建築と建設の違い|建設業許可の要件やDX技術事例で比較

トレンドワード:建築と建設の違い

建築と建設の違い」についてピックアップします。どちらもよく似た言葉ですが、対象工事や役割に違いがあります。本記事ではそれぞれの違いや、最新DX技術の活用事例について詳しくご紹介していきます。

建築と建設の違いとは

建築とは、建物をつくるプロセスのことを指します。一方で建設とは「建築を含む総合的な工事」のことを指し、より対象範囲が広いという違いがあります。このように、建築と建設は包含関係にあります。

「建設業許可」における分類

建設業法に基づき、建設業を営むためには「建設業許可」が必要です。ただし「軽微な工事」であれば許可は不要とされています。

【参考】国土交通省「建設業許可(建設業法第3条)」

ただし上記以外の場合は、下請契約の規模等に応じて次の2つのいずれかの許可が必要です。

①特定建設業発注者から直接請け負った1件の工事代金について、4500万円(建築工事業の場合は7000万円)以上となる下請契約を締結する場合。
②一般建設業特定建設業以外の工事。

建設業種別許可制|29種類をチェック

建設工事は一式工事(土木一式工事と建築一式工事)との専門工事の、合計29種類に分類されています。そのため建設工事の種類ごとに、必要な許可を取得することが求められます。具体的な建設工事の種類は、下記の通りです。

  • 1.土木一式工事
  • 2.建築一式工事
  • 3.大工工事
  • 4.左官工事
  • 5.とび・土工・コンクリート工事
  • 6.石工事
  • 7.屋根工事
  • 8.電気工事
  • 9.管工事
  • 10.タイル・れんが・ブロツク工事
  • 11.鋼構造物工事
  • 12.鉄筋工事
  • 13.舗装工事
  • 14.しゆんせつ工事
  • 15.板金工事
  • 16.ガラス工事
  • 17.塗装工事
  • 18.防水工事
  • 19.内装仕上工事 
  • 20.機械器具設置工事
  • 21.熱絶縁工事
  • 22.電気通信工事 
  • 23.造園工事
  • 24.さく井工事
  • 25.建具工事
  • 26.水道施設工事
  • 27.消防施設工事
  • 28.清掃施設工事 
  • 29.解体工事

「2.建築一式工事」という項目があることからも、「建設業」の中に「建築業」が含まれていることが分かります。

建築とは

ここでは「建築」について詳しくご紹介します。

主な役割

建築は主に「建物をつくる」ことに特化しており、人々が生活や業務を行う空間を創造することが役割です。具体的にはデザインや設計、機能性や安全性、美しさなどを考慮しながら、住宅・商業施設・公共施設などの建造物を実現します。建築士が関わることが多く、建物の構造や空間の最適化を行う業務が中心となります。  

工事対象

建築工事では、建物本体の構造や内外装、設備工事が中心となります。主な工事内容は、下記の通りです。

  • 住宅:一戸建てやマンションなどの住居  
  • 商業施設:オフィスビル、店舗、ショッピングモール  
  • 公共施設:学校、病院、図書館など  
  • 特殊建築物:体育館、劇場、宗教施設  

最新DX技術活用事例

ここでは、建築業で用いられている主なDX技術をご紹介します。

BIM

BIMとは建物の3Dデータを活用し、設計から施工、維持管理までを一元管理するデジタルツールのことを指します。これにより設計ミスの防止や効率化が図れ、施工の質も向上するのがメリットです。  

大手ゼネコン等では建築物の設計段階からBIMを導入しており、現場でのミスや手戻りを大幅に削減しています。今後、地域の工務店や建築業者への広がりも期待されています。

ロボット・自動化技術

出典:YKK,業界初の非木造建築用窓施工ロボット「MABOT」を開発,https://www.ykkapglobal.com/ja/newsroom/releases/20240903,参照日202412.24

最近では自動溶接や外装塗装ロボットなど、精密作業をAI搭載のロボットが行う技術が発展しています。例えばYKKは、非木造建築用窓施工ロボット「MABOT」を開発しました。

建設現場では熟練技能の不足や危険有害作業といった課題が多いですが、自動化により安全性の向上に貢献しています。これにより人手不足を補えるだけでなく、効率化による工期短縮も実現します。

