CIMとは?メリットや導入方法、事例について解説

CIMは3Dモデルを利用した建設業務の施策の1つです。ダムや橋など、土木工事を対象とします。CIMを導入すると関係者とリアルタイムに情報の共有が可能になり、プロジェクト管理の効率化やコスト削減、生産性の向上など多くのメリットを享受できます。

本記事ではCIMのメリットや導入方法、導入事例についてみていきましょう。

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CIM(シム)とはConstruction Information Modelingの頭文字を取った言葉で、ダムや橋、道路など土木工事を対象とした工事を行う際に活用する手法です。建築物を3Dでモデル化したデータに、測量結果・設計・資材・コスト・工期目安など多くの属性情報を追加しながら使用できるため、業務効率化や情報共有に役立ちます。

CIMとBIMの違い

CIMと似た手法にBIM(ビム)があります。ビルやマンション、戸建て住宅、商業施設など建物情報を3Dモデル化することを指します。

CIMとBIMの大きな違いは対象分野です。BIMは建築分野を主な対象としています。一方、CIMの対象は土木工事分野です。構造物の情報に加え、地形や地質などより広い情報を扱います。2018年5月からは、まとめてBIM/CIMとして名称統一がされている状況です。

CIMのメリット

CIMの効果を最大限に活かすためには、導入のメリットを把握しておくことが大切です。ここでは3つのメリットについて、詳しくみていきましょう。

業務効率化ができる

CIMを活用すると、完成イメージを3Dで可視化できます。そのため、完成までに起きうる諸問題を、設計段階で把握できる点がメリットです。

従来なら完成間近にならなければ発見できなかったような問題も、早い段階で確認できるため早々に修正できます。修正によって変更となる金額も自動計算できるため、変更の都度、積算の拾い出しを行う必要はありません。

仕様変更によって情報の不整合が発生した場合でも、システム内ですぐにエラーを確認できます。このように、情報の一元化や自動化が可能になるため、業務効率化につながります。

情報共有ができる

CIMを導入すると、多くの関係者とリアルタイムで情報を共有できる点がメリットです。仕様変更などの際に必要な情報伝達の手間を大幅に削減できます。

また、土木工事では、地域住民など専門外の人に情報を提供する機会も多く見られます。CIMは3次元データで表現しているため、専門外の人とも完成イメージを簡単に共有できる点もメリットです。

維持管理にも役立つ

3Dモデルに各種情報を紐づけているため、効率的に資料検索できるため利便性の向上につながります。

さらに、点検結果や補修内容も3Dモデルに反映できます。長年にわたって情報を一元管理できるため、構築物のスムーズな維持管理が可能になる点もメリットです。

CIMの導入のステップ

CIMの効果を最大限に引き出すためには、自社に相応しいシステムやツールを選択することが大切です。

直感的にツールを決めるのではなく、運用開始までに必要なステップを踏む必要があります。詳しくみていきましょう。

1.目的を明確にする

漠然とCIMを導入するだけでは、効果を実感できないケースもあるでしょう。

CIMの導入で得られる主な利点は次の通りです。

  • 業務効率化
  • コスト削減
  • 品質向上
  • リスク管理
  • 迅速な情報共有
  • 建物の維持管理
  • 公共工事の入札

CIMの効果を最大限引き出すためには、導入の目的を明確にしておくことが大切です。

2.現状把握・分析

導入ツールを決める前に、現状の把握と分析を行いましょう。主に次の点に注目します。

  • 業務プロセスの流れ
  • データ管理及び情報共有の方法
  • 現在使用中のシステムの詳細
  • 社員のスキル及び能力
  • 現在抱える課題

現状や課題を明確にすることで、導入すべき機能が明確になるでしょう。

3.ツールの検討・導入

1、2の手順が完了したあとは、導入すべきツールを検討しましょう。

市販のツールでは機能が足りない場合には、システム開発も選択肢に入れる必要があります。一方で、予算との兼ね合いも吟味しなければなりません。

また、社員のスキルが不足している場合は、社員教育や採用、外注などもあわせて検討が必要になります。

4.CIMを運用する

3つのステップを踏まえた上でCIMを導入し、運用を開始しましょう。CIMを導入しただけで、すぐに目的が達成できるとは限りません。想定と異なる結果が出た場合は、適宜見直しが必要です。PDCAサイクルを回しながら、運用していくことが大切です。

CIMの導入事例

CIMの導入事例を3つみていきましょう。大手ゼネコンでは、既に多くの工事でCIMを活用しています。

竹中工務店

竹中工務店が開発した「ANAGO(アナゴ)」は杭工事の設計・施工を管理するシステムです。

従来は、ボーリング調査を元に設計者が支持層の深さを判別する分布図を作成し、全ての杭の長さを決めなければなりませんでした。しかし、杭の数に対しボーリング調査が少なく、正確な3次元形状の推定は困難です。違いが出るたびに杭の再製作が必要でした。

「ANAGO」を利用すると、ボーリング調査や実際の杭施工から得たデータを適宜3Dモデルに反映し可視化できます。設計作業時間を80%削減でき、省人化にもつながりました。

大林組

大林組はCIMを導入したことで、顧客に対しても次のようなメリットを提供できると言います。

  • 施工管理の効率化と品質の確保
  • 維持管理の効率化

各段階の品質管理データを統合するため、品質管理の向上につながります。また、引き渡し後も構造物の情報を簡単に取り出せるため、維持管理がスムーズになる点も顧客にとって大きなメリットです。

鹿島建設

鹿島建設は、CIMによるダムの一元管理システムを開発しました。施工情報を可視化することで、計画の最適化や品質向上につながります。システムの導入は、維持管理業務の省人化にもつながるため、引き渡し後の顧客に対しても大きなメリットを提供できます。

まとめ

CIMとは主に土木工事分野に用いられる手法です。建築物を3Dデータでモデル化したものに、多くの属性情報を適宜追加しながら活用します。

導入によって、業務の効率化、コスト削減、顧客満足度の向上など多くのメリットが期待できます。CIMを成功させるには、目的の明確化が欠かせません。現状の課題を洗い出し、解決につながるシステムの導入を検討してみましょう。