鹿島建設、南海トラフ地震に備えた広域連携BCP訓練を実施

 鹿島(社長:天野裕正)は8月31日に、今後30年以内に70~80%の確率で発生すると予測される南海トラフ地震を想定した、本社および各支店による広域連携BCP訓練を実施しました。

 訓練は、午前9時にM9.0、最大震度7の南海トラフ地震が発生、これにより起こり得る各エリアにおける最大級の被害を詳細に想定して実施しました。

具体的には、特に被害が大きいと予想される静岡県以西の太平洋に面する地域では、停電や断水、ガス供給・公共交通機関の停止、主要道路の車両通行規制および液状化、さらには10~20mクラスの津波発生を想定しました。

これらにより横浜、中部、関西、四国、九州の5支店の管内では広域にわたり大規模な被害、首都圏(東京建築、東京土木、関東支店)、北陸、中国の5支店の管内では中規模の被害発生を想定しました。

 訓練当日の午前は発災1日目を想定して、各支店が自支店管内に震災対策本部を立ち上げ、工事現場の被災状況や従業員および工事関係者の安否を確認するなどの初動活動を行いました。

午後は発災後2日目から3日目を想定して、本社に設置した災害対策本部が首都圏支店を含む中規模被災支店とともに大規模被災の5支店に対し、物的・人的な支援活動を行いました。

 また、今年は関東大震災から100年の節目を迎えます。同震災を含む過去の大地震では、家屋等の倒壊のほか、火災や津波により甚大な被害が発生しました。

これらを踏まえ、今回の訓練では地震後の火災発生を想定した避難訓練のほか、最大クラスの津波が発生した際の被害度の把握と避難所および避難経路の確認も行いました。

 鹿島は今後も、災害発生時に起こり得る様々な事態を想定し、緊迫感ある実践的な訓練を行うことで「事業継続力」を強化し、社会全体のレジリエンス向上に貢献してまいります。

災害対策本部会議での天野社長による総括災害対策本部会議での天野社長による総括

主な訓練内容

1.広域での本・支店連携訓練

 南海トラフ地震では、関東以西の太平洋側のほとんどの地域が影響を受けることが予想されているため、地震発生後、被災が比較的軽微な支店が大規模被災支店を支援する体制を速やかに構築することが重要となります。

そこで、大規模被災支店を受援側、本社および中規模被災支店を支援側に分け、物的・人的資源を授受する連携訓練を実施しました。

この訓練では、受援側と支援側のそれぞれの連絡体制を全社で情報共有しました。その上で、当社技術研究所が開発した災害時の情報をタイムリーに共有できる「BCP-ComPAS™※」を活用して被害予測を確認し、物資集積場所と現地までの輸送方法およびルートの決定や、応援人員が活動するための宿泊場所などを確認しました。


       ※BCP-ComPAS:BCP-Communication and Performance Assistant System 

BCP-ComPASによる被災予測の確認BCP-ComPASによる被災予測の確認

2.地震と津波発生時の2段階に分けての安否確認訓練

 社員・社外人材および国内グループ会社に所属する約2万6千人を対象とした「従業員安否システム」の登録訓練を、全社一斉に行いました。訓練では、地震発生後に津波が発生したことを想定し、「地震」と「津波」発生時の2段階に分けて安否を登録しました。

 また、各社員が発災後の復旧活動に専念するためには、家族の安否確認が最優先事項となります。そのため訓練では、各社員が事前に家庭内で決めた災害時における「家族との連絡手段」を用いて、実際に家族と連絡を取り合いました。

 さらに、家族の職場や学校、自宅などから想定される「有事の際の避難場所」を自治体のホームページで確認し、各家庭内で共有しました。

3.建物安全度判定支援システム「q-NAVIGATOR®※」で地震後の建物安全度を把握

 本社および各支店では、震災による建物の被災状況を即時に把握できる建物安全度判定支援システム「q-NAVIGATOR」を導入しています。発災直後に本システムが解析した建物被災状況の判定結果を確認し、建物の安全度を把握しました。

※建物内に設置した複数のセンサーが地震による揺れの強さを感知し、建物の変形の大きさを推定
することで建物の倒壊可能性を判定するシステム。揺れが収まってから1~3分で判定が出る

4.震災発生時における工事現場の初動対応訓練

 当社は、震災発生時における工事現場の初動対応を「震災時における現場対応指針」として定めています。これにより、作業員の安全確保、迅速な避難や現場被害の点検のほか、仮設足場の倒壊や危険物の流出といった二次災害の防止を図ります。

 各工事現場は、同指針に基づき、避難場所とそこへのルートや協力会社との連絡方法を確認するとともに、帰宅困難時の待機場所や備蓄品の確認、分散帰宅など、工事現場で初動時に取るべき行動を整理し、関係者で共有しました。

 さらに、「災害時現場速報システム」を利用して、国内全ての工事現場の被災状況を全社で共有しました。

5.関東大震災など過去の大地震の教訓を踏まえた訓練

 今年は関東大震災からちょうど100年の節目にあたります。関東大震災では地震発生後の火災により大きな被害が発生しました。また、2011年の東日本大震災では地震発生後の津波により甚大な被害が生じました。

 今回の訓練では、これら過去の大地震による被害を教訓に次の訓練を行いました。

本社では、当社が開発した火災時の高度な避難シミュレーションシステム「人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS※」を活用しました。

避難誘導者などの関係者が、火災による熱や煙によって危険を感じた社員が一斉に避難すると、避難経路上で人が滞留して円滑に屋外避難できない状況に陥ることをヘッドマウントディスプレイによる立体映像で確認、冷静に避難することの重要性を再認識しました。
※People, Smoke, Temperature, And Radiation interaction evacuation Simulator on Sim-Walker

人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS

技術研究所では、風波や津波を再現する「マルチ造波水路」を活用して、高さ20mクラスの津波がビルに与える影響を検証し、津波の威力、衝撃を改めて関係者間で共有しました。

マルチ造波水路マルチ造波水路


 なお、訓練の最後に行われた震災対策本部会議において、天野社長から次の総括がありました。

 「新たに着工する現場については、その地域のハザードマップを必ず確認するとともに、避難場所や初動時に取るべき行動を整理して二次災害防止の準備を確実に行うこと。

また、当社は東日本大震災以降、通信手段として衛星携帯電話や無線機を各拠点に配備しているが、通信機器は日進月歩で進化しているため、常に最新動向を把握し、見直すことが重要である。

何よりも優先すべきは、社員と家族の安否確認である。平日の日中に発災した場合、特に子供がいる家庭であれば、実際にどう子供と連絡を取り、安否を確認するのか、事前に決めておくことも大切である。」