建設とは

ここでは「建設」の概要についてご紹介します。

主な役割

建設は建物だけでなく、道路・橋梁・ダム・トンネルといったインフラを含む、社会基盤を築く役割を担うのが特徴です。そのため土木工事も含む広い分野に及び、社会経済活動の基盤を支えることが目的です。特に安全性・耐久性・効率性が重要視され、現場管理・施工技術・コスト管理の最適化が求められます。

工事対象

  • 土木工事:道路、橋梁、ダム、河川工事、トンネルや空港滑走路などのインフラ工事  
  • 建築工事:住宅、ビル、商業施設、工場など建物の建設  
  • 設備工事:水道、電気、ガスなどのライフラインの敷設工事  
  • 再開発・都市整備:市街地再開発、駅周辺整備、物流施設の整備など  

最新DX技術活用事例

建設業は建物だけでなく、社会インフラ全体の整備を担う広範な分野であり、DX技術の導入により「施工管理の効率化」「安全性の向上」「人材不足解消」が進んでいます。

AR・MR技術

出典:大林組,建設現場における作業手順をMR(複合現実)で可視化し、工程管理での有効性を実証,https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20210118_1.html,参照日202412.24

施工現場でAR(拡張現実)やMR(複合現実)を活用し、設計図と現場を重ねて確認する方法が開発されています。大林組は「作業手順のMRによる可視化」に着目し、建設中の2つの鉄道現場において工程管理における有効性を確認しました。

昼間は列車が走り施工できない鉄道工事では、作業時間が終電から始発までの数時間に限定されることから、作業の手戻りは大きな損失となります。しかしMR技術により鉄骨部材を組み立てる複雑な施工手順を可視化して共有することで、安全な施工計画の立案に役立てています。

AI施工管理システム  

出典:大成建設,工事進捗や資機材の保管状況を図面表示するシステムを開発,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220517_8747.html,参照日202412.24

大成建設は、AI江尾用いて工事の進捗状況や工事用資機材の保管場所を図面に描画するシステムを開発しました。これにより施工状況と使用資機材の所在を簡単・明確に把握できるようになり、建設工事における施工管理業務の省力化・効率化が可能となります。

具体的には現場巡回時に360度カメラで撮影した動画をAIで分析することで、内装工事における壁・天井などの施工状況および工事に使用する各種資機材の保管場所を自動認識し、図面上に表示できるのが特徴です。

土木とは

建設分野に含まれる分野の一つとして「土木」があります。ここでは、土木の概要についてもご紹介します。

主な役割

土木は、道路や橋梁、河川、ダム、トンネルといった社会基盤(インフラ)を構築・維持管理する役割を担います。生活や産業活動を支えるインフラの安全性・持続可能性を確保することが目的であり、自然環境との共存や防災・減災への対応も重要視されています。

工事対象

土木工事の主な対象としては、下記の項目が挙げられます。

  • 交通インフラ:道路、橋梁、高速道路、鉄道、空港滑走路  
  • 水利施設:ダム、河川改修、堤防、排水設備  
  • 地下・トンネル工事:山間部や都市部のトンネル、地下鉄構造物  
  • 防災・減災工事:防波堤、堤防強化、地すべり対策、耐震補強  
  • 都市整備・造成工事:宅地造成、埋立地造成、公園や緑地整備  

最新DX技術活用事例

土木分野でも、DX技術の活用が広がっています。

CIM

CIMとは土木分野で活用される3次元手法で、BIMと同様に設計から施工、維持管理まで一元化できるのが特徴です。 例えば河川工事で地形データを3Dモデル化することにより、施工シミュレーションによる効率化とコスト削減を実現できます。

ドローン測量・監視

出典:鹿島建設,ドローン空撮画像を用いて、のり面緑化工事の品質管理を高度化,https://www.kajima.co.jp/news/press/202205/25c1-j.htm,参照日202412.24

鹿島建設では、造成工事などの土木工事で発生する「のり面緑化工事の品質管理」の際にドローンを活用しています。具体的にはドローンによる空撮画像を用いて植被率を定量的に測定し、緑化の成否を評価します。

大規模なのり面に対しても定量的に植被率分布を評価できるため、発注者と施工者間の緑化成立に関する認識のずれがなくなり、手戻り工事や緑化不成立に伴う不具合等の大幅な低減が可能となるのがメリットです。

まとめ

建築と建設は似ている言葉ですが、それぞれ役割や目的が異なります。また土木分野とも関連が深く、DX技術の導入によるさらなる効率化が期待されています。施工の効率化や安全性の向上、持続的な管理が求められます。