竹中工務店が病院の省エネ性能で快挙 小田原市立病院のZEB Ready取得で国内トップに
竹中工務店(佐々木正人社長)は、2026年に開院予定の新しい小田原市立病院(神奈川県小田原市)において、建築物の省エネルギー性能を示すBELS制度で「ZEB Ready」(BEI値0.43)を取得したことを発表しました。
これは、同規模の病院と比較して年間のエネルギー使用量を57%も削減できる設計であり、延床面積1万平方メートルを超える総合病院としては国内最高の省エネ性能となります。
なぜ病院の省エネ化は難しいのか
総合病院は、患者さんの命を守るため24時間365日休みなく稼働し続けなければなりません。このため、一般的な建物と比べて非常に多くのエネルギーを使用します。
また、院内感染を防ぐための空調設備や、医療機器を安定して動かすための電力設備など、大規模な設備システムが必要となります。これらの理由から、病院は他の種類の建物と比べて省エネルギー化が特に難しい建物とされてきました。
新病院の特徴
新しい小田原市立病院は、地上9階建て、延床面積約42,000平方メートルという大規模な総合病院です。重症な救急患者さんにも対応できる三次救急医療施設として計画されており、小田原市が国と共に進める環境配慮型の街づくり計画における中核施設として位置づけられています。
省エネルギー化への具体的な取り組み
病院における省エネルギー化の課題を詳しく分析した結果、以下の3つの主要な課題が明らかになりました。
■外気負荷の問題
・病院では常に新鮮な外気を取り入れる必要があり、その空気を冷やしたり暖めたりするのに多くのエネルギーが必要
・対策:夜間は病室の換気量を必要最小限に抑える制御や、人の多さに応じて換気量を自動調整するCO2センサーの導入
■廃熱の有効活用
・医療機器などから出る熱を再利用する仕組みを導入
・水熱源ヒートポンプや熱回収ヒートポンプを使用して、冷房時の廃熱を暖房に活用
■設備の効率化
・実際の病院運営に合わせて設備の容量を最適化
・必要な時に必要な場所だけ効率的に空調や換気ができる システムを採用
これらの対策だけで、エネルギー消費量を約30%削減することに成功しました。
その他の省エネ技術
建物全体での省エネルギー化のため、以下のような取り組みも実施しています。
・屋上に緑を植えて建物への熱の影響を軽減
・特殊な断熱ガラス(Low-Eペアガラス)の採用
・日射を適切に遮る工法
・高効率な空調機器や照明の使用
・マイクロコージェネレーションシステムの導入
・太陽光発電設備の設置
これらの取り組みにより、全体で57%という大幅なエネルギー削減を実現しました。また、建築物の環境性能を総合的に評価するCASBEEかながわでも最高ランクのSランクを達成しています。
今後の展望
竹中工務店は、建設会社・設計会社の中で最多のZEB設計実績を持っています。今回の小田原市立病院での成果を活かし、これまで省エネルギー化が難しいとされてきた様々な種類の建物においても、積極的にZEB化を進めていく方針です。
施設概要
建築主:小田原市立病院規模/構造:地上9階/鉄骨造
病床数:406床
延床面積:42,224.87平方メートル(本体)
工事期間:2023年12月~2026年2月(2026年春開院予定)
設計:竹中工務店・内藤建築事務所設計共同企業体
施工:竹中工務店
監理:内藤建築事務所
用語解説
・BELS(建築物省エネルギー性能表示制度):第三者機関が建物の省エネルギー性能を評価・認定する制度
・ZEB Ready:標準的な建物と比べて、エネルギー消費量を50%以上削減できる建物であることを示す認証
ZEB Readyについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください↓
・BEI(ビーイーアイ):標準的な建物のエネルギー消費量を1とした場合の相対値。値が小さいほど省エネ性能が高いことを示す
・三次救急医療:重症で緊急性の高い患者さんに対応する高度な救急医療
出典情報
出典:株式会社竹中工務店リリース情報,大型総合病院として国内最高値の省エネ性能でZEBを実現―小田原市立病院 ZEB Ready(BEI=0.43)を認証取得―,https://www.takenaka.co.jp/news/2024/10/04/