太陽光パネルリサイクル|義務化はいつから?経産省・環境省の取組や課題
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「太陽光パネルのリサイクル」についてピックアップします。2025年から東京都の新築建築物で太陽光パネル義務化がスタートしますが、同時に「大量廃棄」の課題も浮上しています。そこで本記事では、太陽光パネルのリサイクル方法や経産省・環境省の取組についてご紹介します。
太陽光パネルとは
太陽光パネルとは、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置のことを指します。一般的にはソーラーパネルや太陽電池モジュールとも呼ばれ、太陽光発電のために使われます。
太陽光パネルの表面には半導体であるシリコンなどが使われており、光が当たると電流が発生する「光電効果」を利用して発電する仕組みです。太陽光は枯渇しないエネルギー源のため、環境負荷が少なくなります。
太陽光発電の必要性は年々高まっており、実際に東京都では2025年4月から、新築住宅に対して「太陽光発電設置義務化」を行う予定です。これはエネルギー大消費地の責務として、2030年までに都内の温室効果ガスを50%削減する「カーボンハーフ」の実現に向けた取り組みの一環となります。
2030年以降、太陽光パネルの大量廃棄が予想される
一般的に太陽光パネルの寿命は25〜30年程度と言われており、2000年代から普及し始めたパネルが2030年以降に大量に廃棄されることが予想されます。
しかし現在のリサイクルシステムはまだ十分に発達しておらず、リサイクルや再利用の効率化が大きな課題です。また一部の太陽光パネルには鉛やカドミウムといった有害物質が含まれており、適切に処理しないと環境に悪影響を及ぼすリスクも指摘されています。
すでに海外では太陽光パネルのリサイクルを義務化する法律やガイドラインが設けられており、適切な処理が行われる体制が整備されています。また環境に優しい素材を使ったパネルや、リサイクルが容易な構造のパネルの開発も進められている段階です。
大量廃棄問題を解決するには、リサイクル技術や政策の整備、より持続可能な製品設計が必要とされています。
太陽光パネルのリサイクル方法
太陽電池パネルは、各部分に分離してからリサイクルされます。その中でジャンクションボックス(銅線含む)とアルミフレームは取り外しが容易で、銅やアルミ材料としてリサイクルされるのが一般的です。
一方でガラス/セル/EVA(封止材)は、ガラスとそれ以外の部分に分離後、それぞれ材料リサイクルされます。しかしガラスとそれ以外の部分に分離する技術の開発や、大量廃棄時の再利用先の開拓が課題となっています。
太陽光パネルリサイクルが義務化へ
太陽光パネルの廃棄問題を受けて、経済産業省や環境省では対応を検討しています。ここでは、法整備やガイドラインについてご紹介します。
経済産業省・環境省|太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ
経済産業省と環境省では、2024年9月から「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」を実施しています。再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方や、解体・撤去及び運搬に係る費用負担について等が議論されている段階です。
最終的には義務化せずとも経済合理的にリサイクルが進むよう、官民協力の下で目指すべきロードマップを描く必要があります。
環境省|太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン
環境省では、2024年8月に「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」を公表しました。これは2018年に公表済みの第二版を改訂したものです。
太陽電池モジュールの適正なリユース、リサイクル・処分の確保を行うことで、太陽光発電設備の普及による脱炭素社会の実現に資することが期待されています。
具体的には、回収から埋立処分までの全体像やリサイクル時の太陽電池モジュールの破砕・選別技術の事例等について紹介されています。
太陽光パネルリサイクルの課題
太陽光パネルのリサイクル需要は高まっているものの、まだまだ課題は残っています。
処理費用が掛かる
太陽光パネルのリサイクルには、高額な費用がかかります。太陽光パネルにはガラス、アルミニウム、シリコンなどの素材が含まれていますが、これらを分離・再利用するには特殊な設備が必要です。
またリサイクルコストが新素材の製造コストを上回るケースが多く、経済的に採算が取りにくいという課題もあります。
技術力の不足
リサイクル効率を高める技術はまだ発展途上であり、効率よくリサイクルを行うためにはさらなる技術革新が必要です。特にシリコンの再利用やレアメタルの回収は技術的に難しく、現時点ではリサイクルできる資源が限られています。
有害物質が含まれる
太陽光パネルには、鉛やカドミウム、セレンなどの有害物質が含まれているものがあります。適切に処理しなければ環境汚染につながる可能性がありますが、特に鉛やカドミウムは人体にも有害であるため、安全かつ効率的に処理する技術が必要とされています。
そのため適切な処理が行われるよう、法的な枠組みや規制の強化が進められています。太陽光パネルのリサイクル問題の解決には技術面、経済面、法制度面での対応が求められており、各分野の連携が重要です。
太陽光パネルリサイクルの取組事例
ここでは、具体的な太陽光パネルリサイクルの取組事例についてご紹介します。リサイクル義務化の流れを受けて、関連銘柄の注目度も上昇中です。
三井化学|中古太陽光パネルのリユース実証
大手総合化学メーカーの三井化学は、Sustechと共同で、中古太陽光パネルのリユースを通じた新たな再エネ導入スキーム実証を行う予定です。具体的には、双方の技術を活かして下記の取り組みを行います。
- FIT発電所におけるリパワリングの過程で発生する中古太陽光パネルの調達 (担当:三井化学)
- 中古太陽光パネルの設置、分散型電力運用プラットフォーム「ELIC」を通じた電力運用、保守・管理(担当:Sustech)
これにより、太陽光パネル自体の循環に向けたリユースやリサイクルのための技術や商流、ビジネスモデルの確立を目指します。
AGC|太陽光パネルカバーガラスのリサイクル実証試験
AGCは、太陽光パネルのカバーガラスを原料としたフロート板ガラス製造の実証試験に、日本で初めて成功しました。これまで技術的に困難とされてきたフロート板ガラスにおいても、カバーガラスのリサイクルが可能となる見通しです。
カバーガラスは太陽光パネルの重量全体の約6割を占めており、産業廃棄物として埋め立て処理されることによる深刻な環境負荷が懸念されています。しかし今回の実証試験成功を受けて、生産量の多いフロート板ガラスが、廃棄カバーガラスの水平リサイクルの受け皿となることが期待されます。
これにより珪砂やソーダ灰など天然資源由来原料の節減や、製造工程におけるGHG排出量削減にも貢献します。
まとめ
再生可能エネルギーである太陽光発電は、今後さらなる広がりが期待されています。一方でリサイクルに関する課題はまだ残っており、技術開発や費用面の解決が急がれます。