Shimz One BIMを基盤として竣工BIMデータをさまざまな用途に援用する新サービス提供|深堀り取材【毎月更新】

清水建設では、「Shimz デジタルゼネコン」を標榜し、基幹BIMソフトとしてオートデスク社の「Revit」を採用、中期デジタル戦略の中核をなすプラットフォームとしてShimz One BIMを推進している。

直近では、Shimz One BIMによって構築した竣工BIMデータを建築主(顧客)が自在に閲覧し、さまざまな用途に援用できる新しいサービスの提供を開始した。更にShimz One BIMの援用範囲を竣工後の建物の挙動にまで拡張し、固定資産管理、具体的には、什器・備品類の棚卸し業務を見える化・効率化するサービス「Shimz One BIM+」の提供を開始した。

施工BIMを最適化・編集して竣工BIMを構築+建築主(顧客)が援用する新サービス提供

竣工BIMデータを援用する新しいサービスを検証する。Shimz One BIMにおいては、設計施工案件では、自社の設計者が構築した設計BIMを施工BIM、竣工BIMに展開する一貫したデータ連動を実現している。他社設計案件については、各種設計図書類を設計BIMにデータ変換し、施工段階からShimz One BIM上に展開している。
 竣工BIMデータによる新たなサービスの提供に際しては、設備本部内に設けた専門チームと業務提携したベトナムの大手設計事務所が共同で竣工BIMを構築する体制を採用し、年間200件程度のモデル化に対応する。

詳細には、建築主(顧客)が竣工BIMを自在に援用しやすいように、施工BIMを最適化してシンプルな設計図書レベル「LOD100~200」のデータに編集し、竣工BIMとしてクラウドベースの建設ドキュメント管理ソフトウェア「BIM360Docs」に保管する。建築主(顧客)は、「BIM360Docs」を介して竣工BIMにアクセスできるため従来の書類ベースの竣工図書が不要になる。加えてグループ会社のプロパティデータバンクが提供する不動産管理クラウドサービス「※@プロパティ」と竣工BIMをデータ連携させることによって、建築主(顧客)は建物の維持管理履歴や修繕計画などを竣工BIMのデータ上で確認できる。

※@プロパティ: プロパティデータバンクが提供する不動産管理及びFM業務を支援するクラウドサービス。全国約300社に導入され活用建物は約10万棟に及ぶ。BIMとの連携機能を実装している。

竣工BIMのカスタマイズなどによってShimz デジタルゼネコンの業務範囲を伸長+拡張

竣工BIMのカスタマイズも新たなビジネスとして展開する。イベント施設や劇場においては、竣工BIM上に舞台設営を再現することによって観客席からの視認性や音響などを評価できる。商業施設では、竣工BIMを加工して仮想空間と現実空間のデジタルツイン基盤を構築することも可能だ。加えて、別途、他社施工物件含め建築主(顧客)が保有する2次元の竣工図書のBIM化や竣工BIMのアップデートなどのサービスも提供する。BIM化の費用は、建物用途や規模、LODにより異なるが中規模の一般事務所ビルの場合で200万円程度から対応する。

Shimz One BIMのイメージ

BIMによる3次元の仮想空間上で固定資産管理を見える化・効率化する新サービスを展開

「Shimz One BIM+」は、什器・備品類の棚卸し業務を見える化・効率化する新サービスだ。運用に際しては、クラウドベースのデジタルツインソフトウエア「※Autodesk Tandem」を使用している。国内ではBIMで設計された新築ビルを中心に導入が進むとしており、年間100件程度の新規契約の獲得を目指している。

11月21日の情報公開段階で、サービスの導入費用は、BIMデータを保有し、フロア面積2,500平米、管理対象となる什器・備品類が1,500点程度の新築のオフィスの場合、基本料120万円、保守費用60万円/年としている。自動車メーカー系の生産施設、金融機関系の事務所ビルなどへの導入が内定済。
 企業・組織が販売目的以外で保有する資産の内、使用期間が1年以上、取得価格が10万円以上、減価償却の対象になるものでオフィス内の什器・備品の多くが固定資産とされる。総務担当者は、個々の固定資産の取得時に、「固定資産管理番号」「固定資産名」「取得年月日」「取得価額」「耐用年数」「配置場所」などを固定資産管理台帳に記載する必要がある。毎年、記載資産の所在、状態、残存簿価などを確認する棚卸しを行い、減価償却費を予算化しなければならず、これらの棚卸し業務が多大な労力を要している。

多くの固定資産管理システムが市販されているが、台帳の記載とデータ共有の手間を効率化するだけであり、管理上、最も人手を要する資産の所在確認や維持保全情報の入力といった棚卸し業務は効率化していない現状がある。それらの現状を改善するべく、BIMを活用して3次元の仮想空間上で固定資産管理を効率化する新サービス「Shimz One BIM+」の事業化を検討し、実現に至った。

※Autodesk Tandem: 建設業向けの高度な共同作業ソフトウェアであるBIM Collaborate Pro のサブスクリプションで利用できる建築、土木エンジニアリング、建設に対応したクラウドベースのデジタルツインソフトウェア。デジタルツインの構築・提供・管理、用地の現況に合わせた建物システムの視覚化、引き渡し後の設計決定のパフォーマンス計測などを実現する。

対象資産をクリックすると3次元モデル上で色分け表示され瞬時に保守内容の確認が可能

「Shimz One BIM+」は、3次元の固定資産管理台帳として稼働する。新築ビルの場合では、導入までの所要期間は約2ヶ月。その間、ユーザーは固定資産管理台帳へのデータ入力を行い、清水建設側では事業所のレイアウトなどの調査、既存のBIMデータに什器・備品を配置した3次元モデル(仮想空間)の作成、台帳と3次元モデルのデータ連動などを実施する。  

什器・備品などのBIMファミリは、主要なオフィス家具メーカーが提供している3次元モデルをそのまま用いる。保守については、3次元モデルのレイアウト変更(管理対象資産の移動)、クラウド利用料、ヘルプ(問い合わせ対応)などを含む。BIMデータを保有しない場合は、有償で新たなデータ作成、特殊な什器・備品のファミリ作成を行う。

「Shimz One BIM+」の3次元の固定資産管理台帳によって総務担当者による固定資産の棚卸し業務は一変する。総務担当者が固定資産管理台帳に記載されている特定の資産をクリックするだけで、3次元モデル上の当該対象資産が色分け表示されるので、瞬時に所在を確認できる。3次元モデル側からの確認も可能で、特定の資産をクリックすると、ファミリの属性情報とリンクする固定資産管理台帳の情報が表示され、そこに維持保全情報を記入することで、ファミリの属性情報と固定資産管理台帳が同時に更新される仕組みになっている。

什器・備品を配置したBIMの3次元モデル
什器・備品を配置したBIMの3次元モデル(2)