物流最適化で建設DX|自動物流道路も実現?

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著者:小日向

トレンドワード:建設業の物流最適化

建設業の物流最適化」についてピックアップします。いよいよ「2024年問題」を迎えた物流業・建設業では、人手不足による課題への対応が注目されています。本記事では物流最適化のポイントや、建設業における具体的な取組をご紹介します。

2024年問題に直面する物流業の課題|建設業への影響も

2024年に物流業でも働き方改革関連法の施行を迎え、それに伴う様々な影響が懸念されています。労働環境が改善されるのは良いことですが、負の側面もあるのが現実です。

ここでは、物流業が抱える課題について整理しておきます。物流業は建設業とも関わりが深いため、広く影響が出る恐れがあります。2024年問題について詳しくは、下記記事をご覧ください。

人手不足

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001514680.pdf

物流分野における労働力不足が、最近特に顕在化しています。トラックドライバーが不足していると感じている企業も、増加しているのが現状です。

さらに年齢構成についてみると、全産業平均より若年層と高齢層の割合が低く、中年層の割合が高いのが特徴です。国土交通省によると「2028年度には約27.8万人のドライバー不足が予測される」と公表されています。

小口配送の増加

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001514680.pdf

貨物1件あたりの貨物量が直近の20年で半減する一方、物流件数はほぼ倍増しています。つまり「物流の小口多頻度化」が急速に進行していると言えます。

一方で2010年以降、積載率は40%以下の低い水準で推移しています。小口配送は労働負担の増加に拍車をかける原因になってしまうため、効率化が求められているのです。

過酷な現場環境

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001514680.pdf

物流業は過酷な労働環境が課題となっており、実際に労働時間は全産業平均より約2割長くなっています。そして年収についても、全産業平均に比して5%~10%程度低い状況です。

トラック運送事業の営業費用の約4割は運送に係る人件費であり、ドライバーの収入を上げていくためには、原資となる運賃確保が不可欠です。

物流最適化とは|課題解決のポイント

ここでは、物流最適化を図るためのポイントを説明します。デジタル技術やAIを用いることで、業務効率化の実現が期待されています。

在庫管理の最適化

在庫管理を最適化することで、無駄な資材の発生を防ぎます。ストックアウトが減ることで、資本の効率化が実現するのです。

運送ルート・拠点の最適化

運送ルートを最適化すれば、余計な運送コストや配送時間の節約に繋がります。中間地点に拠点を整備するなど、物流システムを整えることも有効です。人手不足が常態化している状況においては、最適な運送ルートの整備で業務効率化が図れます。

AI管理システムの導入

AIによる物流システムや購買管理システムを導入すれば、課題の効率化に繋がります。具体的には、検品作業や人員配置の最適化といった活用方法があります。

「自動物流道路」とは|国土交通省が検討

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/buturyu_douro/pdf01/03.pdf

国土交通省では、物流最適化を図るために「自動物流道路」の導入を検討しています。具体的には、高速道路の路肩や中央分離帯、地下空間などの活用が想定されています。

現在はトラックで輸送している荷物が自動運搬できることで、手間やコストが削減できるのがメリットです。2024年夏頃に、想定ルート選定等を含めた中間取りまとめが発表される予定です。国土交通省のロードマップでは、今後10年での実現を目指すとされています。

海外の自動物流道路事例|スイス地下貨物輸送

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/buturyu_douro/pdf01/04.pdf

自動物流道路は、すでに海外でも取り組みが始まっています。スイスでは主要都市間を結ぶ約500㎞の地下トンネルを活用した、自動輸送カートの構築が計画されています。

トンネル内の3線のレーンを、時速30kmで24時間体制で走行可能です。将来的には自動輸送カートを100%再生エネルギーで運転する予定で、環境にも優しい取り組みとなっています。

建設業の物流最適化事例

建設業では、資材物流が工事の進捗に大きな影響を与えます。具体的には、下記のような課題が発生しています。

  • 荷待ち時間の発生
  • ドライバーが付帯作業を実施している
  • 検品・仕分け作業に時間が掛かる

工事現場では前日に搬出入予定を決める場合も多く、交通渋滞等により現場への入場予定時刻と乖離してしまうことが日常的に起こります。そのため、「荷待ち時間」と呼ばれる無駄な時間が発生しています。

また付帯作業がドライバーの負担になることや、検品・仕分け作業が効率化されていないことも課題です。こういった問題を解決するために、建設業でも物流最適化する動きが見られています。

大林組|中間物流拠点「エコロジサイト」

https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220909_1.html

大林組では、2022年に建設資材納入車両を一ヵ所に収容する物流拠点「エコロジサイト」を開設しました。路上待機車両の削減による交通渋滞や排気ガスの抑制により、建設業全体での社会的課題解決を目指します。

具体的には、サイトから一定の範囲内(およそ30分圏内)の建設現場に出入りする車両の待機場所として活用されています。また車両待機だけでなく、資材の仮置きや積み替えヤード、組み立てなどの作業場としても活用することで、狭小な現場における施工の効率化を図ります。ドライバーの拘束時間が短縮できるため、労働待遇改善にも貢献できるのがメリットです。

福井コンピュータ|搬入調整アプリ「DandAll」

https://hd.fukuicompu.co.jp/company/hd_its_dandall.html

DandALL(ダンドール)は、建設現場の資機材搬入と揚重(荷揚げ)を管理するアプリです。現場のスケジュール管理をIT化することで、現場全体の見える化が実現します。具体的には、下記のような活用法が可能です。

  • ダムやトンネル工事現場に続く狭小路へのダンプ配送管理
  • 基幹道路の渋滞緩和のための配送管理
  • 国道沿いの現場の場合、搬入作業での事故防止等の安全対策
  • 限られた搬入ゲートでの複数車両搬入競合解消による工事遅延防止
  • 都市部での待機車両削減による近隣住民への配慮

まとめ

物流業では、建設業と同様に「2024年問題」への直面が課題とされています。人手不足等に対応するためには、物流最適化が求められています。今後は適切な拠点の整備や、IT技術の活用の広がりが期待されます。