技能実習制度の問題を見直し|2024「育成就労制度」新設へ
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トレンドワード:技能実習制度の見直し
「技能実習制度の見直し」についてピックアップします。建設業では外国人労働者が増えていますが、過酷な労働環境による失踪者の数も後を絶ちません。課題解決のために「育成就労制度」が新設される見込みです。本記事では「技能実習と特定技能の違いは?」といった疑問についても解説します。適切なDXツールの導入で、現場のトラブルを解決しましょう。
技能実習制度とは
技能実習制度とは、日本が外国人労働者を受け入れて「人づくり」に協力することを目的とした制度のことを指します。実習期間は最長5年で、日本の企業等が外国人を技能実習生として受け入れることで、技能の習得を図っています。
しかし本来の目的とは異なり、人手不足解消のために劣悪な環境や低賃金で働かされているといった実態が問題となっていることも多いです。人権侵害に繋がる場合もあるため、適切な対応が求められています。
技能実習の業種・職種
外国人技能実習においては、主に下記の業種・職種で実習生を受け入れています。
- 農業
- 漁業
- 建設
- 食品製造
- 繊維・衣服
- 機械・金属
その中でも建設業では、上表のように「さく井、建築板金」といった22職種33作業が対象となっています。
在留資格とは
在留資格(ざいりゅうしかく)とは、日本において外国人が法的に滞在するために必要な資格のことを指します。目的に応じた在留資格が必要となり、具体的には就労関係や身分関係のものなど、33種類に分類されています。
例えば「留学」は、日本の大学や専門学校に留学するための資格であり、「技能実習」は、特定の職種で働く外国人労働者向けの資格です。在留資格には一定の条件や期限が設けられており、その条件を満たしていない場合は、滞在が合法でなくなる可能性があります。
「技能実習」と「特定技能」の違いは?
技能実習とよく似た言葉として「特定技能」があります。主な違いについて、下表にまとめました。
技能実習 | 特定技能 | |
---|---|---|
目的 | 技術の習得による「人づくり」 | 日本の人手不足を補う |
人数(2024年3月時点) | 358,159人 | 173,101人 |
在留期間 | 技能実習1号:1年以内、 技能実習2号:2年以内、 技能実習3号:3年以内(合計で最長5年) | 通算5年 |
家族の帯同 | 不可 | 可(2号のみ) |
転職 | 原則不可 | 可 |
入国時の試験 | なし | あり |
技能実習と特定技能の大きな違いは、その目的です。まず「技能実習」は、日本の技術や知識を開発途上地域に伝えるという目的があります。一方で「特定技能」は、日本で深刻化する人手不足に対応するために2019年から新設されました。
法務省では外国人労働者の受け入れについて「幅広い観点からの検討が必須であり、この検討は国民的コンセンサスを踏まえつつ行われなければならない」としています。
技能実習制度の問題点とは
技能実習制度の問題点としては、下記が挙げられます。
- 安い労働力として利用されている
- 人材が長期的に定着しない
- 低賃金や人権侵害の問題
- 治安の悪化
技能実習は特定技能と違い、本来は高い技術の習得を目的とした制度です。しかし実際には、単なる安い労働力として利用されてしまっている場合があります。
また最長5年で帰国してしまうため、企業が長期的な人材確保や経済成長につながる仕組みを構築するのが難しいです。さらに一部の実習先では、技能実習生に対して適正な賃金を支払わず、長時間労働や劣悪な労働条件を強いるケースが報告されています。これにより、人権侵害に繋がる恐れがあります。
また受け入れる側にとっても、教育や社会保障等の社会的コスト、日本人労働者の確保、治安の悪化といった不安が指摘されています。
建設業で失踪が多いのはなぜ?|原因を解説
出入国在留管理庁のデータによると、2022年の技能実習生の失踪者は合計9,006人でした。このうち建設業は4,717人で、他業種より突出して多いのが特徴です。失踪の主な原因としては、下記が挙げられます。
- 賃金等の不払いなど、実習実施側の不適切な取扱い
- 入国時に支払った費用の回収等、実習生側の経済的な事情
失踪防止に向けた施策として、下記の取り組みが行われています。
- 失踪者を出した機関に対し、新規受け入れを停止
- 相手国におけるブローカー対策を促す
- 失踪技能実習生を雇用した企業の公表
- 在留カード番号を活用した不法就労等の摘発強化
- 失踪技能実習生の在留資格取消の強化
建設業では「3K」と呼ばれる過酷な労働環境が問題となっていることも考えられ、職場環境の改善も求められます。
2024年、技能実習法と入管法を改正
技能実習制度の課題を受け、2024年に法改正が行われる予定です。ここでは主な変更点や、制度の概要についてご紹介します。
「育成就労制度」創設で人権尊重へ|いつから開始?
