの難しさの正体(2)-利用目的」「BIMの難しさの正体(3)-情報定義」などが列記されており、通読することで、実務に即してBIMを運用するための重要な要件が理解できる。
トップページには、合わせて「ご意見」が掲載されている。ここでは、Smart BIM Standardご意見投稿フォームから意見、感想などを投稿することができる。