ドローンで災害・防災対応|能登半島地震での活用事例も

掲載日:

著者:小日向

トレンドワード:ドローンの災害活用事例

ドローン」についてピックアップします。最近では多くの現場での導入が広がっていますが、災害時における活用も注目されています。本記事では能登半島地震でのドローン活用事例や、災害現場でのメリット・デメリットについてご紹介します。

ドローンとは

ドローンとは、遠隔操作や自動操縦で動作する小型無人航空機のことを指します。ドローンは様々な目的に使用され、航空写真、観測、調査、災害対応、農業、建設などの分野で幅広く活用されています。

具体的には、主に高精度な測量や地形調査での利用が進んでいます。現場の正確な地形データを取得することで、設計段階から施工計画を効果的に進められるのがメリットです。またセキュリティ監視や現場全体の状況把握でも活用が広がっており、省人化の流れを加速させています。ドローンについて詳しくは、下記記事をご覧ください。

建設業界の課題と変革の兆し|最新DX技術を紹介(前編)

建設業では、長年に渡る人手不足が課題となっています。第一回、第二回の連載では、建設業の課題解説や生産性向上の必要性についてご紹介しました。今… more

ビルドアップニュース

ドローンの活用方法|2024能登半島地震での活用事例

ここでは、ドローンの活用方法についてご紹介します。2024年1月に発生した能登半島地震でも、幅広い分野で活用されています。

空撮による状況把握

出典:国土交通省 九州地方整備局ウェブサイト(https://www.qsr.mlit.go.jp/bousai_joho/r6notohantoujishin/index.html

国土交通省 九州地方整備局は2021年にインフラDX推進室を設置し、デジタル技術を用いた新たな災害対応の推進を行ってきました。そして今回の能登半島地震にも室員を派遣し、災害調査に尽力しています。

具体的には、ドローンで撮影した写真から自動的に点群データ3Dモデル、オルソモザイク写真、DSM(数値表層モデル)等を生成するシステムを活用しました。こういったAIの活用は、全整備局で初の取り組みです。

従来は⽇中に調査を行い、深夜までデータ整理・資料作成を⾏うのが通例でした。しかしAIによる⾃動処理を⾏うことで、職員の負担軽減に貢献しています。

被災者の捜索・救助

https://x.gd/NTH0y

ドローンは遠隔でカメラ映像を確認できるため、逃げ遅れた被災者の捜索等にも役立てられています。

例えば能登半島地震では、石川県輪島市・珠州市の要請を受けて双葉電子工業のドローンが支援活動を行いました。雪の降る中での作業でしたが、耐環境性の高さを生かして問題なく飛行できたことが報告されています。

物資輸送・物流確保

https://skydrive2020.com/archives/41713

ドローンは、災害時の被災地への救援物資輸送にも活用されています。陸路が遮断されていたり、有人航空機の離着陸が難しかったりする場合でも、ドローンなら狭い敷地で対応が可能です。

小型で重要な物資(薬や血液など)は、道路が寸断された際にはドローンでの運搬が適しています。最近では最大積載量が200kgもある大型ドローンも開発されており、運搬できる重量は増加しています。

能登半島地震では、SkyDrive社が陸上自衛隊と連携してドローンでの物資運搬を行いました。道路が寸断して孤立した集落に対しては、ドローンによる物資輸送が適しています。

災害時のドローン活用メリット

ここでは、災害時にドローンを活用するメリットをご紹介します。小型化・軽量化が進んでいることで、活用の幅が広がっています。

迅速に出動可能

通常の救援活動では、陸路が寸断されたり、有人航空機の離着陸が難しい状況が生じることがあります。しかしドローンは比較的小型で、急な災害発生時でも素早く出動できます。

そのため被災地に迅速に到達し、救援物資や緊急医療品をすぐに提供できるのがメリットです。被災地の状況に即座に対応し、被害を最小限に抑える上で非常に重要な要素となります。

省人化に役立つ

通常の救援活動では、人員の確保や被災地への移動経路確保が課題となってしまいます。しかしドローンを活用することで、人員に関する制約を軽減できます。

ドローンは無人で操作可能であり、人命を危険にさらすことなく救援物資を届けたり、災害状況の調査を行ったりできます。救援活動において人員を必要最小限に抑えられる上、安全な対応が可能となります。省人化によって、被災地での効率的かつ安全な救援活動が実現できるのです。

比較的コストが安い

技術開発により、ドローンの価格は年々低下しています。特に小型ドローンは、従来の有人航空機に比べて製造・維持コストがリーズナブルです。そのため救援物資の運搬や災害状況の調査にドローンを利用することで、予算を節約しながら効果的な対応をすることが可能となります。

またドローンの運用は比較的少ない人員で行えるので、総合的なコスト削減に貢献します。コスト効率の高さにより、災害時の救援手段としてドローンの活用が期待されています。

