建設業の新春大予測!DXトレンドを探る【2024年度】
目次
建設業界の課題と変革の兆し
2024年、いよいよ建設業界では慢性的な人手不足と働き方改革に伴う労働時間の上限規制が迫り、より一層業務の効率化が迫られています。新年はこれらの課題に対し、デジタル技術が注目される年になるでしょう。
人手不足への対策としては、テクノロジーの活用が業界全体で盛り上がっています。具体的には、どのような技術が活用されているのでしょうか?本記事では、2024年にさらに発展が見込まれるデジタル技術についてまとめてご紹介します。
1. 3Dプリンター:実用段階に突入
3Dプリンターは、建築資材や建築物のスピーディーな製作を可能にします。プリンターを用いて「印刷」することで構造物を形成する技術で、最近では建築・住宅分野での活用が広がっています。
2023年11月17日には、大林組が国内で初めて大型構造物に3Dプリンター製のプレキャスト(PCa)部材を適用しました。既存の工法でもPCaパネルを搬入しますが、パーツが多く、搬入や荷下ろしに時間を要するのがデメリットでした。さらに海中への据え付け前に組み立て作業が必要となり、天候に左右されるのも課題でした。
今回の工法では、3Dプリンターで制作した外殻を海中に据え付け、後からスリムクリートを充てんする方式が採用されています。これにより、先端部ブロックの据え付けにかかる工期を15日から6日に短縮できました。作業人数も延べ96人から42人へ削減でき、工期短縮と省人化を実現しました。
大林組ではセメント系材料を用いた3Dプリンター建設の研究をさらに進め、今後も安全・安心なインフラの構築に貢献するとしています。2024年には、さらなる活用が予想されます。
また住宅分野では、3Dプリンター住宅メーカーの「セレンディクス」が注目されています。「30年の住宅ローンを失くす」というミッションを掲げるセレンディクスでは、すでに日本初の二人世帯向け3Dプリンター住宅serendix50(フジツボモデル)を愛知県小牧市に竣工しています。
2023年12月15日には、不動産デべロッパーのヤマイチ・ユニハイムエステートと業務提携したことが話題になりました。今回の業務提携で、次世代のスマートシティデザインとなる住宅タウンプロジェクトが始動する予定です。
2. 図面アプリ:業務・DIYに便利|ChatGPT活用も
図面アプリとは、主にスマートフォンやタブレット等で設計や製図ができるアプリケーションです。普段持ち歩いている端末で閲覧・設計が可能になり、業務効率化に繋がります。端末のカメラや位置情報機能の性能向上により、パースや3Dモデルの構築も簡単に行えるようになっています。
専門業者向けアプリはもちろんですが、一般施主向けの住宅図面アプリも人気です。そのせいか、最近では「一般のお施主様の専門知識にびっくりする」と実感されている業者様も多いのではないでしょうか。
確かに「プロ並みの技術が手軽に扱えるようになると、問い合わせ等の対応が大変」というデメリットはあります。しかし逆に言えば、住宅の高付加価値・高単価化に繋げられる機会とも言えるでしょう。
建設現場においては、図面だけでなく写真管理、帳票作成等の業務も一括して行える現場管理アプリの導入が広がっています。
さらに2023年8月には、現場施工管理アプリSPIDERPLUSで「ChatGPT」を組み込んだサービスの開発が発表されました。ChatGPTにより、蓄積された現場情報を使ったビジネスチャット機能の強化を図ります。またオプション機能「指摘管理機能」にChatGPTを組み込むことで、不具合の傾向把握や予防への活用が予定されています。
3.生成AI:人間の仕事が「確実に」減る
生成AIとは機械学習や人工知能の一分野で、データから新しい情報を生成する技術のことを指します。芸術、音楽、医療画像の生成、文章や画像の修正、新しいアイデアの創出など、様々な分野で活用されています。
建築業界では、大林組が生成AI「AiCorb(アイコルブ)」を開発しています。これはスケッチや3Dモデルからさまざまなファサードデザインを提案できるAI技術で、2023年7月には社内運用が始まっています。具体的には、文章で「ガラスカーテンウオールのある洗練されたオフィスビル」といったデザインのイメージを指示すれば、複数のパターンを提案してくれます。
従来まではスケッチやデザイン作成を手作業で行っており、顧客の要望と合わない場合には再度やり直すプロセスが必要でした。しかしAiCorbを活用すれば、業務効率化と顧客満足度の向上に繋がります。
4. BIM:2024年も国交省補助金が継続予定
BIM(ビム)とはBuilding Information Modelingの頭文字を取った言葉で、直訳すると「建築物に関する情報のモデリング手法」です。建設工事等で用いられる手法で、3次元データに各種情報を付加して多方面で活用できるのが特徴です。
3D CADと混同されやすいですが、BIMには「コスト、資材、材質、工期目安といった属性情報を追加できる」という点が大きく異なります。これにより、設計から維持管理までライフサイクル全体を通して使えるのがメリットです。
国交省では、2022年度から「建築BIM加速化事業」を創設してBIMの導入を促しています。2023年12月には、国交省が「引き続き令和5年補正予算で事業を実施する」と発表しました。これにより、2024年以降も継続することが決定しています。
BIMはサプライチェーン全体での導入が求められるものの、現状では中小企業にまで導入が広がっているとは言えません。BIMには専用ソフトやツールが必要でコストが掛かることから、補助金の交付により費用負担を軽減するという狙いがあります。
2024年、DXが切り拓く未来
建設業界では、デジタル技術を駆使して新たな時代を切り拓くことが求められています。2024年におけるDXの進化が、業界の未来にどのような変化をもたらすのでしょうか?
BuildApp News(ビルドアップニュース)では、2024年も建設業界における革新的な取り組み・技術の情報をお届けしていきます。