「育成就労制度」とは、現行の技能実習制度に代わって創設される新しい制度です。育成期間を経て、特定技能1号への移行を目指すことを目的とします。
制度の主なポイントは、下記の通りです。
- 一定レベルの日本語能力が求められる
- 日本永住の可能性が開ける
- 不法就労が厳罰化する
- 在留カードとマイナンバーカードが一体化される
- 転籍が可能となる
技能実習制度では、日本語能力について特に規定が設けられていません。そのため「意思の疎通ができない」といった問題が多々発生していました。
そのため育成就労制度では、一定レベルの日本語能力が求められる予定です。また特定技能1号への移行が可能になることで、家族も含めて日本に永住するチャンスが得られます。
育成就労制度がいつから開始になるかは明確になっていませんが、政府は今国会での法案成立を目指しています。日本の国力低下により実習生が集まりにくくなっていることもあり、魅力アップによる人材確保の狙いもあります。
「転籍」も可能に
転籍とは、就労先を変更することを指します。現行の技能実習制度では転籍が不可であることから、ミスマッチによる失踪に繋がっていました。
育成就労制度では、原則として「同じ職場で1~2年働く」といった条件を満たせば、転籍が可能になる予定です。これにより外国人労働者の人権を尊重することに繋がり、長く日本で就労してもらえるといったメリットも生まれます。
人手不足の解決策|建設DXを活用
建設業では、慢性的な人手不足から外国人労働者の数が年々増加しています。しかし文化の違いやコミュニケーションの問題により、トラブルが発生してしまうことも多いです。
ここでは、外国人労働者とのギャップを埋めるための建設DX技術についてご紹介します。適切なデジタルツールの導入でやり取りを円滑化すれば、業務効率化に繋がります。
外国人労働者プラットフォームアプリ「oyakata」
「oyakata」とは、日本の建設現場とインドの職人を繋ぐプラットフォームサービスです。具体的には職人の訓練実績や所有資格、日本語能力といった情報をアプリで公開することで、現場とのマッチングを行います。
マッチング後は、採用手続きやビザ申請といった各種手続きを全面サポートするサービスも行います。入社後もしっかり生活支援を行うことで、安心して働ける環境構築を目指します。
日本語教育アプリ「げんばのにほんご」
「げんばのにほんご」は、外国人技能実習機構(OTIT)が提供している日本語教育アプリです。講習中や実習中のすき間時間を利用して、無料で日本語学習ができるのが特徴となっています。
言語は「英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語、カンボジア語、タイ語、タガログ語、ミャンマー語」の8言語に対応しています。また「建設関係職種、機械・金属関係職種、食品製造関係職種」といった各職種に対応したコンテンツが利用可能です。
まとめ
少子化が進む日本では、外国人労働者の力が今後ますます求められるようになっていきます。しかし文化的背景や言語といった壁が課題となっており、トラブルが多いのも現状です。今後育成就労制度が実現すれば、長期間の労働や永住の可能性が広がり、人手不足解消に繋がると考えられます。