建築BIM加速化事業の概要と支援内容(後編)
国土交通省は、建築BIMを速やかに社会実装することを目的として「建築BIM加速化事業」を実施しています。支援を受けるために欠かせない代表事業者の登録期限が、2023年12月24日までに延期されました。
事業の概要や対象ソフトウェア・スケジュール、取得するメリットについては(前編)で解説しています。今回は、補助金の申請と支給条件、今後の展望についてみていきましょう。
補助金の申請と支給要件
ここでは、建築BIM加速化事業の申請と支給条件について解説します。補助金申請の流れは次のとおりです。
- 事業者登録
- 登録通知
- 交付申請
- 交付決定通知
- 完了実績報告
- 補助金額の確定
- 補助金入金
申請や報告などの手続きが必要なのは1・3・5となります。
補助金の申請書類と要件
補助金の申請に必要な登録方法や申請書類について、みていきましょう。
事業者登録
補助金を申請するには、「建築BIM加速化事業実施支援室」(以下支援室)に代表事業者の登録が必要です。登録には、jGrantsを利用します。登録期限は2023年12月24日です。期限までに登録しましょう。(11月27日記事執筆時現在)
なお、jGrantsを利用するには、様々な行政サービスにログインできる「gBizID」が必要です。未所持の場合は場合は、申請手続きが必要になります。ID登録完了までに一週間程度かかるため、余裕をもって申請しましょう。
登録通知
実施支援室で審査後、登録通知が届きます。補助金交付の対象となるのは、代表事業者登録完了日以降に発生した費用です。
支給要件
主な支給要件として、「代表事業者が協力事業者の建築BIM導入を支援し、建築BIMモデルを作成すること」があります。整備する建築物は「3階以上、敷地面積が概ね1,000㎡以上 等」となっており、詳細は下記のとおりです。
引用:https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_manual.pdf
補助金の支給手続き
補助金の交付申請は2023年12月31日17時です。期限までに申請を行わなければなりません。
交付申請は、jGrantsを利用し電子申請で行います。申請に必要な書類は支援室の「交付申請」サイトからダウンロードします。
引用:https://bim-shien.jp/index.php/application/
要件適合を証明する図面などの資料がある場合は、PDFで保存して必要書類と共に提出します。資料はまとめてZIPに圧縮して提出します。その際、パスワードは不要です。
交付決定前に事業内容に変更が生じた際と補助対象経費が増額した場合は変更申請が必要です。減額した場合は変更申請は不要であるものの、完了実績報告で内容を報告しなければなりません。
完了実績報告
当該事業が完了したら、完了実績報告を提出します。報告は、jGrantsを利用し電子申請で行います。完了報告に必要な書類は、支援室の「完了実績」ページからダウンロード可能です。
引用:https://bim-shien.jp/index.php/achievement/
資料はまとめてZIPに圧縮して提出します。その際のパスワードは不要です。
建築BIMの今後の展望
建築BIMは今後どのように発展するのでしょうか。今後の展望をみていきましょう。
すべての公共事業へ適用
2023年4月から、小規模を除くすべての公共事業でBIM/CIMの原則適用が始まっています。過去には、「2025年」と言われていたものの、2年ほど前倒しとなりました。公共事業を手掛ける事業者にとっては、BIM導入が欠かせないといえるでしょう。
このような流れを受けて業界全体でBIMの導入が進むと、競合相手がBIM導入をしているケースが出てきます。補助金が利用できるこの機会に、BIMの導入を検討してみましょう。
人手不足への対応
建築BIMを導入すると、建築物に関する情報を一元管理できます。各担当者との情報共有がスムーズになり、訂正を行った場合も適切に情報を共有できる点がメリットです。
「情報伝達の手間」や「伝達ミスによる修正」といったこれまで現場で多発していた手間やコストの削減につながります。これらの業務の効率化は、建築現場で懸念されている「人手不足」解決の一助となるでしょう。建物を3次元形状で表現できるため、各担当者と情報共有するのはもちろん、顧客やコンペでのプレゼンテーションとして利用できます。
一般の人は2Dの図面から完成予想図をイメージするのは困難です。そのため、これまではプレゼン用に完成予想図の作成が必要でした。建築BIMの導入により、プレゼン用の資料作成の手間をかけずに済む点もメリットです。
建築BIMの普及と活用の拡大
国土交通省はBIMを活用した将来像について、次のように言及しています。
- 高品質・高精度な建築生産・維持管理の実現
- 高効率なライフサイクルの実現
- 社会資産としての建築物の価値の拡大
BIMは建築物の着工前・着工後の現場管理だけでなく、引き渡し後の維持管理にも利用できるのが特徴です。BIMを活用すると、引き渡し後の建物に関する修繕・改修、検査・保全など多くの場面で効率化にもつながります。そのため、将来的には、BIMデータのある建築物の方が資産価値が高い、といった考え方が定着してくると見込まれています。
まとめ
2023年4月からは、小規模を除くすべての公共事業でBIM/CIMの原則適用が始まりました。今後、建築BIM導入の流れは加速していくと見込まれています。
建築BIM加速化事業支援を受けるためには、代表事業者の登録が必要です。代表者登録期限は、2023年12月24日まで延期されました。この機会にBIMを導入し、生産性の向上や業務効率化につなげていきましょう。