二次災害を防止できる

地震における二次災害とは、「火災・津波・余震」等が挙げられます。被災地ではいつ二次災害が起こるか分からないため、作業員が危険に晒されることがありました。しかしドローンを活用することで、二次災害被害を防げるのがメリットです。

また災害時には通常の交通手段が寸断され、救援物資や医療品が被災者に届かないといった状況が発生します。十分な支援を受けられないことで、二次的な被害が生じる可能性があります。その場合にもドローンで物資輸送を行うことで、健康被害の防止に役立ちます。

災害時のドローン活用デメリット・課題

ここでは、災害時のドローン活用におけるデメリットや課題についてご紹介します。ドローンはまだまだ開発の余地があるため、課題も多いです。

悪天候時は出動できない

悪天候では風や雨が強くなり、ドローンの安全な運航を妨げる危険性があります。ドローンが制御を失ったり、安全な高度を維持できなくなったりするため、基本的に運行できません。

また霧や濃い雨などの悪天候では、カメラ映像が不明瞭になることもあります。これにより障害物の回避が難しくなり、事故のリスクが高まります。また十分な状況把握ができないため、能力が発揮できないのも難点です。

通信環境が必要

ドローンは通信ネットワークとの連携を必要としており、通信環境が不安定で寸断されてしまうと正確な操縦や任務遂行が難しくなります。

またドローンが搭載するカメラやセンサーからのデータは、通信経路を通じて拠点に送信されます。通信環境が不良な場合、リアルタイムの映像や情報の受信が妨げられ、被災地の状況把握が難しくなります。さらに、救援物資の運搬場所に誤差が生じるといったリスクもあります。

運用者のスキルが必要

ドローンを安全に操縦するためには、専門的な操縦技術が必要です。運用者はドローンの飛行特性や遠隔操縦のスキルを習得している必要があり、これには適切なトレーニングや資格が求められます。

ドローン技術は進化し続けており、運用者は最新の知識や技術を継続的に学んでおく必要があります。これには、追加のコストや時間が掛かります。

長時間の飛行は不可

ドローンは通常、電池駆動で飛行しますが、バッテリーの寿命は限られています。一般的な飛行可能時間は数十分~数時間程度で、長時間の連続運用は難しいです。

長時間の飛行はドローンの機体に負担をかけ、機器の熱問題や部品の劣化などが発生する可能性があります。これにより、継続的な運用に制約が発生します。

運べる重量に制限がある

ドローンが運べる重量には限界があり、大型物資や多量の救援物資を一度に運搬するのは難しいです。例えば、家屋の瓦礫や医療機器などの大型で重い物資は、通常のドローンでは運搬できません。こういった場合には、他の手段での輸送が必要となります。

ドローンの制約を考慮すると、軽量でコンパクトな物資や緊急性の高い医薬品など、特定の種類の救援物資にドローンが向いています。大量かつ大型の物資を運搬する際には、他の運搬手段との組み合わせが必要です。

ドローンで気になる疑問

ここでは、ドローンについてよくある疑問をご紹介します。今後ドローンの活用事例はさらに増えることが予想されるため、ぜひチェックしておきましょう。

ドローンに資格は必要?

基本的には、ドローンの飛行に資格は必要ありません(2024年2月時点)。しかし国土交通省では「無人航空機操縦士」の資格試験を実施しており、こちらがドローンの国家資格となっています。

試験内容は、ドローンの基本的な操作技術や気象・航法・航空法規等の学科試験と、実地での飛行技術を問う実地試験、身体検査から成ります。身体検査では、視力、色覚、聴力、運動能力等について身体基準を満たしているかの確認が行われます。

ドローンの災害特例とは?

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html#alert

「空港等の周辺、緊急用務空域、150m以上の上空、人口集中地区」といった場所でドローンを使用する場合、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。これは、航空機の安全に影響が出たり、落下して地上の人に危害を及ぼしたりする可能性があることが理由です。

逆に言えば、それ以外の場所では比較的自由にドローン飛行が可能となっています。ただし「夜間での飛行、目視外での飛行、人又は物件と距離を確保できない飛行」といった場合には地方航空局長の承認が必要です。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html#alert

一方で災害時においては、無人航空機の飛行に対して特例が設けられます。捜索や救難活動を行うヘリコプター等の妨げにならないように、一般のドローンは飛行を控える必要があるのです。

能登半島地震においても「令和5年度緊急用務空域 公示第9号」が指定され、飛行が制限されています。

まとめ

ドローンは空撮や物資輸送といった活用により、多くの現場での導入が広がっています。能登半島地震でも活躍しており、最新DX技術による効率化・省人化に貢献しています。通信環境や重量制限といった課題はありますが、今後のさらなる技術開発が期待されます。