建築業でのメタバースとは|活用事例紹介
目次
トレンドワード:メタバース
「メタバース」についてピックアップします。仮想空間の活用が広がっている中、建設業でも様々な取組が行われています。本記事では建設業におけるメタバース事例の他、「メタバースは失敗する?」という疑問についてもまとめています。
メタバースとは
メタバースとはインターネットを通し、利用者同士が交流できる仮想空間のことを指します。語源の由来は、「超越」「高次元」という意味の「メタ(meta)」と、「宇宙・ユニバース(universe)」から取った造語です。
仮想空間はCGで制作され、利用者はヘッドセットやゴーグルを装着してメタバースの世界に入ります。あくまでも仮想的な空間にはなりますが、VR端末を利用することで奥行きや音場も再現できるのが特徴です。離れた所にいる人の話し声は小さく聞こえ、後ろの方からの立ち話はリアルに後ろの方から聞こえます。
インターネットの世界にいながらまるで現実のように感じられることから、現実では難しい体験ができたり、アバターを介してコミュニケーションが取れたりと応用の場面は広がっています。
メタバースと3DCGの違い
メタバースと3DCGは、一見同じように見えます。確かに、どちらもインターネット上の仮想空間という点では共通しているでしょう。しかしメタバースは「ユーザーが自由に集まってコミュニケーションが取れる」という違いがあります。
またメタバースでは、空間上でユーザー同士がコミュニケーションを取れます。今後触覚や嗅覚といった五感を体現できるようになれば、現実世界との置き換えが可能になるとも言われています。
建築メタバースの活用事例
ここでは、メタバースを建築業で活用している事例をご紹介します。
①ビジネス|comony
comonyでは、建築に特化したメタバース空間を提供しています。空間内では建築の探索・ツアー参加のほか、独自の建築物の構築やツアーの開催も可能です。
建築設計のプレゼン、ポートフォリオなどに活用すれば、クライアントや施工業者にも直感的に空間イメージを共有できます。文字や図面上だけでは伝わりにくいイメージもすぐに伝わるため、コミュニケーションがよりスムーズに進むのがメリットです。
②プレゼン|D’s BIM ROOM
大和ハウス工業では、メタバース空間の「D’s BIM ROOM」を開発しました。これは、建物の建設予定地で実寸大の外観イメージや色味などを体験できるシステムです。
メタバース上で打ち合わせして決定した事項は、BIMや建材選択サービス「truss」に瞬時に反映できます。そのため企画・設計・施工の過程において、より効率的に共同作業が進められるのが特徴です。
③教育・シミュレーション|VRiel(ヴリエル)
大林組では、VRを用いた施工管理者向け体験型教育システム「VRiel」を開発しています。受講者はVR上を移動したり、首を動かして視界を上下左右に動かしたりすることで、工事現場と同様の体験が可能です。
また施工管理に必要な図面や基準図、計測用のコンベックス等もすべてVR上で確認できます。実際の工事現場と同様の環境で学習することにより、不具合に気付く感性を身に付けられるのがメリットです。仮想空間の利用が広がる昨今においては、デジタルに求められる役割はより一層大きくなってきています。
建築業でのメタバースのメリット
建設業におけるメタバース活用のメリットは、下記が挙げられます。
- 自由な空間を作れる
- 教育に生かせる
- 売買・賃貸で利益が得られる
メタバース空間では、物理的に建築が不可能なものでも自由に造形可能です。現実世界ではコストの問題や建築基準法の順守などを考慮しなければなりませんが、メタバース上ではその必要もありません。そしてリアルな世界を再現できることで、建設現場での教育訓練としても活用できます。
またメタバース空間内の土地に不動産を所有する「不動産NFT」であれば、実際の建物と同じように売買・賃貸することも可能です。NTFについて詳しくは、下記記事をご覧ください。
建築業でのメタバースのデメリット
一方で、建設業でのメタバースにはデメリットもあります。
- 導入コストが掛かる
- ハッキングのリスク
- 物理的建築の需要低下
建設業でメタバースを導入するには、仮想空間構築のためのコストが掛かります。現実世界と同じような再現度にするには、大量のデータ収集や管理が必要です。またメタバース空間はインターネットに接続するため、ハッキングや情報漏洩の危険性もあります。
さらに今後メタバースが本格的に普及すれば、物理的な建築物の需要が減るかもしれません。実際に都心のオフィスビル等では空室率が上昇しており、店舗施設・住宅ともに新たなビジネスモデルの開拓が求められる可能性が高いでしょう。
メタバースの9割は失敗する?原因・理由と対策
メタバースは一時的にブームとなった一方で、運営を中止している事業者も多いです。その理由としては、下記が挙げられます。
- 事業化が難しい
- 実用化のメリットが薄い
メタバースにはメリットが多いものの、まだ技術的に現実世界と同等のクオリティには達していません。そのためコストを考慮すると、あえてメタバースにするメリットが薄いのが実情です。
まとめ|メタバースの建築に期待
メタバース空間では現実だと難しい建築も可能で、メリットも多いです。しかしまだまだ技術開発には改善の余地があり、コスト面からも導入企業は少ないのが現状です。今後はさらなる発展が期待されます。